農業といっても米から野菜、果物、畜産、花までいろいろあります。それぞれにビジネス形態は全く異なります。これらのうち、何を作れば一番稼げるか疑問に思ったことはないでしょうか。

農業は土地や気候や産地の得意不得意などあらゆる条件があるので、一概にこれがいいということはできません。それでもあくまで目安として考えることはできます。土地の生産性や労働時間を目安にすれば、ある程度までは考えることができます。その内容について詳しく解説していきます。

もくじ

作物の違いによる収益性

新規就農では作物を選ぶにあたり、その収益性を考えると思います。面積あたりで農業所得はほとんど黒字になりますが、家族労働を考えると赤字になる場合もあります。

下の表は農林水産省の{農業経営統計調査}の営農類型別経営統計を参考に数字を出しました。

主に水田作(イネや麦など)、露地野菜(ビニールハウスを使わずに外で作る)、施設野菜(ビニールハウスを使う)、果樹経営(果物)の4つに分かれます。年によって収穫量など変わるため、あくまで平均的な数字を出してみました。

(10aあたり100m×10m:1000㎡=1反=302.5坪)

作物 粗収益(万円/10a) 経営費(万円/10a) 所得(万円/10a) 労働時間(時間/10a) 1時間当たり所得
10.6 8.0 2.6 28.5 986
小麦 5.2 4.5 0.7 5.8 1212
大豆 4.3 4.1 0.2 11.4 214
そば 4.4 2.6 1.8 6.2 2673
34.8 24.9 9.9 125.4 943
さとうきび 13.4 7.2 6.2 85.3 805
青ネギ 72 37 35 603.8 608
メロン 50 23 27 235.5 1196
すいか 59 33 26 221.2 1222
きゃべつ 39 21 18 89.8 2255
施設ミニトマト 407 204 203 1488.2 1688
施設いちご 350 172 179 2106.4 924
施設きゅうり 243 109 134 1095.1 1311
ぶどう 68 34 34 454.7 800
日本梨 56 33 24 377.0 675
もも 57 28 29 284.4 1098
りんご 41 23 18 273.3 731
みかん 42 28 14 236.3 654

品目の生産するにあたって、この経営指標は農業固定資産(農業機械や小屋など)の標準的な装備、栽培技術を既に保有していることが前提とされています。また、水田などは各種補助金も含まれています。

なお、10aあたりの所得、労働時間はそれぞれ土地生産性、または労働生産性の高さを示すだけであり、経営全体の収益性を表しているわけではありません。

作物により考え方が全く違う

作物によって農業所得は異なりますが、所得が高い物が単純に儲かるわけではありません。

米の場合、1時間あたりの所得は986円となっていますが、それは労働時間が少ないことによります。昔は機械化が進んでおらず、手で田植え、稲刈りを行っていたのです。

現在、田植えを手で植えている人や稲を手で刈っている人はほとんど見かけません。田植え機、トラクター、コンバインなど機械化がすすみ、圧倒的に作業時間が少なくなり、仕事も楽になりました。

しかし、年間を通した稼働率はものすごく少ないわりに農業機械代や修理代に費用がかかります。

米の場合は国の政策や政治に左右されることも多く、減反や補助金に収益を依存しているところも大きいです。また、大規模に土地を利用して経営するのが特徴です。

一方、所得の高い農業はそれだけ、手間、暇がかかっているということを表しています。野菜や果樹、花などは労働集約型と呼ばれ、狭い土地でもある程度所得を維持することができます。

施設野菜の場合、特に狭い面積でも所得が高いことがわかります。それだけ労働時間もかかっています。

しかし、建物にかかる費用が膨らむこともあります。本格的にハウスを建設する場合、10aで1000万の設備費用がかかることもあります。逆に露地栽培ではそうした費用を抑えられますが、天候の影響をもろにうける場合もあり、自然災害のリスクが高くなります。

結局、何を作れば儲かるのか

まず、現場で仕事をするちき、これらの資料は、あくまで目安になるとしかいえません。そもそも、農業は天候に左右されることが多く、年度によっても収量が変わってきます。需要と供給のバランスにより、価格の変動も多きいです。

面積当たりの収量も個人個人の栽培技術によりだいぶ違います。何を作るかということも大切ですが、どのように作るのかということも重要なのです。

同じ野菜や果物でも産地によって価格は変わる

また、産地など地域によっても同じ品目、品質でも価格が異なってきます。土地条件や、流通費まで考えると、どこで農業をするかも重要になってきます。農産物の場合、自分がどんなにすばらしい物を作っても、さまざまな外的な環境によって価格が左右されるといえます。

ただ、重要なことはどの作物でも共通していますが、品質を追求し、収量を上げることです。これが大前提になります。

農業は管理から収穫まで体力勝負なところもあるので、労働の部分で作物を選ぶ場合もあります。例えばすいかを作っていた人がだんだん年とともに体力がきつくなってきたから、葉物やねぎなど軽いものに変えるのは一般的です。

農業はたくさんの要素が複雑にからんでいる

効率を上げるため大規模化や機械化は有力な選択肢です。しかし収支のバランスを考えられず、借金が膨らんだり、過重労働のために健康を害してしまったりしては元も子もない状態になってしまいます。

農業で稼ぐことは多くの要素が複雑に絡んでいるので、一概にどの農業をすれば儲かるのかは言い切れません。「土壌はどのようになっているのか」「産地としての相場はどうなのか」「気候はどんな作物に向いているのか」などたくさんあります。これらの条件を意識したうえで作物を選ぶことが大切です。

収益性を高め、生産から販売・加工など独自の展開をして成功している例も多数あり、やり方によっては可能性が充分あるといえます。

例えば私も、直接お客様に対して直販を行っています。具体的にはインターネットを使って集客し、付加価値を付けて通信販売することによって利益率を上げています。

そのため、栽培して市場出荷だけをしていたときと比べ収益性が高く、その利益は2倍~3倍になります。同じ産地で同じ品目を栽培していても、販売方法を変えるだけで年収は大きく違ってくるのです。こうしたことを考えると、結局はやり方次第だといえます。

このように農業で1000万円を稼ぐには何を作るかも大切ですが、「収量を増やすにはどうしたらいいか」「どうしたら付加価値がつけられるか」「消費者は何を求められているのか」などを含めた栽培技術、マーケティング、経営を理解することが必要になってきます。