農業の中でもバイオテクノロジーなどの分野は日々研究が進んでいます。そのような中でも「遺伝子組み換え作物」があります。日本では、遺伝子組み換え作物の栽培が禁止されています。

そのため、農業の現場では、実際遺伝子組み換え作物を栽培している農家はいません。しかし、私たちの日常の食生活の中では遺伝子組み換え作物を原料に使った商品で溢れかえっています

これらは、輸入されさまざまな工程で形を変え日常に浸透しているのです。それでは、遺伝子組み換え作物は一体どのようなものなのかについて詳しく解説していきます。

遺伝子組み換えの基礎知識

生物には、遺伝情報を伝える「DNA」というものがあります。そのなかの特定の働きをするものを「遺伝子」といい、それを別の生物の遺伝子に組み込むことが「遺伝子組み換え」です。

遺伝子組み換えは、植物でも動物でも行われています。作物で一番多いのは、「除草剤耐性」です。これは、除草剤をかけても他の草は枯れますが、その作物だけは枯れないようになっています。

除草の手間がはぶけて楽になるというものです。モンサント社のラウンドアップレディ大豆などが有名です。除草剤のラウンドアップに対して、枯れずに生育します。

遺伝子組み換え作物のデメリット

遺伝子組み換え作物には、主に以下のようなデメリットがあります。

1.自然界に存在しない植物であることの影響

2.安全性に疑問があるものがある

3.生態系、環境を破壊する可能性がある

4.種子が特定の企業に独占される恐れがある

遺伝子組み換え作物のメリット

遺伝子組み換え作物のメリットには以下のようなものがあります。

1.害虫に強い(害虫抵抗性の強い遺伝子を組み込んだ作物)

2.除草剤などの農薬に強い(除草剤耐性の強い遺伝子を組み込んだ作物)

3.雨や水が少なくても栽培できる(雨や水が少なくても成長する遺伝子を組み込んだ作物)

4.その結果、単位面積あたりの収穫量が増える

品種改良と遺伝子組み換えの違い

優れた品種を作るため植物や動物を交配させることは古くから行ってきました。例えば、お米は品種改良によって美味しいお米が食べられるようになりました。

美味しいお米を食べられるようにするために日々品種改良によって研究がされています。

それ以外にも「寒さに強い」「風などで倒れにくく栽培しやすい」「病気に強い」など稲作経営の視点からも作りやすいように日々研究されてきたのです。

同じように、現在私たちが食している「豚」は、元々は「いのしし」を長い年月をかけて改良してきたものです。

食肉目的で、より美味しい肉質になるように、より温和な性質になるよう何千年もかけて家畜にし、掛け合わせた結果、美味しい豚肉が食べられるようになっているのです。

野菜や果物も同じように、品種改良によって品質が上がり、豊富な種類ができた結果、食卓が変化してきました。品種改良が「同じ種の掛け合わせ」に対して遺伝子組み換えは、「種の壁を越えた掛け合わせ」が可能です。

例えば、ほうれん草の遺伝子を豚に組み込んだり、サソリの遺伝子をキャベツに組み込んだりすることができます。

米国産トウモロコシの8割は遺伝子組み換え品

現在では、遺伝子組み換え技術を使った農作物の存在感が高まっています。国際アグリバイオ事業団によると、2010年の遺伝子組み換え作物の作付面積は前年から増加し、栽培国も4カ国増え29ヵ国になっています。

遺伝子組み換え作物を導入するメリットは、単位面積あたりの収穫量が増える上に、病害中にも強くなるという点があります。

今や大豆の8割、綿花の約4割を遺伝子組み換え作物が占めています。米国産トウモロコシにおいても8割が遺伝子組み換え作物になっています。

遺伝子組み換え作物の90%以上は、アメリカのモンサント社です。この会社はもともとベトナム戦争で使われた「枯葉剤」を製造していた会社です。

種を独占する大企業

モンサント社は、アメリカや海外で遺伝子組み換えをした大豆やトウモロコシを育てることを勧めました。そして、「収量が増える」「除草剤に強いため、管理が楽になる」などといって拡大させてきました。

さらに、「これからあなたの農場は驚くほど収量が増えます」や「新しい革新的なバイオ技術によってこれから降りかかる挑戦に共に立ち向かいましょう」などと言ってきました。

