「田舎暮らしをして悠々自適に農業でもして暮らしたい」と考える定年退職者や若者が増えています。田舎で農業をすることには、スローライフや自給自足、ロハス思考など自然の中でのびのびと暮らせるイメージがあるからでしょうか。

確かに都会のように時間に追われて過ごすのではなく、ゆったりとした時間が流れていて、のんびりするという生き方ができるでしょう。

しかし、田舎に移住する前に知っておくべきことは、「皆が皆、田舎暮らしで成功しているとは限らない」という事実です。実は表に出ていないだけで、田舎暮らしに失敗している例は多いのです。

ここでは、これから田舎暮らしをして、農業をする際に失敗しないために、どうすればいいのかについて考えていきましょう。

憧れの田舎暮らしは本当か

テレビや雑誌などでは「憧れの田舎暮らし」と題して、ストレスがなく悠々自適な暮らしが取り上げられています。

「田舎で自由なスローライフを満喫」「田舎で大自然の中、農業を」「ストレスフリーで老後を楽しく」などのキャッチフレーズで溢れています。

確かにお金に余裕があって、住む場所によっては、悠々自適な暮らしができるでしょう。ただ、これから田舎暮らしをしながら仕事をして生活していく人にとっては、すべてが悠々自適になるとは限りません。

なぜなら田舎暮らしを推進し、人を呼ぶために「田舎に来ればこのようないい暮らしが出来るよ」という、いい面だけが前面に押し出されているからです。これらの田舎のいい点だけを真に受けている場合ではありません。

マイナス面はほとんど表に出てこないからです。それでは、どのようなマイナス面があるのか見ていきましょう。

なぜ田舎は過疎化が進むのか

自治体が必死になって田舎暮らしをPRしているのは、以下のような理由があります。

・働き場所が少ない

・若者が減り、高齢者ばかりになっている

・労働人口が減るため、税収が減る

・医療機関が足りない

「そしてさらに人口が減る」という負のループがあります。

一般的に田舎では、若者が都市部へ流出して、高齢化が進み人口減少が進んで衰退しています。そのため、「なぜ田舎は衰退しているのか」を考えなければいけません。

そうすることによって田舎暮らしの実情が見えてきます。

田舎の生活は安いは本当なのか

「田舎暮らしがしたい」と考えた場合、どこに住むのがいいのかと考えると思います。田舎に呼び込むための格安物件や、ほとんどただで土地が利用できるなどの環境がそろっていることがあります。

田舎暮らしを希望する人には、とても恵まれた条件だと感じるかもしれません。ただ、そのような好条件ですが、なぜそのような安い条件で田舎暮らしができるのかを考えなければいけません。

たとえ住まいが安かったとしても、それ以外のところの物価ではそれほど変わらないこともあります。ただ、都市生活と比べると工夫次第で出費を減らすことができるのが田舎です。

都市部では基本的に、あらゆることでお金を使わせるように仕組まれています。一方で田舎の場合、工夫次第で出費を減らすことが可能になります。たとえば、田舎での暮らしでは衣食住を工夫することができるでしょう。

食については、米や野菜を自分で育てることができれば、食費をうかせることができます。住まいにしても広い敷地に住めたり、家賃にしても都市部よりも安かったりします。

また、野菜中心の食生活をすれば、健康になり病気にかかりにくいこともあります。実際、農家の年よりは長生きの傾向にありますし、あまり風邪をひかない傾向にあります。

田舎で暮らすのは車が必要

基本的に田舎では、1人1台車が必要になります。必ずしもそうではありませんが、ほとんどの人が自分の車を所有しています。車がないと生活できないといっても過言ではないからです。

そのため、どこに行くのにも車が必要になります。田舎では、歩いている人はほとんどいません。歩いている人は健康のためウォーキングをしている人くらいです。

そのため、歩いているのが珍しいため、車に乗っている人からじろじろ見られます。ときには不審者扱いされるかもしれません。それほど車の依存度が高いのです。

車を所有するためには、購入費だけでなく、ガソリン代や車検代、税金などいろいろな維持費がかかります。

田舎暮らしでの住まい探しはどのような基準で選ぶべきか

脱サラして田舎で農業を志す者の中には、会社の人間関係に疲れ果てている場合があります。「田舎で農業をして生活していくのは、のんびりしていて良さそうだな」と思うかもしれません。

ただ実際、外からみるのと、田舎の中で暮らすのとでは、わけが違います。あなたは会社という村社会でストレスをため、疲弊したのかもしれません。

しかし、田舎こそが村社会の原点のようなものです。田舎生活を楽しむためには、かなりのコミュニケーション能力が必要になるのです。頻繁に会合や飲み会があるかもしれません。共同作業などもあるでしょう。昔からのしきたりや年長者が多いのも田舎の特徴です。

