農業でさらに100万円、200万円の収入を増やすのには何をしたらいいと思うでしょうか? このときは「面積を増やす」「品質をよくして収量を増やす」「販売方法や卸先を考える」など方法はたくさんあると思います。

大規模経営や機械化が進んでいる法人経営などは、さらなる規模拡大によって経費を削減できたり、効率化したりできます。しかし、小さな農家の場合は規模拡大が必ずしもいいとは限りません。もちろん収穫量が多くなければ売り上げも上がらないわけなので、ある程度の収穫量は必要になります。

ただ、人手が限られている小さな農家の場合、規模拡大によってさらに忙しくなり作業が間に合わなくなって品質が落ちたり、それにより無駄が多くなったりすることがあります。労働が増えて体力的につらくなり、マイナスになる場合もあるからです。結果的に手間ばかりかかって、大変なわりに利益は少ないということも珍しくありません。

では、小さな農家は何をするのが一番いいのか?

今までの農家は生産することだけを考えていて、販売までは考えていませんでした。だからこそ、農家が生産から販売まで行うのです。具体的に言うと農家が価格決定権をもち値段を自分で決めるのです。生産だけしていくらで販売されているのか分からない販売方法ではなく、自分で生産して自分で価格を決めて販売していくということです。

農家が流通に関わったり、営業を行ったり、顧客を集める仕組みを作ったりしていくことが収入を増やすポイントです。

もくじ

売上を上げるための4つの考え方

売上を上げていく考え方としては4つの考え方があります。

1. 既存の生産 × 既存の販売先

2. 既存の生産 × 新しい販売先

3. 新たな生産 × 既存の販売先

4. 新たな生産 × 新たな販売先

それでは、それぞれどのようなメリット、デメリットがあるのかについて解説していきます。

1.既存の生産 × 既存の販売先

「1.既存の生産 × 既存の販売先」ですが、今現在の面積でもしくは借りている土地で生産性を上げたり品質を追求したりする方法です。生産も販売にしても今までのやり方なのでリスクは少ないですが、大きく売り上げを上げることも困難になります。

2.既存の生産 × 新しい販売先

「2.既存の生産 × 新しい販売先」ですが、いま作っている生産品目についてそのままに販売方法を変えていくという考え方です。量販店や、レストラン、直売所、インターネット販売などを行うのです。

中間流通を経由せず、販売単価の向上が望めます。ただ、価格交渉や取引の代金回収などのリスクが出てきます。

3.新たな生産 × 既存の販売先

「3.新たな生産 × 既存の販売先」は、いま販売しているところに新たな生産物や加工品などを販売していく方法です。

野菜をそのまま販売するのでなく漬物など加工品にして付加価値をつけ、直売所や道の駅に販売するなどの販売方法です。既存の販売先なので取引リスクはさけられますが、商品製造の設備投資が必要だったり、その商品が見込んだ売上が達成できるかなどの問題があったりします。

4.新たな生産 × 新たな販売先

「4.新たな生産 × 新たな販売先」ですが、新たな商品を作り、新たな販売先で売っていく方法です。取引単価の向上と中間流通を経由せず、販売することが可能なので、4つの手段の中で一番売上増が見込めます。

ただし、新たな商品開発のための設備投資や、代金回収など一番リスクがあります。また、その商品が見込んだ売上がなかった場合、投下した資金が損失になります。

具体的には①で目標売上を設定し②と③で売り上げ目標の8割を作り、④で後の2割の売り上げにチャレンジするというイメージです。

今すでにあるものをどう売るかが近道

この中でも一番取り組みやすいのは「2.既存の生産 × 新しい販売先」のいまある生産物を新しい売り方で販売することです。「3.新たな生産 × 既存の販売先」の新たな生産では栽培の労力や設備投資など結構手間がかかるからです。

それに対して、「2.既存の生産 × 新しい販売先」ではいま既にある生産物でいいわけですから、後は売り先を考えるだけです。

その中でも、インターネットによる販売は自分で価格を決め自分で集客することができます。小売店やレストラン、直売所などでは料金交渉や営業が必要になってきますが、インターネット販売の場合、料金交渉の必要ありません。自分で価格を決め自動で集客、販売し顧客のリスト(あなたの商品を販売できるお客様リスト)を集めることが可能になります。

またそのお客さんと信頼関係を結んだり、顧客リストを有効に活用したりすることによって繰り返し購入してくれるお客さんを増やすことができるようになります。

このような手法を活用すれば、小さな農家が規模拡大せずに収入を100万、200万増やすことは可能です。大規模経営には大規模経営のやり方があり、小規模経営には小規模経営でしかできないやり方があります。

