「土作りとは何でしょうか?」「植物にとってどのような土がいいのでしょうか?」誰もが農業にとって土が基本なのが分かっていても、答えは人それぞれです。

一般的には「通気性と保水性がありフカフカして柔らかい」「多様な微生物が豊富」「腐植があり保肥力が大きい」「微量要素が十分ある」「地力窒素が多い」「中性に近い酸性の土」などといわれています。

これらのような良い環境を作るため土壌診断などをし、土壌環境を調べることで有機物を与えたり、化学肥料を与えたりしています。

しかし、「土作り」のためにいいと思ってやっている「堆肥」の投入が多すぎることにより窒素過多になったり、リン酸、カリなどが過剰に土壌に蓄積されていたりすることがあります。

このような状態であると、「病害虫に侵されやすい」などの弊害がでてきます。

現代社会の食生活が豊になり、肥満や糖尿病が増えているのと同じように、土のなかも過剰な栄養によってメタボになっているのです。

このページでは、化学肥料や堆肥など土壌への過剰施肥の問題について解説していきます。

土づくりの神話に騙されるな

現代の農業では、植物の必要な栄養として「窒素」「リン酸」「カリ」の3代栄養素が必要だといわれています。農業者もまたこの肥料を意識して元肥や追肥をしています。

元肥えとは通常生育の始まりに与える肥料のことで、ゆっくりと効果が表れる有機質の肥料などを与えます。また堆肥を与える場合もあります。

堆肥とは素材の有機物が分解・発酵したもので、家畜糞尿から作られる「鶏糞」「豚糞」「牛糞」などがあります。

これに対し追肥では、生育の途中に与える肥料で、一般的には速効性のある化成肥料などを与える場合が多いです。

このように作物を育てる上で一般的に「窒素」「リン酸」「カリ」などの肥料分を与えて作物が吸収し、農作物を育てるということが認識されています。

単肥で十分?

通常肥料袋には「14 14 14」などのように書かれています。これは、「窒素、リン酸、カリ」の順にこれだけの割合で入っているということです。

多くの畑で「リン酸」や「カリ」が過剰に入っています。私の畑でも「リン酸」や「カリ」が基準の倍以上の数字でした。

このようなとき私は、「リン酸」や「カリ」は畑に投入しなくてもいいのではないか? と考えました。「窒素」だけを投入したい場合でも、余計に「リン酸」や「カリ」も投入してしまうからです。

このように窒素だけを効かせたい場合、単肥である「尿素」や「硫安」があります。

これらは、「リン酸」や「カリ」が含まれていないので「窒素」だけを与えることができます。

「収量が上がらない」「病気が出る」その原因は?

農業の指導に従って元肥えを与え、追肥をし、堆肥を与えて土作りをしている農家が大半ではないでしょうか。

このように農業指導に従ってしっかりと土作りをした農家に限って「収量が上がらない」「病害虫が多い」「生育が悪い」などの問題が起こっています。

土壌肥料の指導に従っているにも関わらず、こうした問題が解決されないのはなぜなのでしょうか。

実は土のなかの養分のバランスが悪かったり肥料成分が過剰だったりするために、このような問題が出ているのです。

農業に必要な成分は「窒素」「リン酸」「カリ」だけではありません。これらの成分意外にも農産物を育てるのに重要な「カルシウム」「マグネシウム」などがあります。

それだけでなく、微量要素として「モリブデン」「銅」「亜鉛」「マンガン」「鉄」「ホウ素」「塩素」があります。

現代の畑の土はメタボ状態になっている?

