農家がネットを活用して情報発信することには、たくさんのメリットがあります。生産者から消費者に、中間流通を通さず販売ができる仕組みを構築できるのです。他にも自分のウェブサイトやブログを持つことにより、不特定多数の人に見てもらう可能性があるためマスコミに取り上げられることがあります。

ウェブサイトは営業にも活用できるため、新たな取引きが始まることもあります。それだけでなく、自分の能力を最大限に発揮してオリジナルな展開を開くことも可能です。

このように農家がウェブサイトを持てば、お客様に販売することだけでなく、さまざまな副次的効果があります。ここでは、ウェブサイトを持てばどのような可能性があるのかについて具体的に見ていきます。

農家がウェブサイトやブログを持つことのメリット

農家が自分のウェブサイトやブログを持ち、情報発信することには、さまざまな効果があります。農家がウェブサイトを持つと、市場や農協を通さずに直接お客様へ商品をお届けすることができます。

それは、インターネットが普及したことによって、生産者である農家と消費者であるお客様が直接つながることが出来るようになったからです。

以前であれば、個人の農家が農作業や収穫作業をしながらお客様に直接販売することは誰でも出来るものではありませんでした。個人の農家が集客して販売までつなげることは、「営業力や人脈、時間、行動力」が必要でした。

このように、農家自らが市場を通さずにお客様に直接販売することには、課題がたくさんありました。しかしインターネットを活用できるようになった現代では、個人の農家でもサイトを作成して自動化し、販売までつなげることが可能になりました。

さらに、農家がネットを活用すればお客様に直販できるだけでなく、販売すること以外にも3つの副次的効果が期待できるようになりました。それでは、農家がウェブサイトやブログを持ち、情報発信すれば直接お客様に販売すること以外にどのような効果があるのかについて説明していきます。

メディアに取り上げられる

自分でウェブサイトを立ち上げ情報発信する農家は増えてきましたが、まだまだ多くはありません。そのため、農家がウェブサイトを作成すれば、いろいろな人の目に触れる可能性があります。

そのなかでも、新聞やテレビなどマスコミ関係に取り上げられる可能性があります。サイトを持つことによってこうしたメディアから意外なところで取材依頼がくることがあるのです。

例えば私は果樹園を営む農家ですが、自分の農園で栽培している果物を販売するためにウェブサイトを作りました。そのサイトのなかには、農園の概要や栽培方法、品種のことや農園の歴史、農園で働いている人や家族の紹介など写真を交えて載せています。

ある日、私のサイトを見たというテレビ局から1本の電話がかかってきました。当時、ここのテレビ局では田舎に泊まるという内容の番組を放送していました。このような田舎を舞台にした企画で、嫁と姑が同じ仕事をする状況をドキュメンタリーのように取材したいとのことでした。

ただ、正確には一緒に仕事をしているわけではないし、全国放送するほどのことでもないと思ったので、このときは丁寧に断りました。

このように、いきなり放送局から電話がかかってくることがあります。他にも農園の内容でテレビに出たことがありますが、テレビを見る人は多いため、さまざまな反響があり、噂が広がります。良くも悪くも目立ってしまうのです。

田舎ではメディアにでることも慎重に検討したほうがいい

特に閉鎖的な田舎の農村などは、狭いコミュニティのため噂が広がるので十分に注意して下さい。特に日本の村社会の文化は、皆と同じにすることが重要視されます。田舎では人が流動的ではなく固定的なため、よそ者や異端者に対する寛容性が極端に低いのです。強い協調性や同調性が求められる横並び体質のため、テレビに映るといろいろな捉え方をされます。

例えば、農家は組合や地域のつながりが密なので直接本人に話すのではなく、噂話が多くなりがちです。そしてその噂話が、あることないこと事実と違ってくるようなことはよくあります。

他にも、自分のサイト上で昔の農業の写真を載せていたのですが、その写真をテレビで使わせてほしいということがありました。このときは、別に取材をするわけではなく自分たちが映るわけでもないので了承しました。以下がそのとき使われた写真です。

