マーケティングの世界では、消費者の行動を細かく分類することができます。具体的には、「どのような考え方をしている人がどのような行動をするか」を知ることができます。
そして、消費者にはさまざまなタイプがいて、物が浸透していくのには流れがあります。
それでは、どのようなタイプがあり、どう変化していくのか、具体的に見ていきます。
もくじ
1俵(玄米60kg)22万円、日本一高価なコシヒカリ
米一俵(玄米60kg)の値段が22万円。東京都渋谷の東急百貨店のコメ専門店「米よし」で売られている米です。このお米は、新潟県十日町市の生産者・戸邊秀治氏が栽培したもので、不耕起移植栽培をしています。
農業機械、農薬、肥料は一切使わず、田植えも稲刈りも人力で行い、天日で干しています。
10kgあたりに直すと3万6667円です。メディアで「日本一高価なコシヒカリ」と報道されました。
こうしたお米は、どういった消費者が購入するのでしょうか。
流行に敏感な層や、富裕層を狙って高価格、高品質の商品を投入する戦略は、自動車や時計、アパレル、家電製品、料理、魚介類、肉類などでは一般的になっています。
農作物でもさくらんぼ、メロン、マンゴーなどで高級フルーツが存在します。
これらのターゲットを分析するには、消費者の価値観とライフスタイルに着目した細分化法であるVALSを使って考える方法があります。あなたの周りの人を考えてもそれぞれにあてはまるでしょう。
価値観やライフスタイルでの分類は以下のようになります。
7つに分ける消費者のタイプ
革新創造派(2.9%)
新しい物に積極的な好感度消費リーダー。
広範囲な関心をもち、平衡感覚にすぐれる。
経済力、バイタリティも高く、トレンドにも目を配る。
自己顕示派(4.2%)←追う層(8.0%)
レジャー、ファッションに流行に敏感で自己表現にこだわる。
今をエンジョイする。
社会達成派(3.5%)←追う層(12.2%)
キャリア、社会志向の強い良識層。趣味豊富。
社会的、文化的関心が高く、客観的ゴールを設定して努力する。
伝統尊重派(3.3%)←追う層(7.7%)
日本の伝統文化を守り、継承する層。義理、分別を重んじる。
同調派(22.2%)
社会潮流にあとから参加する層。
自分から積極的に新しいものを求めないが、周囲の意見は尊重。
雷同派(23.7%)
社会の流れに鈍感な保守層。変化を好まない。生活の中心は家族。
つつましい生活派(12.2%)
社会の流れに低関心な層。静かな生活を志向し、長時間テレビを見て過ごす。
5つに分類されるイノベーター理論
そして、これらのタイプはマーケティングで5つのタイプに分けることができます。
「革新創造派」はイノベーター、「自己顕示」「社会達成」「伝統尊重」はアーリーアダプターと分類することができます。そしてアーリーアダプターを追う層は、アーリーマジョリティーと呼ばれています。
「同調」「雷同」はレイトマジョリティ、「つつましい生活派」はラガードに分けることができます。
イノベーター
イノベーターの層は、商品の購入動機に「商品の新しい技術」や「先進性や革新性」などを重要視して行動します。そして、市場全体の2.5%ほどしかいません。
例えば、新型のiPhoneが登場したとき、いち早く取り入れるのがこの人たちです。販売前日から当日に並び購入するのがこの層です。
農作物のうち、ブドウにはたくさんの品種があります。昔からある品種としては、「デラウェア」や「巨峰」「ピオーネ」などが有名です。
現在では、欧州系のぶどうがありその種類もたくさんあります。皮ごと食べられるぶどうや変わった形のぶどうがあります。「マニュキュアヒィンガー」はブドウの品種の名前にあるように「指」のような形をしたブドウです。
他にも、石川県産の「ルビーロマン」という品種のブドウがあります。「ルビーロマン」はルビーのように紅色で巨峰の倍ほどの大きさになり、糖度20度になるといわれています。
そしてこの名前を名乗るためには、厳しい基準をクリアしなくてはなりません。そのため、限られた専門店にしか並ばない希少性のあるブドウです。
2011年度には、最高値の一房55万円という値がつきました。このような革新的なものに飛びつくのがイノベーターです。
このようにイノベーターは、「商品の目新しさ」や「商品の革新性」を重視しています。
アーリーアダプター
イノベーターほど積極的ではありませんが、トレンドには比較的敏感です。市場全体の13.5%ほどを構成しています。
そして、積極的に情報収集をしていて購買意欲も高いです。
商品は必ずしも全員に選ばれるわけではないので、市場で浸透するかどうかは、このアーリーアダプターの反応や動向によるところが大きいです。
例えば、新型のiPhoneが販売されたとき、並ぶまでの行動はしませんが、なるべく早く取り入れようとするのがこの人たちです。
アーリーマジョリティー
市場全体の34%ほどを占めています。アーリーアダプターよりは慎重ですが、比較的早い段階で取り入れる傾向があります。
例えば、ガラケーを使っていても、早い段階で新型のスマホやiPhoneに切り替えます。
レイトマジョリティ
こちらもアーリーマジョリティーと同じ慎重派ですが、懐疑的なところが異なります。周囲の過半数ほど浸透してきてから判断します。
市場全体の34%ほどです。
この人たちの場合、次のような会話をする傾向にあります。
夫「最近スマホをもっている人が増えてきたな。電車の中でもみんなスマホを見ているよ」
妻「そうねぇお隣さんも最近スマホを買ったみたいよ。インターネットができてすごく便利みたいよ」 夫「そうか、でもガラケーを使っている人もまだまだ多いからな」 妻「でもSNSやゲームができるんだって。ラインを使えば無料で通話ができるのよ」 夫「そうか、この携帯も古くなってきたことだし今度の日曜日にでも見に行ってみるか」 |
このように大多数に普及し始めてから行動するようになります。
ラガード
市場全体の16%を占めているといわれています。最も保守的で、トレンドや世の中の動向には関心が薄いです。
日常にしっかりと浸透し、伝統化するまでは、手をつけません。
だいぶスマートフォンが普及していてもガラケーを使い続けます。むしろ「なんだ、最近はみんなスマホを使っているのか。こうなったら最後までガラケーを使ってやる」ということを考える人もいます。
商品やサービスが広がっていくのには法則があります。イノベーターから順にラガードに向けての流れになります。そしていきなりラガードから浸透することはあり得ません。
これらは購買意欲から、考え方、ライフスタイルまでさまざまな層に分かれています。そして、いち早く新しい動向を取り入れる層から慎重に動向をみる層、浸透しても行動しない層まで分かれています。
そして、ラガードに商品を売り込むのは無謀なのでやめてください。つまり、相手にしてはいけないのです。一度に全体を見込み客にする必要はないのです。
このことから、商品を売り出す際には、イノベーター層から確実に落とし込んでいく必要があります。
それらを把握した上でどこに向けてターゲットを絞ればいいのか、具体的に行動することが大切です。