今のように化学肥料や堆肥となる「家畜糞尿」がたくさんある時代と違って、昔は肥料となる物が貴重で「人糞」を肥料にしていた時代がありました。

このころは、人間が食べる物も階級により違っていたので、人によって人糞の価格に差があったようです。

化学肥料が発達するにつれて、たくさんの肥料を与えられるようになり、収穫量が増えていった時代があります。

現代では、土壌検査を行い土壌診断をして、どのくらいの肥料を与えるか決めていることが多いです。

年間のチッソ量はどれくらいだとか計算して施肥設計をしています。さらに「10aあたり2トンや3トンの堆肥をいれて土作りをする」などと指導されます。

しかし土壌改良が目的の堆肥であったとしても、堆肥中には「窒素」「リン酸」「カリ」が大量に含まれている場合もあり、その他の成分も含まれています。

つまり施肥設計をして肥料を与えたとしても、数字に加えられない堆肥の分のかなりの肥料成分が加えられているのです。

家畜糞堆肥の特性と成分

堆肥のなかでは、「鶏糞」「豚糞」「牛糞」などが使われています。これらは、どのような違いがあるのでしょうか。以下ではその違いについて説明します。

鶏糞

鶏は牛や豚よりも腸が短く、エサの栄養吸収が低いため、排せつされた鶏糞には「窒素」「リン酸」「カリ」が多く含まれています。特にリン酸が多いです。

肉用の鶏と、卵をとるための鶏でも餌などが違ってくるため、成分が異なります。採卵養鶏ではエサにカキ殻を与えるため石灰も多く含まれています。

鶏糞は効きも早く肥料効果も高いので、土壌改良より化成肥料に近い使い方がいいと思います。鶏糞の入れすぎで根痛みなどが発生することもあるからです。

牛糞

牛は草などの粗飼料を食べるため、鶏糞や豚糞より肥料成分が低いです。そのため、土壌改良資材としての使われ方が多いです。

成分では窒素やリン酸に比べてカリが多い傾向にあります。

豚糞

肥料成分的には鶏糞と豚糞の中間くらいのイメージです。窒素、リン酸に比べるとカリがやや少ないです。

このように、一言で堆肥といっても違いがあり、その状態によっても違いがあります。

多くの農家では、施肥設計をして肥料を与えていたとしても、どのような堆肥を使用しているのか農家によってさまざまです。

なかには、やらない方がいい場合もあります。堆肥の質が悪かったり、肥料成分がすでに過剰であったりマイナスにしかならない場合もあるからです。せっかく苦労して堆肥を散布しても「骨折り損のくたびれもうけ」になってしまう農家は実は多いです。

堆肥の養分含量と有効成分量の目安

原料名 牛糞 豚糞 鶏糞
含水率% 50 40 20
炭素率 15 10 8
成分量(現物%) チッソ 1.0 2.2 2.8
リン酸 1.4 4.2 5.1
カリ 1.4 1.8 3.1
石灰 2.1 3.9 12.7
苦土 0.6 1.5 1.8
有効化率(%) チッソ 20 50 60
リン酸 60 70 70
カリ 90 90 90
有効成分量(㎏/現物1t) チッソ 2.0 11.1 16.8
リン酸 8.4 29.4 35.7
カリ 12.6 16.2 27.9
石灰 21.0 39.0 127.0
苦土 6.0 15.0  18.0

参考文献「堆肥のつくり方、使い方」(藤原俊六郎著)より

ひとことで堆肥といっても品質によってさまざまで、あくまで目安にしかなりません。しかし、上の図にあるようにかなりの成分量があることがわかります。

例えば、鶏糞を1t畑にまくとなると、チッソで16.8㎏もあることになります。通常の土壌検査で施肥設計をしたうえで、このような堆肥を10aあたり2トン、3トンと与えた場合、かなりの成分が施用されていることになります。

土のなかは実際にどうなっているのか分かりにくいし、実感しにくいものです。しかし肥料がたくさん施肥されることによって過剰害がおきています。以下ではどのような状態になっているのか具体的にみていきます。

肥料の過剰害はありふれている

土のなかは見えないし、肥料の姿も見えません。怖いのは肥料が過剰に入っていても全く実感がないことです。自分で肥料を与えていても「それが多すぎるのかどうかもよく分からない」このような人が多いのではないでしょうか。

「過剰だと理解していないので肥料を与える」「作物が病害虫に侵されやすくなり農薬を大量にまく」「収量が少ないのでさらに肥料をまく」の悪循環になっている例がかなり多いです。

農家にとって肥料を与えないことは不安で仕方がなく、体を動かさずにはいられないのです。

肥料が少ない方が収穫量が多い?

実際私は果樹栽培をしていますが、鶏糞などの堆肥をたくさんいれ、毎年肥料を与えてしっかり管理をしている圃場ほど収量が少ない経験をしています。

始めはなぜ収量が少ないのか分かりませんでした。剪定のとき花芽は多いと思っていたはずなのに何故か実がしっかりとまらず、葉っぱや枝ばかりが伸びてしまうのです。

それだけでなく変形が多く、病気になりやすい状態でした。その結果、収量が少ないという状態でした。これは鶏糞を大量に投入したことによるアンモニアの過剰害かなと後になって思ったものです。

これに対して、園主が高齢で管理できなくなって、数年肥料を与えていなかった果樹園を借りたことがあります。

剪定をしても花芽の数も少なめで、枝数も多くなく、収量も少ないだろうと予想していました。しかし結果は少な目の花芽はどれもびっちりと実が成り、しかもほとんど変形がなく実の肥大もいいのです。

収量は多くないだろうと考えていたのに、結果として病気も少なく肥料をたくさん与えていた畑よりもたくさんの収穫量が採れたのです。

私はこの結果から肥料のバランスがいいのか、又は肥料が過剰でないため土壌環境がいいのだろうと考えました。たくさんの肥料を与えた畑は肥料が過剰なのが原因とバランスが悪いのだろうと考えました。

実際には何が原因か分かりませんが、実体験として肥料を与えていない畑のほうがいいものが採れたのです。土壌診断も検査も数字で出てきますが、何より現場での結果が一番大事だと実感しました。