テレビの内容は、「レジ袋の起源は?」という内容でした。1962年に梨狩りに来ていた女性客がストッキングを竹籠に引っ掛けてしまい破れてしまったのです。そして困った梨農園が開発を依頼してビニールの袋が出来たとのことでした。

私はたまたま、上のような昔の竹籠を使っていた時代の写真をネット上にアップしていました。そのため、この写真を使わせてほしいと連絡があったのです。

このようにサイトを持つことによって、どこで誰の目に触れるか分からないため、思いもよらないことが起きることがあります。特に農業は季節と関わり、そのときでしかない状況があるため、旬の時期には注目されやすいです。

例えば、中でも開花や収穫などの特徴的な時期は取り上げやすいです。ただ、それが直接売上につながるかどうかは別問題です。

地元の新聞に取り上げられる

新聞にもいろいろ種類があります。全国紙では難しくても、地域欄や地元の地域情報誌、新聞ならば、さらに取り上げてもらう確率は高くなります。

直接売上に関わったことがある経験といえば、地元の新聞に取り上げられたときです。このときは取り上げられたのは、私が主に栽培している梨のことではなく、それ以外に栽培しているキウイフルーツのことでした。

「キウイに関する取材をしたい」と連絡を受けたときはとても意外でした。なぜなら、ここは梨の産地でありキウイの産地ではないからです。ただ、梨の産地であるため梨農家はたくさんいます。しかしキウイを販売している農家はあまりいなかったのです。以下はそのときの記事です。

このときの新聞記者の話では、常にネタとなる情報を探しているということでした。そしてネタを探す手段としてインターネットを活用しているとのことです。

メディアに取り上げられたことを自社サイトに掲載する

このようにウェブサイトを持てば、予期しないところで取材の依頼があります。「やった。これで爆発的に売れる」と思うかもしれませんが、実際は思ったほどではありません。紹介されるメディアにもよりますが、実際に地方の新聞のちょっとした記事では、直接売上アップにつながりにくいです。

それよりも、実際に取材をされたことを自分のウェブサイトで「紹介されました」といって記事にするほうが効果があります。

「マスコミに紹介されました」といって記事にすることにより、マスコミに取り上げられたことを知らないお客様が見てくれて信用してくれたり、記憶してくれたりするのです。その結果として売上アップが期待できるのです。

実際、情報量の多い農家のウェブサイトを見てみて下さい。いろいろなテレビや雑誌に取り上げられていることが分かると思います。サイトの内容も充実させて時間をかけて制作してあります。

例えば梅農家であれば、栽培の様子はもちろん梅のこと全般や梅干しのことなど、きれいな写真を混ぜて情報の質と量が膨大にあります。ウェブサイトのなかでは、作り手の顔を全面に出して、キャラクターや雰囲気が分かるような作りになっています。

こうしたたくさんの情報があり、サイト運営者のキャラクターが分かるからこそメディアの取材が舞い込むのです。

思わぬ取引につながることがある

このように、自分独自のウェブサイトを作るとメディアなどで取り上げられることがあります。ただ、直接売上につながる場合とつながらない場合があります。また、不特定多数の人が見ているため取材のオファーがあっても慎重に判断したほうがいいです。

メディアに出ると内容に関わらず変に目立ってしまうからです。

こうしたメディアに取り上げられること以外に、仕事上の取引につながることがあります。農家がウェブサイトを作ることは、ネット上に営業マンを作ることにもなります。ウェブサイトは、勝手に営業をしてくれているのです。

農家がウェブサイトを持てば「どこで誰が何をどのように生産しているのか」を分かりやすく伝えることができます。そのため、あなたのサイトを見た企業が「是非とも取引をしたい」と考える人が出てくるかもしれません。

例えば私は、ネット通販をしている会社と数社契約して販売を委託しています。こういった委託販売のきっかけは、ほとんど私の作ったウェブサイトでした。

この場合は、自分でお客様とやりとりしたり、入金確認したり事務仕事全般を自分でする必要がありません。これらの事務仕事を任せることができるため、収穫と梱包作業に注力することができます。

一方で、農家が自分でネット通販をした場合、実際にはこれまで以上に仕事が増えます。細かい事務仕事が増え、パソコンや人とのやりとりに慣れていない農家は、正直大変になります。