そして、多くの農家は、この取り組みを素晴らしいことだと思い、挑戦してきました。

しかし実際には、収量が増えるどころか、「雑草の耐性ができて他の除草剤を使わなければならない」などのさまざまな問題が発生しました。農場の管理が楽になるのではなく、農場を維持できることすら困難になってきたのです。

これは、ひとつの大企業が種を独占するということです。モンサント社に従い農業を行った者は、遺伝子組み換えの作物以外を栽培できなくなってしまったのです。

「作物や種に特許をかけるのを認める」ということは、大変なことを意味します。種を買うのはモンサント社から買い続けなければならないからです。

こうした、「世界中を独占して支配する」という戦略が隠されているのが遺伝子組み換えのビジネスです。現場では、農地が崩壊したり、ガンが増えたりしている例があります。

こうした遺伝子組み換え農業は日本では、禁止されていますが、「輸入」という形では、多く入ってきています。

知らない間に遺伝子組み換え作物を食べている可能性がある

日本はトウモロコシや大豆などたくさん輸入しています。そのため、相当量の遺伝子組み換え作物が入っていると思われます。実際には、普段遺伝子組み換え作物を食しているという意識はあまりありません。

大豆を使った「豆腐」や「豆乳」を見ても(遺伝子組み換えでない)と表示されています。しかし、それにはからくりがあるのです。

遺伝子組み換え植物が作りだした「たんぱく質」が食品の中に入っていれば、検査でそれが検出されます。

ところが、それが油やしょうゆの場合、それが残らないので検査をしてもその材料が遺伝子組み換えのものかどうかわかりません。検査で分からなければ、表示義務はないということになっているのです。

実はこういう食品の方が多いのです。

また、遺伝子組み換え作物のとうもろこしなどのえさを食べた家畜の肉や卵、牛乳など畜産品は遺伝子組み換え作物の表示義務はありません

遺伝子組み換え作物が原料に使われていても表示義務はない物

遺伝子組み換え作物を原料に使っていても表示義務がないものは無数に存在します。結局のところ、製品になってしまえば原料がどんなものであるのかは分からないのです。以下の製品で遺伝子組み換えが使われていたとしても、表示義務はありません。

畜産品 肉、卵、牛乳、乳製品
サラダ油、植物油、マーガリン、ショートニング、マヨネーズ
しょうゆ
甘味料類 コーンシロップ、液糖、異性化糖、果糖、ぶどう糖、糖類、水飴、みりん類、調味料
その他 コーンフレーク、醸造酢、醸造用アルコール、デキストリン

遺伝子組み換え作物ばかり密集させると、耐性をもった害虫が生まれかねないので、一定の割合で異なった品種を植えなければならないことになっています。

そうした規制がなくなれば、全国的に遺伝子組み換え作物に置き換わる可能性が高いです。米国産トウモロコシへの依存度が高い日本(輸入トウモロコシの9割が米国産)も何らかの対策を講じないと、非組み換えトウモロコシの安定調達が難しくなります。

遺伝子組み換えについては法律の抜け穴があります。そして、「表示義務を遺伝子組み換えの作物でも通り抜けられるように規制を抜けやすく決める」などと消費者として疑問が残る問題になっています。

義務表示の対象となる遺伝子組み換え農産物と加工食品

遺伝子組み換え作物でも表示義務のある食品もあります。以下の作物を原料にして作られた食品は表示義務があります。

作物:大豆(枝豆、大豆もやし含む)、トウモロコシ、ナタネ、ばれいしょ、綿実、アルファルファ、テンサイ

加工食品 原材料
豆腐類、油揚げ類 大豆
凍豆腐、おから、ゆば
納豆
味噌
豆乳類
大豆煮豆
大豆缶詰、大豆瓶詰
きな粉
大豆いり豆
枝豆を原料とする 枝豆
大豆もやしを原料とする 大豆もやし
コーンスナック菓子 トウモロコシ
コーンスターチ
ポップコーン
冷凍トウモロコシ
トウモロコシ缶詰、トウモロコシ瓶詰
コーンフラワーをおもな原料とするもの
コーングリッツをおもな原料とするもの(コーンフレーク除く)
調理用のトウモロコシをおもな原料とするもの
ポテトスナック菓子 ばれいしょ
乾燥ばれいしょ
冷凍ばれいしょ
ばれいしょでん粉
調理用のばれいしょをおもな原料とするもの
アルファルファをおもな原料とするもの アルファルファ
調理用のてんさいをおもな原料とするもの テンサイ

