農家がネット販売をはじめても、実際はネットだけで完結するわけではありません。ネット以外のアナログの部分を意識することが必要なのです。

例えば、ネットショップだけで注文を得ようとするのではなく、電話注文やFAX注文、実際に対面して販売するなど、いろいろな販売方法を組み合わせていくことが大切です。

そのなかでも既存のお客様にダイレクトメールを送る効果は大きいです。ダイレクトメールはこちらが伝えたい情報を写真や注文書、レターなどによって伝えることができるからです。

ネット通販は販売して終わりではありません。一度購入したお客様の名前や住所などをもとに、ダイレクトメールを自宅に送り次に繋げていくことが必要なのです。

ダイレクトメールはどのようなものか、どのように活用していったらいいのか、以下で解説していきます。

もくじ

ダイレクトメールとは

ダイレクトメール(DM)とは、個人や法人などにあなたが伝えたいことを紙媒体にして郵送やメール便などで直接送る方法です。

商品の案内やカタログなどを直接自宅などに送ることができるため、こちらから直接アプローチすることができます。

DMと略されることも多く、小売店などの営業や宣伝の手段のひとつとしても活用されています。例えば、美容室などが既存の顧客にハガキを出し、来店の際持参すれば数%オフになるなどがあります。

ダイレクトメールはさまざまな業種で使われています。農家であってもダイレクトメールを活用することができます。

ダイレクトメールのメリット・デメリット

農家がネット販売をしていくうえで、ダイレクトメールは必要不可欠です。

しかし、ダイレクトメールにもメリットとデメリットがあります。以下ではメリットとデメリットについてみていきます。

ダイレクトメールのメリット

1. 幅広い年齢層に伝えられる

インターネット販売が普及しているといっても、パソコンやスマホが苦手だったりネット通販が面倒だったりする方は多くいます。特にネットになじみの薄い高齢の方にはダイレクトメールの紙のほうが伝わりやすいです。

ネットで伝えられていない人に直接伝えることができます。

2. 直接自宅に届けられる

ウェブサイトは待ちの媒体と呼ばれています。相手から訪問してもらわないと見てもらうことができません。これに対してダイレクトメールは攻めの媒体です。

こちらからアプローチすることができます。

3. 伝える情報が増加する

こちらからアプローチする方法にメールで案内する方法があります。これをメールマガジン(メルマガ)といいます。

このようなメルマガに対してDMの場合は、写真をのせたり、注文書を同封したり情報量を多くすることができます。

その結果、イメージが伝わりやすくなります。メールの場合は、開封されることなく見られないこともあります。私の感覚では、メールでの案内よりも実際に紙で印刷して郵送するほうが効果が高いと感じます。

通販業者ではたくさんのDMがありますが、農家のDMはまだまだ珍しいので見てもらえる確率が高くなります。

むしろ、DMが届くのを楽しみにしていると思われるほどの内容を作っていく必要があります。

ダイレクトメールのデメリット

1. コストがかかる

こちらからアプローチするメルマガの場合は、無料で届けることができます。これに対してDMの場合は、封筒などで送る場合、最低82円かかります。

郵送料の他に、印刷料や発送作業に費用がかかります。

全く購入する意識のない方に送っても無駄になってしまいます。購入する確率の高い方に送る方法がいいでしょう。

私の場合、購入者のリスト(名前やメールアドレス、住所など)を管理しています。ネットで購入した人に対して次の年にDMを発送しています。

そこから数年の購入履歴(購入単価や頻度など)をみて、次年度にDMを出すかどうか決めています。

何度も購入している人やたくさん買う人、直接訪れる人など購入する確率の高い人はDMを送っています。電話などで直接注文が来る人にDMを出すと購入する確率が高い傾向があります。

DMを出しても引っ越しなど何かしらの理由で戻ってきてしまうことがあります。次回からは、郵送する人を見極めて出すことが大切です。

2. 時間がかかる

商品案内のチラシの作成を自分で作る場合でも、作成業者に頼む場合でも時間がかかります。またデザインなども必要です。

お客様の数が多ければ多いほど、効率的に作成する必要があります。

DMを送る方法は、切手などを貼る郵便と運送会社のメール便の2種類があります。

私は、以前はクロネコヤマトのB2というパソコンのソフトを使ってメール便を使っていました。B2は宅配伝票を印刷するソフトですが、メール便を印刷することもできます。

たくさんの人の名前や住所を手書きしていては大変です。このようなソフトを使うことにより自動で印刷できるようになります。

現在では、顧客管理ソフトを使っているので、案内書とFAX注文書に名前と住所を印刷しています。

このように、DMを出すときには印刷物の内容を考えたり、デザインを考えたり封筒にチラシを入れるなど手間がかかります。シールをはったり、届けたい日までにDMを出したりするにはいろいろな準備が必要になります。

ある程度余裕をもって作成にとりかかることが必要になります。

3. 開封されないことがある

ここまでコストをかけて、時間をかけて作ったにもかかわらず、開封されずに捨てられてしまう場合があります。むしろ、開封されないということを前提に考えていたほうがいいです。

