以前であれば、生産者である農家が自分で栽培した農産物をお客様に販売していくのは、たくさんの困難がありました。マーケティングや販売、広告などといったことは、個人の農家が出来るものではなかったからです。

しかし、現在ではインターネットが発達したため、個人でもお客様に販売することが可能になりました。従来の広告であれば、企業が伝えたいことを不特定多数の人に伝えることが一般的でした。

しかし現在では、農家であってもお客様と信頼関係を築きながらビジネスを構築することが出来るようになりました。それがダイレクトレスポンスマーケティングと呼ばれる手法です。

お客様と信頼関係を築いていく方法は、ネットを使えば少ない費用でできるので、個人の農家にも向いているのです。

ダイレクトレスポンスマーケティングは、自分の農園の良さを伝えることができ、信頼関係を構築して、何度でも購入してもらうことができます。そのため、今より大きく売上をあげることができるのです。

それでは、ダイレクトレスポンスマーケティングとは、いったいどのようなものなのか、農家がどのように活用すればいいのかについて考えていきましょう。

ダイレクトレスポンスマーケティングとは

ダイレクトレスポンスマーケティング(DRM)を考える前に、以前から「ダイレクトマーケティング」という手法がありました。まずはダイレクトマーケティングについて解説します。

ダイレクトマーケティングとは、メーカーや生産者が卸や小売店を通さずに、直接お客様に物やサービスを販売することです。

農家であれば、農協や出荷組合、卸売市場、小売店などを通さずに直接消費者に届ける販売方法です。

直接お客様に商品を届けることが出来るようになったおかげで、中間マージンが不要になりました。そのため、利益率が高くなるのです。お客様の立場からは、流通マージンがかからないので安く購入することができます。

つまりメーカーや生産者が消費者の「名前」や「住所」などを知ることにより、直接お客様に販売することが可能になったのです。

そしてダイレクトマーケティングが進化して、現在ではレスポンス(反応)してくれるお客様だけに対応していくため、効率的で無駄がないのです。

つまり興味のある人(反応してくれる人)だけに向けてセールスをするため、どれほど効率がいいか分かるかと思います。

ダイレクトレスポンスマーケティング(DRM)は、インターネットの世界やリアルの世界であらゆる業界が使っている手法です。通信販売もこうした手法が使われています。

近年のインターネット業界や通信販売業界の急成長の理由にはこうしたDRMによるものといわれています。

DRM(ダイレクトレスポンスマーケティング)の構造とは

DRMは、以下の3つのプロセスから成り立っています。

1.  ダイレクト→集客(人を集める)

2. レスポンス→教育(信頼関係を築く)

3. マーケティング→販売(商品・サービスを繰り返し販売する)

DRMの特徴は、通常のマーケティングとは異なり、教育(購買意欲を高める)することによって、こちらから売り込むことなく、お客様のほうから欲しいと思わせることができます。

例えば、テレビショッピングの「ジャパネットたかた」をご存知の方も多いでしょう。「ジャパネットたかた」の場合は、DRMを活用して、以下のような戦略をとっています。

1.  集客→テレビやラジオ、などを使い主婦層などをターゲットにした時間帯に集客

2. 教育→商品の説明やメリットなどを紹介し、なぜあなたがこの商品が必要なのかを説明する

3. 販売→「商品が欲しい方は今すぐ○○にTEL」のように行動を促す

このように、強引な売り込みをする必要がなく、すでに欲しいと思っている人に販売するため、大きな成果を上げることができるのです。

「ジャパネットたかた」のテレビショッピングで「今だけ数量限定で○○円」などを見て、「安い!」と感じたことはありませんか? 確かにあの値段は安いのです。

あのように低価格で提供しているのには、理由があります。テレビショッピングで購入した後に、カタログなどが送られてきます。そのカタログで他の商品を宣伝しているのです。このように、一人のお客様から複数の商品を購入してもらうことで利益を確保しているのです。

フロントエンド商品とバックエンド商品とは

具体的にいえば、テレビで紹介している商品は「集客」のための商品であり実際には、本当に売りたい商品が他にたくさんあるのです。

これをビジネス用語では、「フロントエンド商品」と「バックエンド商品」といいます。最初に見せる集客のための商品をフロントエンド商品といい、本命の商品のことをバックエンド商品というのです。

要は、お客様の個人情報を集めて、その個人情報に向けて商品の宣伝をしているのです。

この個人情報は「見込み客」になり、顧客リストになります。顧客リストは、名前や住所が分かるため、何度でもアプローチすることができるのです。

他にも、折り込み広告などを注意深く見てみると、「今だけ無料で差し上げます」という見出しがあったり「初回限定○○円」など激安で販売していたりする例があります。

この場合も、あくまで顧客リストを集めることが目的です。興味のある人しか問い合わせしてこないため、見込み客となるのです。一度購入の経験があれば、再度購入してくれる可能性があるため、そのリストを活用することができるのです。

これは、すべてのビジネスに応用できる考え方であり、実践するだけで利益を大きくすることが出来ます。もちろん、農家であってもこの考え方を活用してセールスをすることができます。

以下では、生産農家がDRMの方法を活用し、どのような考え方をすれば、今よりも売上を上げることができるのかについて考えていきます。

農家がDRMを活用してお客様と信頼関係を築く方法

このようなDRMですが、テレビショッピングや折り込み広告など農家には関係ないと思ったでしょうか。そんなことはありません。新聞広告やテレビショッピングだけがDRMを活用した集客方法ではないからです。