小さな農家が自立し、自分で生産・販売を行い、価格決定権をもつことによりお客さんと直接つながりながら、安定した農業経営を行うことが可能になります。

友人への宣伝やマーケット出店では長続きしない

自分で作った物を自分で売るといっても、それができないから収益増に悩んでいると思います。ただでさえ農作業や出荷の準備で忙しく、それを商品にしたり、営業したりして人に販売していくことを考えると、とてつもない労力がかかってできそうにないように思います。

私も農業をしていますが、はじめは友人・知人に宣伝して買ってもらっていました。ただ、これでは続きません。初めは義理で買ってもらえるかもしれませんが、そのあと口コミで広まっていくのは難しいです。

こちらも気を使うし、あちらも気を使います。本当に欲しくもないかもしれないのでだんだん疲れてきてしまいます。そのため、私は自分で作った作物を知人に販売するのはやめました。

他には、マーケットに出店したこともあります。直接お客さんと話ができるなどメリットはありますが、お店を出すにはPOPを作ったり、どれだけ売れるかわからないけど商品の準備をしたりと労力がかかります。出店料もかかるかもしれないし、場所が遠ければ交通費もかかります。

マーケットへの出店では、せっかく手間をかけて準備したのに思ったほどの売り上げにならないという可能性もあります。また、かなり気合いれて準備してもマーケットがそれほど集客ができていないので時間の無駄になるということもあります。

このように、小さな農家が販売までして利益をあげることはそう簡単ではありません。しかし、小さな農家だからこそ、その強みを生かし面積の規模を拡大しないで売り上げをあげることも可能です。

小さな農家が目指す方向性

そこで、小さな農家が直接お客さんと取引して強みを生かしていく方向として、目指す方向性があります。それは、こだわりを理解してもらえる消費者とつながることです。

食の安全性や輸入、農薬問題など食に対してこだわりをもつ消費者はたくさんいます。反対に食に対して無関心で、「安くて食べられればいい」という人もいます。こうした消費者は無視して、個人や家族経営の小さな経営の場合はこだわりを理解してもらえる消費者を相手にしなければいけません。値段だけで買うかどうか決める消費者を相手にしてはいけないのです。

自分でこだわって作った物に付加価値をつけ、直接消費者とつながる経営を目指すのです。また、同じように飲食店に卸す場合でもこだわりを理解してくれる飲食店とつながることが必要です。

小さな農家こそインターネット販売をやるべき

消費者と直接つながるといっても、関係を築くことで販売まで繋げるのは一番難しいところです。大企業ですら認知してもらうことに必死で、いろんな広告を繰り返し見ることからも認知してもらうことがとても大変なことが分かります。

農家は知名度もないし、資金もありません。知ってもらうこと自体無理ではないかと思うでしょう。そのような農家こそ、先に述べたインターネット販売をするべきです。

こだわりを理解してくれる消費者とつながるといってもなかなか簡単にそのようなお客様を見つけられるわけでもありません。しかし、インターネット販売の場合は向こうから勝手にあなたのことを発見してくれるようになり、商品を購入してくれるようになります。

こだわりなど生産に関わる情報すべてをサイト上にすべてを載せることによって興味を持った方が自動で見にきてくれるようになるのです。

農業を行う上で、自分でしか書けない情報があるはずです。「種をまいた」「収穫した」「台風でやられ」、など普段の現場を写真などもまぜサイトを作っていくのです。他にも、自分の考え方や身の回りの出来事、農業への想いなどすべてが情報なのでそれを伝えていくのです。

情報の価値というのは、出すほうが判断するのではなく「情報の受け手」が価値を判断します。そのため、「こんなことは書いても仕方がない」などと思わず、どんなことでも書いた方がいいです。

情報を見た方が共感してくれれば、あなたのことを応援してくれるようになります。そこからリピーターになることもあります。とにかく情報を共有することが大事になります。

そのためのツールとしてインターネットは手軽にできてとても高い効果があります。インターネットがなかった時代に比べるとだれでも集客することが可能になったと思います。今までなら農家が集客することはかなり難しかったと思いますが、ネットを活用すれば誰でも集客することが可能になりました。

インターネットを活用すれば、消費者に直販できる

例えば私であれば、農繁期の収穫時期になれば作業が大変忙しくなります。そのため収穫の1ヵ月前頃から予約販売したり、既存のお客様に案内状を送ったりします。収穫が忙しくなる前には、ある程度まで既存のお客様の宅配伝票など、事務仕事を済ませておくのです。

収穫期は猫の手も借りたい忙しさだと思いますから、このように労働を分散しておくことができます。インターネットを活用して予約で購入してもらうように、販売時期をコントロールすることができます。

さらにサイト運営を行うことで、集客だけに限らず販売から決済まで自動でできるようになりました。インターネット販売は完全自動化が可能ということです。極端な話、寝ている間に商品が売れ、クレジット決済まで済ませることができます。後は商品内容と住所を確認して、自動で伝票に印刷するだけです。