日本の食卓にあふれる遺伝子組み換え食品

欧州連合(EU)では、日本より遺伝子組み換え作物による規制が厳しいです。食品や動物の餌となる飼料、添加物まで遺伝子組み換えの表示は1%未満となっています。そのため、遺伝子組み換え作物はほとんど出回っていません。

日本ですり抜けられている油や甘味料類が、遺伝子組み換え作物としてきちんと規制されているのです。

一方で日本では、「含有量多い3番目まで、かつ重量比5%以上の場合のみ表示」となっています。

規制の甘い日本には、たくさんの形を変えた遺伝子組み換え作物が入ってきています。主に輸入として入ってきていて形を変えられているので、私たちが遺伝子組み換え作物を食している実感はありません。

ジュースやお菓子、カップラーメンなどに使われている

カップラーメンやお菓子、調味料など日常の食品に遺伝子組み換えの作物が潜んでいるのです。カップラーメンやお菓子などは添加物が含まれています。

安全性に疑問が残る遺伝子組み換えをグリーンピースジャパンがEU基準で調査しました。その結果、使用リスクが高いワースト1は明治ホールディングスでした。ヒット商品の「明治ミルクチョコレート」「カール」などに使用されていました。

それ以外にも、清涼飲料水や缶コーヒーなどを甘くするために、糖分として「異性化糖」というもの使われています。これは、砂糖の代わりに使用されるものです。「異性化糖」とは、ぶどう糖の一部を果糖に転換したものです。原料は90%以上がアメリカ産のトウモロコシから出来たコーンスターチです。

加工したデン粉や、調味料、カラメル色素、酸化防止剤、ビタミンB2などが使用され、あらゆるものに遺伝子組み換えは入り込んでいるので知らないうちに食していることになるのです。

遺伝子組み換え作物からあなたの生活を守るためのポイント

日本の場合、遺伝子組み換えに対する規制そのものが緩いです。油から甘味料、しょうゆ、その他いろいろな食品で使われているため、日常生活に溢れています。

EUのようにきちんとした表示義務がなく、規制の間をうまくすり抜けています。そのような中でどうすれば遺伝子組み換えを選ばないようにすることができるでしょうか。

いくつかのポイントがあります。

1.遺伝子組み換え食品の表示義務がない醤油、大豆油、コーン油、コーンフレーク、マッシュポテトなどは、オーガニック食品を買う。大豆やコーンを原料とする油を使わない。

2.食品添加物を多く含む加工品やインスタント食品は、その中身が見えにくいためなるべく選ばないようにする。

3.遺伝子組み換え作物は輸入飼料によって家畜のエサとなるため、動物性の食品は、なるべく信頼できるところから購入する。

4.遺伝子組み換え作物を原料にして作られる「豆腐」「納豆」「みそ」「きな粉」「コーンスナック菓子」「ポップコーン」「醤油」などはできればオーガニックの製品を選ぶ。(オーガニック製品は遺伝子組み換え作物を使用していない。)

 

遺伝子組み換え農産物に関する表示に使われている表現例

遺伝子組み換え作物の表示については、その表現の仕方があります。どのような意味があるのか確認することが大切です。

表示に使われている表現 意味
「遺伝子組み換え」「遺伝子組み換えのものを分別」 遺伝子組み換え農産物を使っている(遺伝子組み換え農産物とそうでない農産物が混ざらないように管理されている)
「遺伝子組み換え不分別」 遺伝子組み換え農産物とそうでない農産物を分別せずに使っている
「遺伝子組み換えでない」「遺伝子組み換えでないものを分別」 遺伝子組み換え農産物と混ざらないように管理された農産物を使っている

遺伝子組み換え作物は、日本では栽培されていません。しかし、輸入という形で、加工品という形で知らない間に流通され、食されています。

また、遺伝子組み換え作物は種が独占され、ビジネスとしての面があります。農場の現場では、「栽培が楽になる」「収量が増える」といわれてきました。しかし必ずしもそうとは限らず、栽培が困難になる場面もありました。

遺伝子組み換え作物は、安全性がすべて確認されているとはいえず、壮大な人体実験の途中です。そのため、私たちが食品の中身を知り、適切に選択することが必要です。