農家において、生産して良い物を作ることが大事なのはいうまでもありません。農業の醍醐味は、自分で工夫して生産して良い物ができたときの喜びにあります。
そのため、こだわりをもって栽培する生産者が多いです。作ることは大切ですが、同時に販売をすることも大切です。
それは、販売方法によって利益が異なってくるためです。これまで農家は、市場へ出荷するのが当たり前でした。そのため、販売することには、無頓着になっていた面があるのです。
しかし、市場へ出荷するだけが農業をする方法ではありません。市場以外の販売方法もあるのです。
ここでは、農家が丹精込めて作った農産物をどのように販売したらいいのか。また、市場以外にどのような販売先があるのか具体的に見ていきます。
もくじ
作ることも大事だが、売ることも大事である
農家が自分で作った農作物はどこに販売すればいいでしょうか。一般的には、農家の大多数は農協を通して市場に卸しています。
農協と一言でいってもそれぞれの地域ごとにあり、それぞれ全く違います。例えば同じトマトでも産地の場所とそうでない場所では価格が違ってくる場合があります。
例えば極端な話、同じ作物でも100円で売る農協と50円で売る農協というのもあるでしょう。この場合、全く同じ作物を栽培していても出荷先が異なるだけで売上は倍違ってきます。
そして地域により得意とするものとそうでないものとがあります。
生協に出荷と農協に出荷の違い
農協出荷の場合、価格面を気にしなければ、どれだけの量でもひきとってくれます。販売力のない農家にとっては、とても安心です。
その他にも、直接契約する販売というのもあります。例えば、JT向けのたばこ農家や、カルビーなどポテトチップス向けのじゃがいも農家などあります。
その他に、生協と契約する場合もあります。生協と契約する場合、農協での契約より厳しい品質の基準があります。例えば、農薬の使用基準が設定されていることがあります。
販路によっては、「作物を計画的に用意しなければならない」など、安定性を重視したところもあります。
生協と農協を通した市場出荷の違いは、作物における相場の安定性です。市場への出荷の場合は、相場の動向をもろに受けます。相場が高ければ高くなりますが、安いときはとても安いのです。
これに対し、生協は価格が安定しています。ただ、野菜は市場で価格がとても高いときがあるのですが、そのときも特に高くなることなく、一定で安定しています。
農産物の性質の違いが売り先の違いになる
農家は一般的に、市場への出荷が多いです。しかし、それ以外にも販売先はあります。ここでは、主な販売先とその考え方について見ていきます。
売り先 | ポイント |
生協 | 品質重視で、取扱量に柔軟性がある。 |
ネット、宅配スーパー | 市場対応が多いスーパーでも産直を取り始めている。まだまだ行っている地域が限られている。 |
百貨店 | 安売り競争する心配がない。品質重視。 |
高級スーパー | 他店にないオリジナルを求める。希少品など。 |
通販 | 付加価値のあるものを、消費者に伝えながら販売できる。 |
メーカー | 契約生産者(カゴメのトマト、カルビーのじゃがいもなど) |
基本的にこれらの販売方法は、価格競争に巻き込まれません。また、「市場の相場に左右されない」ということがあります。またこれらの販売方法では、作物によって「より売りやすいところ」や「得意分野」が異なります。
そのため、自分で作った作物がより強みをいかせる場所はどこなのか考える必要があります。
生協や宅配スーパー
例えば生協やであれば、品質重視で考えられています。また、カタログなどで商品価値を伝えやすく、単価の安定を見込めます。
そして、出荷先にもよりますが、まとまった量を取引することができます。しかし、契約後は指定の日に指定の量を確保するなど安定供給が求められます。
そのため、計画的に栽培し、出荷することが大切です。
百貨店・高級スーパー
基本的に百貨店や高級スーパーは、安売りする必要がありません。珍しい品種や伝統野菜、新品種など、地元のスーパーなどでは見かけない物が多くあります。
商品管理は徹底しているので、簡単には取引できません。例えば、高糖度フルーツトマトや高級フルーツなどが得意です。
取引量はさほど多くはないため、取引先のひとつとして考えることがいいでしょう。「私のメロンは○○百貨店で販売されている」となると、それだけで信用されることになります。
通販・ネット通販
通信販売には多くの種類があります。カタログ通販からテレビショッピング、ネット通販などです。これらは、商品の価値をきちんと伝えることができます。
果物生産者や特徴のある野菜などを作っていれば相性のいい販売方法になります。その中でも、インターネットによる通販はとても伸びています。
自分でホームページを作る方法もありますが、すでにネット通販をしている業者に卸すという販売方法もあります。
ただ、自分でホームページを作成して販売すると、顧客のリストを保有することができることです。卸すとなると顧客情報は分からないこともあります。
そのため自社サイトを作ることで、卸値よりも手取りは多くなります。さらに自社独自の顧客のリストを保有できます。繰り返し買ってもらうことができるので独自のビジネスを行うことができます。
また、時間がたつとともに安定していき売上が増えていきます。
このように、市場へ販売する以外にもたくさんの販売方法があります。必要なことは、自分で作っている物がどんな販売先と相性がいいのか考えることです。
これからの農業には生産だけでなく営業と販売も必要
農業は、生産することが第一であり栽培技術が必要です。しかし、ある程度の栽培技術を習得したら、それより先はさほど向上しにくくなります。
例えば、生産技術が90点の生産者がいたとします。農業者は職人肌が多いので、さらに完璧な物作りをしようと今日も改善と工夫を重ねています。
農業は、毎年天候など環境が異なり育ち方が異なります。そのため毎年1年生なのです。
生産技術が90点であるならば、それを95点に上げるのはかなり大変です。そして90点と95点では、それほど違いが分かりません。
それよりも営業や販売は知恵やアイディアでいくらでも向上することができます。大半の農家は営業と販売を農協と市場に頼り切っています。
そのため、営業・販売は0点ということが多いです。90点の生産技術を95点にするより、0点の営業・販売を60点にするほうがはるかに楽です。
農業には、それだけ儲けるチャンスがあるのです。
完璧を求めるより工夫できるところを変化させる
実際、農業を数年やっていると栽培技術はある程度覚えてきて、それ以上はたいして変化のないものになります。仕事の流れとコツを覚えれば、後はある程度同じことの繰り返しになってくるからです。
単調な作業も農業には多いものです。そして工夫することにも限度があります。
それよりも、多くの農家が関心を向けない営業・販売を考えるだけで大きく売上を変化させることができます。
多くの農家は、生産技術に熱心に取り組み職人技で素晴らしい農産物を作り上げました。
そこでははっきりいって、90点の技術も95点の技術もそれほど違いはありません。それより0点を60点にする方がはるかに楽で売上も増えるのです。
農家はこれまで、農協や市場に営業や販売を任せていて自分で考えることをしませんでした。今までは、経済成長の中の大量生産、大量消費時代であり、その方が効率が良かったのです。
しかし、これからは人口減少の時代に入ってきます。高齢者も増え、いい物を少し欲しいなど、ニーズが変化しています。
そして農家が利益を出すのは、販売方法を考えることも大切です。市場への出荷以外にも販売する方法はたくさんあります。
栽培している品目や戦略などは農家により異なります。栽培している作物を商品として、最大限に価値を提供できるのはどのような方法が適切か戦略を練ることが大切です。