農家がインターネットを使って販売しようと考えたとき、販売する方法がたくさんあるためどのような販売方法がいいのか迷うことがあります。
インターネット上で販売する主なものには楽天市場などのショッピングモールに出店する方法と、独自ドメインをとり自分のホームページで販売サイトをもつ方法があります。
それぞれ特徴があり、「すぐに販売して結果を出したいか」「継続的に顧客のリストをとり安定させたいか」など販売方法によって得意な方法とそうでない方法があります。
結論をいえば、農家がネット販売をするなら独自のホームページを持ち独自ドメインで運営することが最も良いといえます。
すぐに結果を出すことは難しいですが、長期的に顧客と関係性を持ち持続可能な農家によるネット通販が可能だからです。
ここではなぜ独自ドメインがいいのか、楽天などショッピングモールへの出店と独自ドメインの販売サイトをもつことの違いについて説明していきます。
もくじ
楽天に出店するべきか、独自のお店を作るべきか
あなたが栽培したお米や野菜、果物や加工品などをインターネットで販売しようと思ったら、まず最初に楽天などのショッピングモールに出店するのか、独自の店舗を構築するのか疑問に思うのではないでしょうか。
あまりお金をかけたくもないけど、自分でホームページなど販売サイトも作れない、一体どうすればいいの?と思うかもしれません。
まず、インターネットで販売するためにはある程度の資金が必要になります。販売はしたいけどお金をかけたくないし、販売するための努力もしたくないというのであればあきらめた方が賢明です。
お金もかけず努力もしない、けれど販売したいという都合のいい話はありません。
楽天に出店するなら初期費用や運営費用、広告費などかかりますし、自分独自のサイトであっても楽天ほどではないにしても費用はかかるし、運用していく努力も必要になります。
今回は農家がネット販売する入り口である、どのような考え方でネット販売を始めたらいいのか、楽天に出店するのと独自のお店を作り運営する違いについて解説していきます。
農家がネットを使い販売するために必要な考え方
農家が自分で生産した物を販売するときは、農協に販売を委託したり、市場に出荷したりすることが多いです。直接販売店や直売所にもっていく場合もあるかもしれません。
いずれにせよどこかに販売をお願いすると思います。
販売を誰かに委託すると販売手数料がかかります。販売をお願いしているわけですから当然手数料がかかってきます。
例えばあなたが100円で出荷したとしてもスーパーなどで店頭に並ぶときには300円など3倍の値段で売られています。
生産者が栽培したものが販売するまでには、出荷団体や卸売市場、小売り店などの流通経路がありたくさんの人の手が関わっているからです。作る人、流通する人、販売する人など関わって初めて販売されています。
例えば、小売価格が100%のなかで農家手取りが30%、出荷団体経費が20%、卸売り20%、小売り30%などとなっています。
ネット販売する場合も同じです。生産から販売するまでにたくさんの人の手が必要ならそれだけ手取りは減っていきます。
それに対して、関わる人が少なければ少ないほど手取りは多くなります。農家が自分で生産して自分で販売すれば100%自分の収入になります。
楽天出店にかかる費用
自分で生産して、自分で販売できれば利益率は非常に高いものになります。しかしそのようなことはみな分かっていても実際やってみると大変なことが多いです。
生産から営業、加工、商品開発、流通、決済、販売などを自分でやらなければならないからです。
分かっているけどもなかなか自分1人では出来ないから悩んでいると思います。そのなかでもインターネットを使って販売をサポートしてくれるのが楽天のような販売サイトになります。
それでは、楽天に参加するのはどのような仕組みになっているのか見ていきましょう。
楽天で販売する場合であれば、初期費用で64,800円(税込み)がかかります。それから月額費用がかかります。出店するプランによっても異なりますが、19,500円から100,000円まで自分で選びたいプランによって異なります。
また、システム利用料として月間売上高の2.0%から7.0%がかかります。ここで注意点ですが、楽天の場合1年間契約で一括払いになります。
例えば楽天市場の「スタンダードプラン」の場合、月額50,000円の場合、50,000×税1.08×12カ月=648,000円になります。初期費用が64,800円なので合計で712,800円になります。
一番安い「がんばれプラン」でも19,500×税1.08×12カ月=252,720です。初期費用64,800を合わせて317,520円になります。
これらは出店するための最低限必要な費用であり、売上が上がれば販売手数料が別にかかるという仕組みです。
それだけでなくクレジット決済を導入しようとすれば手数料、月額料金3,240円がかかることになります。