しかも、サイト運営では資金もそれほどかからないし、家でできるので忙しい農家こそやらない手はありません。

ネットを使うと思いもよらない効果がある

ネット販売を行うようになると興味をもつ消費者が集まるようになります。そこからネットからの注文だけでなく、電話やFAX、直接買いにくるなどリアルの世界につなげていくことができます。

基本的にネットだけでは信頼性に欠けることもあるので一度会ってみて確認してから購入につながるということもあります。こうしたとき、サイト上で情報を出せば出すほど信頼が高まります。

また、地域でしか作られていない貴重な品やブランド野菜などを作っているのならば、それを探している業者もいるので契約につながることもあります。同じように通販業者や産地直送お取り寄せなど、いい物を探している業者もいるので思わぬ契約に結び付くこともあります。ホームページを見た地元の新聞社や雑誌、全国放送のテレビ局など取り上げてもらえることもあるかもしれません。

例えば、全国紙の新聞などに取り上げられることは難しいことかもしれませんが、地元の新聞など情報誌では比較的簡単に取り上げられることもあります。こうしたところでは常に情報を探してアンテナをはっているためです。私もサイト経由で何度か地方紙に取り上げられたことがありますが、それを見たお客さんから問い合わせにつながっています。

地域限定の品など珍しい作物や商品をもっている場合などはさらに興味を示してもらえるでしょう。

今の時代はマスメディアの記者もネットで情報を探しているため、特集されれば爆発的な売り上げを出すことも可能です。

サイト運営によって顧客リストを取得する

インターネットを活用し、ネットで受注するようになると連絡手段はメールアドレスになるので、お客さんのメールアドレスの情報を知ることができます。また、通信販売になるとお客さんの自宅やギフトだと送り先の住所を知ることになります。こうしたメールアドレスや住所は貴重な顧客リストになります。

ビジネスで一番大切なものは顧客リストになります。一度買ってくれたお客さんのメールアドレスや住所が分かればメールマガジンやダイレクトメールなどを送ることができます。一度購入して終わりではなく、こちらから何度もアプローチすることができるようになるのです。

観光農園や直売所と同じ状況を作り出す

観光農園や直売所などでは、お客さんは毎年同じ農園に買いに行くということがあります。年十年も付き合いがあることも珍しくありません。そこの農場のオーナーとお客様は知り合いになっていてお互いよく知っている関係にあるのです。

これであれば、何もしなくても商品がリピートで売れていき、収益の見通しがつきます。

これと同じようなことがネット販売でも可能です。農園で作っているものがいい物であるならば、情報が口コミで伝えられます。

WEBサイトなどで検索してもらうように入り口を作り、メールマガジンなどによって関係性を築き、パンフレットやDM、収穫前の商品案内状を郵送するなどして自分の農園をブランディングしていくのです。

顧客リストを活用することで売り上げは倍増する

サイトでは「誰がどんな農場で作物を作っているのか」「どのようなこだわりで何を考え、何を伝えたのか」「農園にはどんな歴史があり、他農家と比べてどんな違いがあるのか」などを積極的に伝えるべきです。

また、簡単に注文できるようにネットショップを工夫したり、ハガキやFAXで簡単に注文できるように作成しておきます。

なぜ農家がここまでするのかというと、他の農家がメルマガをしたり、DMを送ったりしているところがそもそも少ないからです。いい商品を丹精込めて作っても、知ってもらわないと意味がありません。販売を他人任せにしていると、いつまでたっても利益がだせません。

一方で、きちんとしたサイトを作り、いい商品を世の中に届けることを考えるようになるとお客様から感謝されるようになります。「美味しかったので次もほしい」と言われます。

大切なのは自分の想いです。「なぜ農業をしているのか」「なぜそれを販売しようと思ったのか」「相手にどう行動してほしいのか」を考えましょう。

これからはますます、お客様との関係性で物を売る時代になってきます。ただ売っている商品よりも、「誰がどんな思いで作っているか」という物語や情報があり、信頼関係がある商品が必ず選ばれます。

こうした農作物であるほど付加価値をつけられるので、結果的に高単価で販売することも可能になります。こうしたことを繰り返していけば濃いお客さんが増えてきて、徐々に口コミも増加します。

工夫できることは無限にあると思うので、やっていく中で常に改善していき、「どうすればお客様に喜んでもらえるか」「どうすればリピートしてもらえるのか」を考え続けることが大事です。

戦略的にインターネットを活用し、サイト運営を行って農業ビジネスを組み立てれば、顧客リストも増えて売上も増えていきます。まずはお客様にあなたの存在を知ってもらい、信頼関係を築いたうえで感謝されながら収益を拡大させることを考えましょう。