農業では土作りが大切です。ただ土といっても肥料成分の関係や微生物など、とても複雑でいまだに分かっていないことも多いです。農業では土の検査をしてどの肥料を与えたらいいのか調べます。

一般的に大切な肥料は3代栄養素として「窒素」「リン酸」「カリ」と意識されています。そのため、これらの肥料を基本として施肥を行っています。

ただ、これ以外にも「カルシウム」や「マグネシウム」、そのほかの微量要素があります。さらに必要栄養だけでなく、そのバランスも重要とされています。

そのなかでも、「石灰」「苦土」「カリ」のバランスを塩基バランスといいます。塩基バランスが整うと、肥料の吸収が良くなり、微生物も活発に動き始めるといわれています。

塩基バランスとはどのようなものなのか、以下で解説していきます。

もくじ

塩基バランスとは

農業では土づくりが重要とされていて、基本とされています。肥料成分のうち、「窒素」「リン酸」「カリ」が最も必要な元素とされています。

しかし、これ以外にも必要な成分はたくさんあり、そのなかでも塩基(石灰、苦土、カリ、ナトリウムなど、交換性陽イオン)の比率が重要です。

とりわけ、石灰、苦土、カリの3つの成分の比率が重要とされています。

これらのなかには拮抗関係があり、それぞれの塩基が十分に土壌に含まれていたとしても、バランスが悪いと作物に十分吸収されないということがあります。

一般的には、石灰:苦土:カリのバランスが5:2:1がいいとされています。ただ、これはあくまで目安であり時期によっても考慮するといいです。

例えば、夏場であれば成長が速く呼吸量も多くなるので、細胞間をがっちりとくっつけるため、石灰の割合を増やすなどします。

塩基バランスが整うと、作物の吸収だけでなく、微生物も活発に動き始めます。また、施肥設計をするときは、塩基バランスと同様、塩基飽和度が80%になるようにするといいです

塩基飽和度とは、土の塩基置換容量(CEC)のうちの何%が塩基で示されているかを示す数値です。陽イオン飽和度ともいいます。

理想とされているのは、80%ですが、茶は40%がいいとされており、作物によっても違いがあります。

あまり意識されてこなかった苦土(マグネシウム)

肥料成分で「窒素」「リン酸」「カリ」は意識しても「苦土」(マグネシウム)を意識していないという人は多いです。

現在では、石灰や熔リン、堆肥などの入れすぎによって、リン酸や石灰、カリが過剰で苦土が欠乏している畑が多くなっています。

堆肥には「リン酸」や「カリ」が多いので毎回与えることによってこれらの成分に偏り、苦土が不足している状態になっているのです。

土壌改良として「苦土石灰」を与える方も多いと思います。「苦土石灰のなかには、苦土とあるから十分じゃないか」と思われるかもしれません。

しかし「苦土石灰」の苦土の部分は決して多くはありません。基本的に「苦土石灰」は、酸性土壌改良に使う資材だからです。

「苦土石灰」に含まれる石灰分は苦土より早く溶けるので、苦土の溶解、吸収を抑える傾向にあります。(拮抗作用)

また、酸性土壌では染み出して流れてしまうので、追肥などで補給する必要があります。

苦土が欠乏している畑では、「硫酸苦土(硫酸マグネシウム)」「水酸化苦土」といった単肥で補うことが必要です。

また「苦土(マグネシウム)」は「リン酸」と一緒に吸収されるので、たまっていた「リン酸」を効かせることができます。さらに「リン酸」が効くようになると、「石灰(カルシウム)」やカリも吸収しやすくなります。

「苦土」によってこれまで土壌にあったもののたまって動かなかった養分全体を引き出してくれるのです。

苦土(マグネシウム)の働き

このように土壌改良としてでしかあまり意識されてこなかったマグネシウムですが、マグネシウムの植物体内の働きも重要になるのです。

マグネシウムは作物の栄養となる炭水化物を合成している葉緑素のの主成分です。

マグネシウムが欠乏すると葉緑素の生成が低下し、光合成が衰えて炭水化物の合成が減ります。また雨などで流亡しやすいのです。

硫マグと水マグの違い

このような苦土肥料はたくさんありますが、代表的なものに硫マグと水マグがあります。海水に生石灰を混ぜると水マグ(水酸化苦土)になります。

この水マグに硫酸を加えると硫マグ(硫酸苦土)になります。どちらも微量なミネラルを豊富に含んでいます。

ただ、性質が異なるため土の条件によって使い分けてください。

硫マグは水にとけて酸性を示すので、中性、またはアルカリ性土壌に向きます。水溶性ですぐに効くので、追肥に向いています。

一方で水マグは塩基性で、土壌の酸性を中和できる(㏗を上げる)ので、酸性土壌向きです。ク溶性でゆっくりと効くタイプなので、元肥えに向いています。

まとめ

農業で大切なのは土つくりです。そのため土壌診断をして、必要な肥料を与えています。特に「窒素」「リン酸」「カリ」は最も重要な成分であり肥料袋にもこの順番で書かれています。

これらは人間でいえば「炭水化物、タンパク質、脂質」のようなものです。人間でもこれらの栄養だけでなくビタミンやミネラルなども重要です。

同じように植物でも「カルシウム」や「マグネシウム」その他の微量要素などが必要になります。さらに必要量だけでなくバランスが大切になります。

なかでも「石灰」「苦土」「カリ」の塩基バランスは重要になります。

これらのバランスが整うと、肥料の吸収がよくなり微生物の働きも良くなります。それだけでなく、苦土がきくと光合成能力を高め、炭水化物をたくさん蓄えることができます。

結果として病気にも強い作物を育てることができるのです。