そのような場合、「自分は栽培に集中して販売や事務作業は頼む」という考え方もできます。例えば、「ネット通販や産地直送のお取り寄せを専門に行っている業者に卸す」ということです。

また、マンゴーやメロンなどフルーツや加工品、お茶などはネットで農家が販売しやすいです。贈答品に使われたり自分でお取り寄せしたりするからです。しかし、ダイコンやごぼうなどの野菜を販売しようと思ったらなかなか難しい面があります。付加価値を価格に反映しにくく、贈答品やお取り寄せが難しいからです。

そのような場合、自分でネットで売ることだけを考えるのではなく、サイトを作ったことによってそこから、加工や飲食など別の切り口でつなげることも視野にいれることができます。

このように、サイトやブログを農産物を販売するだけの場所と考えるのではなく、宣伝などの営業のひとつとして考えることができます。思わぬ問い合わせがくることがあるからです。私は、個人に販売することを最初に考えていましたが、サイトを通して業者との取引につながることが分かりました。

自分の価値を再認識する

このように、農家がウェブサイトを持つことの副次的効果はたくさんあります。農家は基本的に田舎などの農村で農業をしている方が多いです。そして農村は、都会とは違って閉鎖的な特徴があります。

このような環境では、狭く固定化されたコミュニティになります。都会では、多種多様な人が集まってくるため、いろいろな価値観の人間がいます。人が流動的なため他人の噂話などをすることはあまりありません。私は数年間都会に住んでいたことがありますが、このほどよい距離感を居心地よく感じました。

誰に干渉されることもなく、いろいろな価値観があり、多様性を受け入れる文化があると感じたものです。いろいろな人が住んでいるため、いちいち人のことを気にしていないという空気があります。

ただ、田舎で農業をしていればその土地に根ざしているため、どうしても環境を変えることが出来ません。例えば、仕事であっても人間関係であってもそこから環境を変えることは困難です。

私は、田舎独特の閉ざされた単調な生活に不満がありました。変化のない田舎で農業をしていては、個人の能力を発揮する機会もなければ、情熱をもっていく場所もありません。

「退屈な田舎で農業をして、変化しない日常を繰り返すだけで人生が終わっていくのか……」と何度思ったことか分かりません。

ただそのようなとき、ウェブサイトを作り情報発信を始めたのです。インターネットは現実の狭い世界から可能性のある広い世界への扉を開けてくれるものでした。

実際に農園のサイトを作り、交渉したり販売したりすることは、社会と関わりをもてることでした。それまで、ただ農業をしているだけでは、社会人になった気すらしないのです。私はいつも、ここは自分の居場所ではないと思っていました。さらに、ただ農業をしているだけでは、時代に取り残されたような感覚がありました。

農家がサイトを持つことは個人が確立され、存在を認められたように思ったのです。可能性が限られる田舎で、インターネットの存在は無限の可能性があると思いました。

なにより、お客様と取り引きのやりとりをしているうちに、「自分の考えは間違っていない」「自分で作った作物を欲しい人がいる」と思えて自分を肯定することができました。

農家がウェブサイトを持って情報発信すれば、販売できたり仕事の幅が増えたりします。ただ、一番の副次的効果は、「こんな自分でも農作業だけでなく、新たな展開をすることが出来る」という気づきと可能性と自信を持てるようになったことです。

まとめ

農家がウェブサイトを持つとさまざまな副次的効果があります。お客様に対して通販を目的に始めても、いろいろな人が見ているため、メディアに取り上げられたり、新しい取引が増えたりします。

これらは、私が経験したことで、経験していないことを含めたらまだ知らない世界がいくらでもあるはずです。それだけ自分のウェブサイトを持つことの効果は、計り知れないのです。

農家がウェブサイトを活用して情報発信すると農村の狭い世界から脱することが出来ます。私はこのような想いでサイトを作ってきました。「現状から抜け出したい」「自分には何か出来るはずだ」という想いです。

農家がウェブサイトを持つことのメリットは、たくさんあります。それだけインターネットを活用して情報発信すれば、想像もしていない副次的な効果が起こる可能性があるのです。