大企業と中小企業、個人事業では取るべき戦略が異なります。個人事業が大企業の真似をして、広告や価格の付け方をしても意味がありません。大企業には大企業の戦略があり、個人事業には個人事業の戦略があるのです。

ここでは、「知名度も信用も何もない個人の農家が自ら生産から流通・販売まで農業ビジネスを組み立てるにはどのような戦略を立てるべきか」について考えていきます。

もくじ

大企業の戦略と中小、個人の戦略の違い

資本のある大企業と、中小企業や個人が取るべき戦略は異なります。例えば大企業は、テレビCMや新聞広告などの広告を行います。こうした大企業の広告戦略は、イメージ広告と呼ばれています。

例えば、テレビCMは何度も何度も繰り返して、同じことを流していると思います。これは、何回も放送して自社を認知させることにより、企業の商品を購入に向かわせるためです。次第に販売が伸びていくだろうと推測し、戦略的に行っています。

これら大企業は、自社を多くの人に認知させるため、たとえ価格競争になったとしても、その認知度と数量そのもので勝負することができます。また、莫大な広告費をかけているため、資本があってこその戦略になります。

個人が考える戦略とは

中小企業や個人、農家の場合、こうしたイメージ広告や同じ戦略、考え方の真似をしても意味がありません。個人の場合は、「認知も信用もされていない状態から、どのようにして信用を増やし売上を上げてきたのか」という考え方を参考にしなければいけません。

中小企業や個人で売り上げを上げているところであっても、最初は認知も信用も全くなかったはずです。そこから、「どのような方法で認知されるようにしてきたのか」を真似しなければいけないのです。

成功している大企業も、最初から大企業だったわけではありません。試行錯誤しながら必死で頭を振り絞り、改善に改善を重ねとことで今があるのです。

農家が考えるべき戦略

農家の場合、90%以上が農協まかせで、こうした戦略を考えたこともないでしょう。こうした「個人がどのような戦略で考えればいいか」という問題は、そのまま農家にも当てはまります。

農家は生産だけは必至で考え、創意工夫のもと栽培技術を磨いてきました。しかし、販売ノウハウが全くないために、生産だけで終わってしまい、その先を考えることがありませんでした。

こうした、個人が「どのような戦略をたてればいいか」の答えは、異業種にたくさんあります。そのため、農業の考え方ではなく、異業種がどのように行っているのかを考えることがとても参考になります。

異業種が当たり前にやっていることにヒントがたくさんある

例えば、私は果物のインターネット販売をしようと思ったとき、通信販売のチラシや広告を参考にしました。自分でチラシを考える場合は、「どういうことを書いているのか」「何を書けばいいか」「写真の載せ方はどうか」などチラシや通販会社には、参考になることはたくさんあります。

サイトや案内状を作るときは、「実際に通信販売を行って成果を出しているところ」や「実際にネット販売で売上を上げているサイト」などをどんどん真似すればいいのです。成功しているところを参考にして、「どうやったら自分の農園に当てはめることができるだろうか」を考えるのです。

たくさんの方法を真似していても、出来上がったときには完全なオリジナルになっています。そのため、誰が見ても真似をしているようには思いません。

さらにそこから、改善を重ねていけばいいのです。無から何かを作り出すのは難しいものです。私は作り出すことなど不可能だったので、「異業種で行われていることを、自分の農業で販売することにどのように当てはめることができるか」を考え続けました。

実際に行ってみると、業種は異なってもいろいろな場面で自身のビジネスに当てはめることができました。直接農家がウェブサイトやダイレクトメールを作ろうと思えば、参考になるものは山ほどあります。

産地直送のネット通販がしたいなら実際にお取り寄せしてみる

例えば、通信販売やネット販売などを専門でやっているところで、何か購入してみてください。力の入っている販売業者の場合は、明細書だけではなく、いろいろな同梱ツールが入っています。

例えば、「サンキューレター」「ニュースレター」「パンフレット」「注文用紙」「お客様の声が書かれたもの」「アンケートや返信ハガキ」などが同梱されている場合があります。

これらは非常に参考になります。このとき、「なぜ、これらが同梱ツールとして入っているのか」「受け取り人払いハガキが入っている意味は何なのか」などを考えることが大切です。

自分の農園とは全く関係ないものを購入したとしても、多くの場合は自分の農園に当てはめて考えることができます。そのまま捨ててしまっては、とてももったいないのです。

大切なのは、すべてを真似するのではなく「自分で取り入れることができそうだとイメージできる」ところから始めることです。

例えば、価格の付け方から、自社ブランドの方向性などの参考になるはずです。特に値段の付け方については、安売りしているところがないことに気づきます。個人で勝負しているところは、価格を下げることではなく、価値を上げることを意識していることが分かります。

農家がネット販売や通信販売を始めようと思ったら、大企業の広告の出し方、販売価格の付け方を真似してはいけません。真似すべきものは「知名度も信用もないところが頭を振り絞り、どのようにしてゼロから軌道にのせてきたのか」を見て考えることです。

そこを考えることによって、「信用も知名度も何もない農家がどのように進んでいけばいいか」が見えてきます。まずは、異業種で当たり前に行っていることを自分で行っている農業に当てはめることです。「何を取り入れることができるだろうか」と自分に当てはめて考えることです。

ヒントはたくさん転がっているので、あとは行動するかどうかで結果が変わってきます。