現在では、「インターネット」「電話やFAX」「メール」「DM(ダイレクトメール)」「パンフレット、チラシ」など、人とやりとりする方法はたくさんあります。要は、これらをうまく組み合わせていけばいいのです。

現在ではインターネットがあるため、最も難しいといわれる「集客」ができるのです。もう一度DRMの内容をおさらいしておきましょう。

1.  集客(人を集める)

2. 顧客教育(信頼関係を築く)

3. 販売(商品・サービスを繰り返し販売する)

以下ではDRMを農家の立場から活用できるように、私が実際に行っている方法と考え方を分かりやすく説明していきます。

1. 農家がお客様を集客するには

まず集客ですが、現在ではウェブサイトやブログで顧客リストを集めることができます。重要視すべきことは、あなたが物を売ることを考えるのではなく、お客様が知りたいことは何かを考えることです。

サイトやブログにお客様が関心をもつ記事を書いていくのです。あなたの農園に関心がある人を集めるため、農業に関する記事を書いたり、栽培の内容などあなたの農園に関することすべてを記事にしたりしていくといいです。

そうしてなるべく、毎日情報発信するように心がけるのです。

こうして関心のある人たちがあなたのもとに集まってきます。サイトやブログがしっかり作り込んであると、「共感」してもらいやすくなります。

あなたの農業に対する想いや農園の栽培方法などを伝えることにより、共感が生まれて信頼関係が構築されていくのです。また、ネットを見て実際に自分のところまで買いに来てくれることもあります。直接農園の様子を伝えることができれば、農園の全体像を詳しく伝えることができます。

現代では多くの人は、スパーなどの小売店で野菜や果物を購入しています。そのため、農家から直接購入できるというだけで、大きな価値を感じてもらうことができます。

2. 農家の顧客教育

顧客教育というとおおげさな感じがしますが、要は自分のことを知ってもらってしっかりと伝えることです。多くの人は、農家とは離れた生活をしています。生活スタイルが全く違うのです。

農家がやらなければいけないことは、農業のことを伝えることです。食を生産する農家は、伝えるべきことがたくさんあるはずです。栽培方法のこだわりでもいいし、農業の苦労でもいいし、現場のありのままでもいいし、農業情報のすべてを伝えることができます。

多くの人は、「これだけ詳しくて、こだわりをもって栽培している作物をぜひ食べてみたい」と思うものです。

しかも、農業とは離れた生活を送っているため、農業の現場の話をするだけで、関心をもってもらえます。そのため農家にとって一番大切なことは、情報を伝えることです。応援されてリピートする確率も高くなるはずです。

3. 農家の販売方法(セールス)

最後に販売ですが、売ることを意識しなくても、自分のことや農業のことは、既に伝えてある状態にあります。情報が共有されていて信頼関係がある状態にあれば、売り込む必要がなくなります。

お客様との関係を維持するために普段からメールマガジンなどで忘れられないようにしたり、収穫の案内などを定期的に配信したりするといいです。

メールマガジンとは、多数の人にこちらからメールで情報を届けることが出来る仕組みのことで、文章を考えてクリック一つで何百人、何千人と情報を伝えることができます。

他にも、ハガキを出したり、収穫前の案内状を郵送したりするといいでしょう。例えば私は、収穫前に以下のようなDMを郵送しています。

その他にも、商品の値段がかかれたパンフレットやすぐにFAXで送れる注文用紙、その年の出来はどうだったのか、農園の様子がかかれたレターなどを同封しています。

お客様は、ウェブサイトやブログを通して、既に私のことを知っている状態にあります。一般的にセールスをしている農家のほうがまれです。ここまでしている農家はほとんどいません。

そのため、関係性を築いたうえで、案内状のDMを送ったり収穫案内のメルマガを出したりするだけで、たくさんの反応が返ってきます。

DMの反応率とは

ダイレクトメールを出す場合には、送り先が不特定多数の人と、一度でも購入したことのある人とでは、成約率で捉え方が異なります。

成約率とは、実際に何%の人が購入までするのかということです。

一般的には、以下のようになっています。

DM、チラシ(不特定多数の人を対象)→0.1~0.4%程度 1000人に1~4人程度が購入

DM、チラシ(既存のお客様を対象)→5.0~15.0% 1000人に50~150人程度が購入

このようにDMを送ってどれほどの購入に繋がるのかを知っておくことは大切です。なぜなら、反応が返ってきてもそれが失敗だったか成功したのか目安がわからないからです。

このことから、既存のお客様にDMを送って100人10人が購入(成約率10%)すれば大成功と言えるでしょう。

直接お客様に届けるようになると、喜びのメールや果物が傷んでいたなどのクレームが届くことがあります。青果物の場合は、配送途中で傷んでしまったり、どうしても後から不良品がでてくることがあります。

ただ、そのような場合であっても返品補償や品物を補償するなど誠実に対応すれば、ファンになってもらうことができて継続た関係を築くことも可能です。

まとめ

DRMというと難しく感じますが、実際にやっていることは、「人と関係性を築く」という昔から変わらない普遍的なものです。

興味のある人を集める→その人たちと関係性を作る→何度も購入してもらう」という極めて単純なものです。このような関係を構築するために現在では、ウェブサイトやブログ、メルマガや電話、FAX、DMなどたくさんのツールが存在します。

さらにネットを使えば、広告費をかけなくても第一段階の「集客」をすることができます。それだけでなく、個人の農家であっても今までより大きく売上をあげることが可能になるのです。

マーケティングは、大きな組織だけしかできないわけではありません。小さな個人の農家には、小さな個人の農家にしかできない方法があります。

自分にしかできないやり方を認識した上で、小さな農家にしかできない仕組みを構築していって下さい。