そのため、捨てられないために工夫する必要があります。例えば、封筒のデザインを工夫して中を読んでみたいと思わせるようにするなどが必要です。

私はopp袋という透明な袋を使っています。中が見えるので中に入れる予定の紙に名前、住所と料金別納郵便(料金後納郵便というのもある)というマークを印刷して送っています。

料金別納郵便とは、同一の郵便物を切手をはることなく出すことができるものです。原則では10通以上送る場合に使われています。以下のようなマークになります。


農家のDMによる絶大な効果

DMを送るのは手間がかかり料金がかかります。そのため私は、名前や住所や別納郵便マークが印刷されたものを透明の袋にいれるだけで郵送できるように作成しています。

封筒の種類や何を書いたらいいのかなど、開封させるために工夫が必要なことがありますのでいろいろ試してみてください。

農家が本格的にDMを出すことはまだまだ少ないです。そのため、開封率や反応率は大事ですが、「DMを出す」というだけで大きく差をつけることができます。

例えば私は商品案内を他で作成してもらっています。作成するとき、大きな写真を出してイメージを与えています。その後、ここの農園の3つの特徴を書いています。どのような農園で、どのような物を販売しているのか書かれています。

その後、お客様の声を載せています。実際に手書きで書かれているため、リアルなお客様の声を伝えることができます。実際に購入した方へ宅配するときにハガキを入れて感想を書いてもらっています。

ハガキを送るときは受け取ったほうがお金を支払う「料金受取人払いハガキ」のため、差出人は切手を貼らずに送ることができます。このようにして、実際にお客様の声を集めたものを記載しています。

裏面では、商品の品種と価格、発送する時期が書かれています。

さらに注文方法と支払い方法が書いてあります。商品を見て注文したいと思ったら、どのように行動したらいいのか具体的に記載しています。

DMが効果を発揮するのは、既存のお客様に対してです。一度でも購入した経験のある方のほうがない方よりも反応してくれます。

お客様によっては、一度しか買わない方、毎年購入する方、大量に購入する方などいろいろいます。

何度かDMを出してみて、どのくらいの頻度で購入するのか調べてみるのがいいです。何年も購入していないのなら、購入する確率が低いとみなしてDMを出さないのも手です。

逆に毎年購入してくれる方もいます。このような方の場合、手書きで書き添えるなど感謝の気持ちや個人的なやりとりをするのもいいです。

DMは既存客から収益を上げるのに大変優れた方法です。

インターネットとダイレクトメール

インターネットが今のように発達する前は、ダイレクトメールが個人でも販売を伸ばせる唯一の方法でした。現在ではインターネットが急速に普及しています。

個人でも情報を発信してたくさん集客して販売することができるようになりました。

しかし、それでもアナログな方法が終わったわけではありません。ネットにはネットのよさがあり、ダイレクトメールにはダイレクトメールの良さがあります。

紙の媒体が終わるわけではありません。むしろデジタルとアナログを使いこなすことにより相乗効果が生まれ、より伝えやすくなります。

DMが注文方法の幅を広げる

ネット販売でも同時にDMを出すことにより、お客様の注文の仕方が増えてきます。例えば、以下のような流れを作れます。

①ネットで集客して、ショッピングサイトで購入してもらう

②購入したお客様に対してDMを郵送する

③再度サイトにアクセスしてもらい、そこから直接販売や電話、FAXで注文してもらう

 

このように、ネット販売といってもネットで集客しますが、実際にはその後が大切です。次に繋げることが大事なのです。

実際、農家の直売所や観光農園などは、毎年同じところに買いにいくという方が多いです。お互いの顔が分かっていて安心してそこで購入することができるからです。

直接顔を見ることができないネット通販であっても、このような信頼関係を構築することは可能です。顔が見られないからこそ、より信頼関係を高めるために購入後のアプローチと情報が共有されていることが必要になるのです。

また、DMを郵送することにより、ネットでの販売以外の注文が増えます。あらかじめ名前や住所など記載されているFAX用紙を送るとFAXでの注文が増えます。

要はいかに簡単にすぐ注文できるようにするかです。お客様は、文字を書いたり、サイトにアクセスしたりするのが面倒なのです。簡単に分かりやすく注文できるようにこちら側で工夫する必要があります。

DMの開封率を高める方法

DMを出すときに気を付けるべきことは、開封率です。興味のない人に届けたところでごみ箱に直行してしまいます。

ではどうすればいいのでしょうか。まず、興味のある人に出すことが大前提ですが、封筒の出来を考える必要があります。

例えば、100人にDMを送って70人がごみ箱に捨てたとします。残りの30人が開封し、そのうちの1人が購入します。100件中1件の反応率になります。

次に、100人中10人がごみ箱に捨てたとします。残りの90人が開封します。すると注文が3倍になる可能性があるのです。

このように、開封率次第では、反応は何倍にも変わるのです。

宛名を手書きで書く

開封率が大切なことが分かったあとで、どうすれば封をあけてくれるのでしょうか。

ひとつの方法が手書きで宛名を書くことです。さらに切手をはることです。ただでさえDMを送るのはたくさんの準備があります。たくさんの人に送る場合、手間がかかります。

それを手書きにするとたくさんの時間がかかります。しかし、手書きというのは簡単に捨てにくいです。手紙のようにもみえますし、手間をかけて送っているというのが一目でわかります。