地域にもよりますが、住民がその土地に固定しているところだと、よそ者には、排他的な特徴があります。実は、田舎に移住して失敗してUターンする理由に「田舎の濃い人間関係に疲れた」場合が多いのです。

同じ田舎でも場所により大きく違う(関東編)

同じ田舎でも排他的なところとそうでないところがあります。以下では、その特徴についていて関東に絞って見ていきます。

・都心から離れれば離れるほど排他的になる(神奈川など南方面ではなく、北関東方面)

・鉄道が近くに通っているかどうか(都心への通勤利用型と完全なローカル型では全く違う)

・車社会の依存度はどれほどか(ほとんど車社会と鉄道と両立できる地域では異なる)

・人が完全に固定化しているか、人の流れがある地域なのか

・そこの場所は知名度があるかどうか(聞いたことのない地名ほど閉鎖的な傾向にあります)

例えば北関東の茨城や栃木でいえば、ほとんどの場所は車社会で、鉄道網はかなり弱くなります。人が流動的ではないため、一般的には閉鎖的な環境がそろっています。ただ、そのような所でも場所によって異なります。

比較的閉鎖的でない傾向にある場所は、次のようになります。

茨城:つくば市、守谷市、など

つくば市は、国の研究機関があり大学があります。筑波山など自然豊かな環境があり、田舎でありながら教育も充実しています。これらの地域は、電車を使えば東京まで1時間ほどで行くことができる都心通勤圏内です。

栃木:宇都宮市、那須塩原市など

宇都宮市は人口50万人の地方都市ですが、駅から離れるとのどかな風景が広がっています。JRや新幹線も通っており、都心への通勤をしている方もいます。那須塩原市は、県の北に位置し、高原地帯です。レジャー施設やアウトレットなどがある観光地です。また、別荘地があり、移住者もいます。

このように田舎で住む場所探しは、それぞれに基準があると思います。ただ、都会から田舎に移住する人の中には、「地域の濃厚な人間関係に疲れた」等があります。そのため、よく調べることが重要になります。

田舎の定義によるさまざまな形

農業をする上で一番考えなくてはならないことは、農業をする場所です。よく、「田舎暮らしで農業でもしてのんびり暮らす」という考え方を聞きますが、はたして実際のところはどうでしょうか。

田舎といっても、どれほどの田舎なのかによっても違ってきます。例えば「高齢者率が半分以上の限界集落で山間地域、コンビニもスーパーも全くない。仕事もほとんどない」という田舎から、「企業の工場など誘致してあり仕事はいろいろある。平野部で老若男女住んでおり、コンビニもスーパーも近くにある」という田舎もあります。

どちらも同じ「田舎」ですが、条件が全く異なります。

山間地域の限界集落型の田舎

1つめの限界集落のような山間部では、農業をする条件が悪く、コンビニやスーパー、娯楽施設など全くないのかもしれません

例えば、「棚田の広がる風景は、芸術的で周りの山々に囲まれて美しい」と思うかもしれません。しかしそれを作り上げることは大変な重労働だったはずです。山の斜面を開墾したのですから、想像しただけで分かります。

さらに、そのような棚田は、農業機械が入れない(入りにくい)ため、手作業になります。かなりの重労働です。

平野型の農業・工業混在型の田舎

2つ目の平野型の田舎ですが、ここでは大雑把に東京から半径50~100㎞くらいの農村を指してみます。ざっとですが、東京から半径50㎞圏内は東京への通勤圏内になります。鉄道網が発達していているため農業をする環境もありますが、混在しているためここでは田舎の定義から外します。

そして東京から半径50~100㎞圏内になると都心への通勤圏から離れていき鉄道の数もいっきに少なくなります。車社会に変わり、畑や田んぼが増えてきます。鉄道網が弱くなるため、地方色が強くなります。また、首都圏への食料供給場所にもなるため、農業が盛んな地域になります。

平野部が多いため、農業機械をフル活用して、大規模な農業が可能になります。

このように田舎といっても、場所により異なってきます。有機農業で就農する場合は、場所により環境が変わってきます。

例えば、千葉県であれば成田市は、成田空港反対運動などが以前あったように有機農業が昔から盛んです。茨城県では石岡市(旧八郷町)、埼玉県では、小川町などが有機農業が盛んな町です。

まとめ

ひとことで田舎暮らしといっても場所によりさまざまです。山の中の生活と平野での生活でも異なります。メディアでは、なぜか田舎暮らしに良いイメージしか取り上げていません。

ただ実際は、「いい面だけでない田舎暮らしの現実」が数多くあります。

田舎で暮らすことは、空気がおいしくて川や山、海など自然の中で人間本来の生活をすることが出来ます。しかし住む場所によっては、保守的、閉鎖的、排他的なところもあります。

そのため、同じ田舎であっても環境によっても違うため、よく調べてから田舎暮らしをすることが大切です。