さらには楽天スーパーポイントというものがあり、ポイントを付与するのは出店者の負担になるのです。購入代金の1%が購入者に付与される仕組みなのですが、強制的に出店者から1%引かれるようになっています。
他にも安全システム手数料やアフィリエイター経由の手数料など出店者から引かれる仕組みはどんどんでてきます。
楽天のお客様は出店を迷っているあなたであり、商品を購入する人ではないのです。以上がどんなにがんばっても利益が出ない仕組みなのです。
このような仕組み上、農家が楽天に出店するのはリスクが高すぎるとしか言いようがありません。
楽天出店は顧客のリストが自由にならない
前述のように楽天に出店することは、たくさんの費用がかかり小規模農家が年間を通して販売していくことは現実的ではありません。
ただ、費用の面だけではなく農家が継続に販売していくためにはデメリットとなる点もあります。それが「顧客リストを持ち出せない」ということです。
顧客リストとは、販売サイトで購入したお客様の住所やメールアドレスなど個人情報です。楽天市場以外のショッピングモールでも同様ですが、その販売サイトから外に持ち出せないのです。
そのため楽天市場の客様に対しては楽天市場内だけのお付き合いになってしまいます。
持続的な関係性を持ち、持続的に運営していくには顧客リストは非常に重要になりますのでこれが自由にできないことは大変なデメリットとなります。
ライバル店が多い
楽天市場は知名度があり多くのお店が出店されています。自分独自でネットショップやホームページを作成したとしても誰も訪問してこない例は数多くあります。
しかし楽天市場の場合は、それ自体に集客力があります。
たくさんのお店があり、たくさんの人が訪れるショッピングモールではありますが、それは同時にたくさんのライバルの中から選ばれて競争に勝ち抜かなければいけません。
例えば楽天市場で「みかん」と検索してみた結果、1〜45件 (93,093件)がヒットしました。
9万件以上の検索結果で上位に表示されるようにするためには、費用がかかることもあれば安売り価格の競争になってしまうこともあります。
農家のネット直売は安売りしてはいけない
このようなたくさんのライバル、たくさんのお客様が訪れる楽天市場ですが、いち小規模の農家にとっては全く向かないと言っていいでしょう。
農家は日ごろ自然の力を借りて日々いい物を作ろうと試行錯誤をしています。病害虫にやられることもあれば台風などの被害にあることもあります。
さまざまなドラマがあるのです。
個人が情報発信できるようになった現代はそうした情報を発信して、消費者と直接やりとりすることができます。
ライバル店舗と競争して安売りをするより、独自性をみつけ安全性や国産にこだわりがあるような意識のある消費者と関係を築いていくような方向性がいいです。
値段だけでなく美味しさや新鮮さ、安全性などに価値をおく人たちです。誰がどのような方法でどのような考え方で農業をしているのかまで見ています。
このような人たちと関係性を築くためには、メールアドレスなど個人情報が必要になるため、独自の販売サイトをもってコツコツと運営することが農家のネット販売には向いているのです。
結局安くても価値が伝わらければ売れないし、高くてもその物語が伝わっていれば販売することができるのです。
関係性を作ることが最も大事
農家がネット販売をしようと思ってもいわれるままに出店していては、手元にお金が残ることがありません。契約料、月額手数料、売上手数料、決済手数料、広告料、コンサル料、さまざまな登録料などかかります。
農家であれば知り合いや身内などに自分で作った農産物を宅配することもあると思います。その延長でいいと思うのです。
信頼できる人に食べてもらいたいと思って段ボール箱に詰めて送ります。
販売する場所がインターネット上になるだけです。関係性を作るために自分のお店に自分の栽培の様子や特徴などを発信していくのです。
例えば私は、関係性を維持するためメルマガやダイレクトメールを送り商品案内をしていますが、以下のような顧客管理ソフトを使ってその人その人の商品購入履歴などを管理しています。
販売することを考えるのではなく自分の農園の栽培の様子やこだわり、自分の考え方などを情報発信するつもりでいいので自分のホームページや自分のお店で十分なのです。
結果として販売できている状態になっていると思います。
まとめ
農家がネット販売しようと思ってもたくさんの情報があり、何をしたらいいのか分かりにくいです。
その中でも主な販売方法に楽天などのショッピングモールと独自ドメインをもった自分独自のホームページや小さなお店があります。
農家が販売していくには安売りすることなく、情報という付加価値をつけて適正な価格で販売していくことが大事です。
そのためには、信頼されて応援されるような関係性を作ることが大切です。そのような関係性を作り持続していくにはショッピングモールのような大きなところではなく、自分独自のお店をもつほうが継続した農業経営が可能となるのです。