農家はこれまで作物を作ることだけに専念し、栽培技術を磨いてきました。日本の農産物は世界的にみても品質が優れています。病気に強い作物や、日本の風土にあった作物など品種改良によって素晴らしい品質の作物を作り上げてきました。
農家は面積あたりの反収(10aあたりの収穫量)を上げるため、創意・工夫によって品質のいい物を届けられるよう日々努力してきました。その結果、日本の食卓は豊になり農家は食料生産に貢献してきました。
ただ、栽培技術に熱心になるばかりに、現場の仕事ばかりに目を奪われ、作物の流通や販売を含め、「お客様に自分の届くまでのこと」に無頓着になっています。
本来であれば、農家は作物作りのことに専念し、安定して供給することが筋です。ところが、それでは農業経営として安定した経営を行えない面もありました。
農家がいい作物を生産しても手取り価格に反映されないため、結果として農業は衰退していきました。
生産だけをしていればいいという時代は既に過ぎました。現在ではテクノロジーが発達し、情報が瞬時に伝わる時代です。こうした時代には生産だけでなく、流通・販売まで農家が考え、マーケティングやブランディングまで含めた経営戦略が必要になります。
その上で、農家がインターネットを使い情報発信すると、生産だけしていたときとは全く違う農業経営を行うことができます。
もくじ
市場に出荷することとお客様に直接販売することの違い
私は農業大学時代に、農家に研修に行く機会がありました。その農園は観光果樹園が盛んなところで、果物狩りをしていたり、自社農園で直売をしていたりするところでした。他にも旅行会社と契約し、ツアーの日程の一部として農園を利用していました。
都市部からも近く、大きな国道沿いにあり、高速道路のインターチェンジも近く、立地条件に恵まれた場所でした。そこで接客していると、お客さんが贈答用に「大きなサイズの果物」を求めていました。
ただ、そこの農園では大きなサイズの果物が少なく、お客さんに対して私は「この品種はあまり大きくならないんだよ」と説明していました。実際は、大きく果物を育てるには栽培技術や手間暇かけた管理が必要になります。
農家は土地の条件や立地条件、販売条件などたくさんの事に左右される
こうした現状を見ながら、「自分の農園であれば栽培技術があるため、いくらでも大きい果物を提供できるのに」と、学生ながら内心思っていました。私の農園は立地条件にあまり恵まれていないため、都市部に近い観光果樹園ではなく、市場出荷の産地でした。
これらの経験から、立地条件によって販売方法は異なり、販売単価は大きく違ってくるんだと実感したものです。品質の違いよりも、お客様に直接販売できるか、市場に出荷するのかの違いで単価は大きく変わるものだなと思いました。
例えば、先ほどの観光果樹園であると梨を5㎏4,000円で販売しており、このときは4,000円がそのまま手元に残ります。一方で市場に1㎏あたり300円で出荷すると、5㎏では1,500円です。流通時の手数料を差し引くと、利益はさらに下がります。
たとえいい作物を作っていてもそれを販売する能力がないのなら、「それほどいい物を作る能力がなくても、販売できる能力があるほうが稼げる」と実感したものです。
分かっていても直接販売することは難しい
これらの経験から私は、農業をする上で作ることも大事だが、どのように販売するのかも大事だと考えました。そこで私は、実家の農業を継いだときは最初に知り合いに知らせて口コミで販売網を広げようと思いました。しかし、最初は義理で購入してくれますが、それが続くことも、口コミで広がることもありませんでした。
私一人の行動力など、たかが知れていたのです。
次に、軽トラに自分で作った果物をのせ、人通りの多いところに行って販売してみることにしました。農家は収穫作業だけでも忙しいですが、収穫した物を袋詰め・箱詰めして、ガソリン代もかけ実際に行動してみました。
ただ、このときはたまたま興味本位で通った人が袋詰めで買ってくれる程度でした。
いま思えばよくやったなと思いますが、当時はそんなことしか思いつかなかったのです。収穫、準備して大変な労力がかかっていますが、そこまでしてもたいして売れるわけでもないのです。
口コミ販売も道路での販売も準備には相当な労力がかかっていますが、生産から販売まですべてを自分でやろうとすると、そもそも無理があることが分かりました。
インターネットの登場が農家を変えた
そのころ、インターネットが普及し始めていました。少しずつ、個人がウェブサイトを持つ時代になっていました。当時は、まだ「インターネットで物を売れるわけがない」と半信半疑に思っていました。