アンモニアの過剰害は鶏糞だけでなく豚糞や有機肥料化成肥料どのようなものでも入れすぎによる害なのです。また、土壌バランスがくるっているときでも起こります。

アンモニアが過剰になるとマグネシウムが吸収できなくなります。マグネシウムはうまみ成分なので味もまずくなります。このようなときどうすればいいでしょうか。「水溶性マグネシウム」というものがあります。これを使うことによってある程度は改善できるでしょう。

リン酸、カリウム過剰害

リン酸の過剰は主に化学肥料の入れすぎでおこります。リンはアルミニウムと結びつくため病気が多発することに繋がります。

カリウムが過剰になると変形が多くなります。これはマグネシウムの不足によるものです。堆肥を2トン以上いれた場合に出る可能性があります。

カリウム過剰害はマグネシウムが吸収できないことが問題なので、水溶性のマグネシウムを使用することが対策となります。

無肥料栽培、自然農法は可能なのか

このように現代の日本の畑では、肥料成分が過剰な畑がたくさんあります。また、リン酸やカリが過剰という傾向があります。

これらの肥料を与える栽培に対して、全く肥料を使わず栽培している農家もいます。自然農法や無肥料栽培といわれる農家です。肥料を与え作物が吸収して収穫することが常識となっている農業のなかで、肥料を全く与えず栽培することが可能なのでしょうか。

自然農法とひとことでいってもその流派はいろいろあります。岡田茂吉、福岡正信、川口由一など以前からこのような考え方はありました。

最近では青森県で無農薬でりんごを栽培する木村秋則が有名です。

他にも農業では一般的にチッソが必要とされていますが、微生物を生かすためチッソより炭素が必要だとされる考え方の炭素循環農法があります。

土のなかの微生物の90%以上は未解明

これらの自然栽培では、微生物などなどの土壌がもっているチッソ以外の無機態チッソは過剰と考えられています。

このように考え方により肥料を与えなくても、通常と同じかそれ以上の収穫を得ている農法は実在します。これらはやり方も信念もいろいろあり、ひとことではいえません。

ただ、共通しているところは「むやみな施肥が作物の生育をみだす」ということがあります。人為的な施肥行為で「作物を大きくしてやろう」と考えると病気や害虫がつき農薬が必要になります。

無肥料で作物を育てることは簡単なことではありません。

土つくりといっても「土壌がどのような状態なのか」「微生物がどのような生態をしているのか」分かっていないことも多いです。

それだけ土のなかは複雑なバランスで成りたっているのです。

土の中の塩基バランスとは

農業をするうえでは、作物に肥料を与え育てるというのが常識になっています。作物の3大栄養は、「窒素」「リン酸」「カリ」です。

しかし、それ以外にも必要な栄養がたくさんあります。その中でも「石灰」「苦土」「カリ」の3つの成分が重要とされています。

これらの成分の間には結抗関係があり、その比率が崩れると、土の中にはそれぞれの成分が十分に含まれていたとしても作物に吸収されにくいといわれています。

般的には「石灰、苦土、カリ」の割合は「5:2:1」がよいとされています。これらの塩基バランスが整うと、作物に吸収されやすくなります。

それだけでなく、微生物も活発に動き始めるようになります。

例えば土壌に過剰に肥料成分があったとしても、相対的に不足している「苦土」を施用し、塩基バランスを意識することで作物の活力が高まり、土にたまった石灰やリン酸が動き出すこともあります。

●苦土と各種養分との関係

「窒素」や「リン酸」「カリ」があれば作物はいくらでも育つと考えがちですが、実際にはそれ以外のこれらの成分も重要になります。

私も「窒素」「リン酸」「カリ」は肥料として重要視していたものの、塩基である苦土の施肥やこれらの塩基バランスを意識したことはありませんでした。

しかし、苦土を積極的に与えることにより、光合成能力が高まり炭水化物の生産量が増え、根の伸長が促され根酸の分泌量が増えます。

土壌中で結びついていたリン酸と石灰が切り離され、それらが吸われることになるのです。

まとめ

農業では土が基本になります。また、土壌によりさまざまでひとことで土作りはこうだと言えることができないです。

それだけ複雑で、今までどのような管理をしてきたかでも違ってくるでしょう。

ただ、現代の農業では堆肥や化学肥料を過剰に入れている傾向にあるようです。成分によっては土壌から流れにくく、蓄積している場合もあるからです。

肥料が多すぎると収量が上げにくかったり、病害虫に侵されやすかったりいいことがありません。

そのようなとき、土作りの基準になるのが土壌診断などの肥料成分と養分バランスです。これらを参考にし、施肥量が過剰にならないように充分注意してください。

土壌肥料を深く知ることが、結果として病害虫に侵されにくく、品質アップと多収につながるのです。

1年以内に年収1000万円超えの農家になるには

Twitterで農業ビジネス情報を確認