例えば年賀状でも宛名と裏面が印刷のみの物と、宛名と裏面が手書きで書かれているのとでは、全く違うもののように感じるはずです。

それだけ手書きというのは、相手に与える印象が違ってくるのです。

ダイレクトメールのレスポンス率(反応率)

DMを開封してもらって、読んでもらえたとしてもお客様から反応がなければ意味がありません。

DMを送る目的は、開封して読んでもらい、注文してもらうことです。では、DMを送った場合、その反応(レスポンス)はどれくらいあるでしょうか。

DMを送る先によっても反応率は違ってきます。一度でも購入したことがある人と、全く購入したことのない人とでは、当然ながら違ってきます。

どのくらいの反応があると思うでしょうか。

既存のお客様にDMを郵送などで送った場合は、5~15%といわれています。1000人に送ったら、50人~150人の反応があります。

DMで成約率が10%を超えれば大成功といえるでしょう。

これに対して、新規顧客獲得のためにチラシや郵便DMなどの場合は、約0.5~1%といわれています。1000人に送った場合、5人~10人になります。

農家がお客様に直売していくのは、既存の顧客に出すことが多いでしょう。私は新規の顧客にDMを出すというよりは、既存のお客様に出しています。

どのくらいの成約率かみてみたところ、15%を超えていました。これらのことを理解していなければ「1000人中150人しか買わないのか」と思うかもしれませんが、実は大成功なのです。

DMを送る場合は、すでに信頼関係があることが大切です。全く知らない状態でDMを出すよりも、すでによく知っているほうが効果が高いからです。

「DMありがとう」「来年も手紙おくってちょうだいね」と心待ちにされる位、情報を共有していて関係性を築けていることが大切になります。

反応率を上げるための4つの内容

DMの中にいれるものは、お客様にとって商品の魅力を伝え、どのように行動するのか分かりやすいものでなければいけません。

大きく分けて以下の4つになります。

①セールスレター

②申込書

③パンフレット

④ニュースレター

①のセールスレターは、商品の内容を手紙風に伝えたものになります。ベネフィットレターともいいます。

いろいろと書き方はあるかと思いますが、私の場合は自分の想いを正直に書いています。「なぜあなたにこの手紙を届けているのか」「なぜ自分は農業をしていて販売をしているのか」などです。

農業をしているなかで、いろいろな想いがあるでしょう。私は、喜びや怒りなど感情をそのままに伝えています。あなたでしか感じることがない想いがあると思います。そのようなことを書いていきましょう。

②の申込書ですが、注文したいと思ったときに簡単に注文できるように工夫するといいです。分かりにくいと面倒になってしまうからです。

例えば私は申込書には、あらかじめ注文者の名前と住所、昨年の送り先と商品内容を印刷して送ります。顧客管理ソフトを使っているのでこのようなことが可能なのです。

はじめは住所や名前、商品など書きやすいように工夫していくといいです。私も最初はそのように作りました。

③は商品の内容や価格が書かれたパンフレットです。どのような物がどれくらいの価格なのか伝えないとはじまらないです。

④のニュースレターは、私の場合はその年の農園の様子などを伝えています。例えば「どのような天候だったのか」「今年の出来はどうだったのか」「どのような管理やこだわりがあるのか」などを伝えています。

サイトやブログで書かれていることなどを簡単にまとめたり、自分の農業の姿を伝えたりするつもりで書いています。

このように大きく分けて4つの内容があります。

まとめ

ダイレクトメールは農家がネット販売をするうえで必要不可欠です。ネット通販は、ネットだけで完結するものではありません。デジタルとアナログを活用してこそ効果が表れます。

ダイレクトメールを送る人が違えば、そのぶんだけいろいろな情報があります。重要なのはあなたが何を伝えたいのかです。

あなたが生産している物を購入したい人に対してどうなって欲しいのか考えることです。その想いを一通の手紙に託すつもりでDMを出すのです。

表面上で簡単に作っただけのDMでは簡単に捨てられます。お客様に本質を見破られてしまうからです。

どうすれば開封して読んでもらえて購入してもらえるのか考え続けることが必要です。あなたの想いが伝わるDMだからこそお客様は商品を購入してくれます。

ダイレクトメールを活用すれば、一度購入したお客様に対して再度アプローチすることができるようになります。それによってリピーターを確保し安定した経営をすることができます。

農家がダイレクトメールを活用しているのは、まだまだ少ないです。お客様が心待ちにするようなダイレクトメールを送れるようになるためには、試行錯誤が必要です。

反応率の高いDMが作れるようになるよう、これらのことが参考になれば幸いです。