今でこそ当たり前のようにネット通販をしていますが、当時はまだネット上で商品を売るのは珍しいことでした。それでもコツコツとサイトを作っていくことにより、徐々にお客さんが増えてきました。サイト作成をしていて思ったのは、「小さなことをコツコツと積み重ねると、必ず結果がでる」ということです。
結果を出すには時間がかかる
何事でも共通していると思いますが、既に成功している人は「努力せずにうまくいっている」ように見えますが、実はあなたの知らないところで必死の努力をしているのです。小さなことを毎日必死でコツコツと積み重ねてきたのです。
私もコツコツとサイトを作成してきた結果、ウェブサイト上から自動でお客様から注文が舞い込んでくるようになりました。あれだけ販売することが難しいと思っていたことが、さほど難しいと思わなくなっていました。初めてネットを使って販売までできたことの嬉しさは今でも覚えています。
何事もすぐに、簡単に結果がでるわけではありません。「お金を出してこの商材を購入すれば、誰でも簡単にすぐに結果が出ますよ」などのうたい文句を簡単に信じてはいけません。農業ビジネスはそんなに甘いものではありません。そのような話にのっかっていたら、いつまでたっても悪いことを考える人に搾取されるだけです。
農家の労働の大変さを経験しているのであれば、「簡単に稼げる話」に騙されている場合ではありません。むしろ、適切な努力をしたうえで稼ぐ農業をしなければいけません。稼ぐ農業を実現できなければ、農業をしている意味がありません。
農家こそインターネットを活用すべき
農家は収穫だけでなく、細かい雑作業(片付け)などを含めると仕事がたくさんあり、農繁期の収穫作業など人手がまったく足りないほど忙しくなります。
ただでさえ忙しいのに、「インターネットで情報発信をするなどできるわけがない」と思う人もいるでしょう。確かに、農業をしながら情報発信は大変です。簡単には進みません。
では、なぜ私が集客するサイトを構築できたかというと、そこまで農繁期ではない冬場の時期に昼間農業をしながら、夜にコツコツと情報発信することでサイトを作り上げてきたからです。
毎日、少しずつサイトを更新していかなければ結果は出ません。サイトを作ることによって結果がでるかどうかも分からないけれど、それでも前を向いて必死にコツコツとやっていくしかないのです。
「自分のサイトを構築する」ということは、自動収益化装置を作るのと意味は同じです。サイトを構築できれば24時間365時間働いてくれる営業マンがいるようなものなのです。
ネットを活用すれば自動化が可能
一度でもサイトを作ることができれば、勝手に集客してくれます。買い物かごを設置してネットショップとしておけば、販売まで自動でしてくれます。それだけではなくクレジット決済を使えば、お金の支払いまで済んでしまうことになります。
朝起きてメールを確認するとお客さんが住所を入力してあなたの商品を購入し、支払も済んでいる状態になります。そのため、完全自動化が可能です。後は宅配便の伝票を印刷するだけです。一度でもあなたのお店からお客様が商品を購入しているならば、そのデータが顧客管理ソフトに入っているため、ボタン一つで伝票印刷まで終わらせることができます。
忙しい農家こそ最初に仕組みを作る必要がある
私も、収穫時期には収穫作業でいっぱいいっぱいです。それ以外にも細かい仕事はあるので、一人でやれることには限りがあります。こうしたとき、ある程度までサイトを作っておけば、放置しておいてもウェブサイトは働き続けてくれます。
販売するまでに店頭でお客さんを待ち、販売先まで準備して移動していたことは時間と手間がかかった割に結果は大きくありませんでした。それに比べると、最初に必死でサイトを作成する必要はありますが、自動で集客から販売(決済)まで行ってくれるサイトは時間の節約になり、非常に楽をすることができます。
収穫や選別で忙しい農家は、他に営業に行くことがなかなか難しいです。そこでインターネットを活用すれば、自宅にいながら営業、集客、販売、決済、商品配送まですべて完結してしまうのです。
農家がウェブサイトをもつことのメリットは計り知れません。生産だけしていた農業労働者から、生産・販売を一貫して行う農業経営者になるためには、自社のウェブサイトを持つことは必須の条件です。
そのため、農家としてサイトをもっていなかったり、本気でサイト構築を行ったりしていない場合、ネットショップの仕組みを活用した独自の直販システムを構築するようにしてください。そうして情報発信をすれば、集客ができるようになります。