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農業をするのに欠かせないものとして農薬があります。この農薬ですが、世界各地で使う量に違いがあります。農薬をたくさん使用する国もあれば、農薬使用が少ない国もあります。

日本は、中国、韓国に次いで農薬の使用量が多い国です。この結果を知って、「日本の農産物は世界の中でそれほど農薬の量が多いのか」とショックを受けた方もいるかもしれません。

ただ、これには統計上の問題もあります。それでは、「日本の農薬使用量はどの程度多いのか」について詳しく見ていきます。

農薬とはどのようなものなのか

農薬は農薬取締法によると、次のように定義されています。

1.農作物に害を与える菌や線虫、ダニ、昆虫、ネズミ、その他の動植物、またウイルスの防除に使われる殺菌剤、殺虫剤、その他の薬剤

2.農作物などの生理機能の増進、または抑制に使われる植物成長調整剤、発芽抑制剤、その他の薬剤

また、病害虫を防除するための天敵も農薬とみなされています。農作物を栽培する際に、病気や害虫、雑草、ネズミなどの被害から農作物を保護することが、農薬の大きな目的です。

日本の農薬使用量はアメリカの6倍!?

世界各国の中でも農薬の使用量は異なります。以下のグラフでは、面積当たりの農薬使用量を表しています。

日本の農薬使用量は、中国、韓国に次いで3位になっています。確かに、日本の農薬の使用量は多いようです。ただ、この統計にはトリックがあります。それは、すべての農薬使用量を全作物の栽培面積で割った単純な単位面積あたりの農薬使用量を表していることです。

農薬を使用する量は作物によって違いがあります。例えば、大豆や小麦、ジャガイモなどはあまり農薬の量を使う必要がありません。農薬をあまり使わなくても病虫害に襲われることがないため、結果的に農薬をあまり使わなくてもいいのです。

これらの作物は、広大な土地を活用して栽培しています。そのため、小麦などを大規模な農園で作るのを得意としている国は、単位面積の農薬量は少ないことになります。

例えば、アメリカなどでは、どこまでも続く広大な面積で小麦などを栽培しているのを見たことがあるでしょう。こうした作物を大量に栽培しているところでは、面積あたりで使用する農薬の量が少なくなるため、農薬使用量の数値も低くなります。

一方で、日本のように国土の面積が狭い国では、作物は広大な土地で栽培されていません。むしろ、狭い面積で集約的に栽培されている場合が多いです。このような場合、ハウスで栽培していることがほとんどです。また、キュウリ、トマト、なす、いちごなど比較的農薬の使用量が多いのもたくさんあります。

作物によって農薬を使う量は異なる

統計では、日本は単位面積での農薬使用量はフランスの4倍ほどになっています。この結果を見て、「フランスも国土が広くないのに、どうしてそこまで違うのか」と思うでしょう。

しかしブドウだけで見てみると、1ヘクタールで見た場合の農薬量は、日本は30.9㎏であるのに対し、フランスではなんと倍の61.8㎏という結果になっています。

この結果から、日本の農薬使用量が多いとは必ずしもいえないことが分かります。

このように日本では、農薬の使用量が多いように見られます。しかし実際は、作物によって農薬の使用量が全く異なります。そのためこの統計では、単純に面積あたりの農薬量としか見ることができないことになります。

そもそも、地域によって病害虫の発生率は異なる

また違う視点で、日本のような高温多湿の地域とそうでない地域では、病害虫に侵される危険度も違います。そのため、一言で「単位面積あたりの農薬使用量」といっても基準がそもそも違うともいえます。

農薬の判断基準は農家によって異なる

農作物は常に、気象の変動や病害虫、雑草、土壌環境などによる、さまざまな害にさらされます。農作物の生産者は、品質や収量に影響がでないように適切に農薬を使用しています。

各都道府県の地域ごとに、農薬使用の目安となる防除暦というものがあります。これによって使用回数や濃度などが決められているので、それを基準に農薬の使用を守っています。

しかし、農薬の濃度や散布量、回数などは個人の農家の判断に任せられています。そのため、「正確にはどのような使われ方をしているのか」まではわかりません。

ある程度の判断指標はありますが、実際現場で農薬を選んで散布するのは農家なので、農家によって散布濃度や散布回数は異なります。

病害について

現在日本で報告されている植物の病気による被害は、6000以上に及び病気の大半が農作物の病害です。糸状菌(カビ)や細菌、ウイルスなどが要因の伝染する病害と、気象や土壌環境などが原因になる伝染しない病害があります。

虫害について

農作物の害虫の種類は膨大で、その多くは昆虫です。日本では2万9000種あまりの昆虫が記録されています。その1割である約2900種が害虫として報告されています。

その中には、海外から移入して定着したと考えられるものが1割を占めるといわれています。

害虫による直接的な被害は、葉や茎などが食べられてしまう「食害」が中心です。葉や茎、果汁などの汁液が吸収されるダメージもあります。害虫がウイルス病を媒介するなど、間接的な被害も多いです。

世界の農薬使用量を統計で見てみると、中国、韓国に次いで3番目に日本の農薬使用量が多い結果です。これは、環境の違いもありますが、統計の見方によるものです。

単位面積あたりの農薬量で計算しているため、農薬が少なくても栽培できる小麦では農薬の使用量が少なくなります。また、小麦は基本的に広い面積で作られています。例えば、アメリカなどがこのような農業です。

これに対し、狭い面積で栽培するようなトマトの場合、病害虫に弱いため農薬量が多くなります。トマトは集約的に栽培するため、結果として面積あたりの農薬量は多くなります。日本はこのような農業をしています。

このように、日本が世界3番目の農薬使用量といっても作る作物や面積で使用量が異なってしまうため、統計の仕方でどのようにでも変わってしまいます。そのため、統計の結果だけに惑わされず、中身を知ることが大切になります。