農家が、インターネットで情報発信やネット販売まで行う場合、自分のメディアを持つことが重要になります。なぜなら、自分のメディアを持つことにより、さまざまな恩恵が得られるからです。

それらの恩恵には、「お客様に生産から販売までしている産直農家として伝えられる」「広告宣伝費なしで存在を認知される」「お客様をファン化できる」などがあります。

それでは、どのように考えれば、広告費ゼロで農家が存在を認知され、自分のメディアを持つことによって集客から営業・販売までできるようになるのでしょうか。以下ではその考え方についてみていきます。

もくじ

広告を出さなくても、農家の存在が認知される

農家がインターネットのメディアを活用することの一つとして、全く広告費などを出さずに自分の存在を認知されることにあります。

インターネットがない頃は、農家が集客し、販売まですることは至難の業でした。栽培管理に忙しく、営業するまで手が回らないからです。

行動力や人脈がある人は農業ビジネスで成功している人もいましたが、ごく一部の人に限られていました。大多数の農家は人脈もなく、自分で営業や販売をできないため、市場に出荷することが一般的でした。

農家が利益を増やすのは規模を拡大するしかない!?

たとえ販売できたとしても身近な人に限られていました。身近な人だけに販売する程度では、口コミなどで販売が広がることも起こりにくいです。

実際私は、農家自らが集客・販売まですることは難しいと思っていました。そのため、栽培が困難になって畑を減らす農家から土地を借りて栽培面積を増やし、生産量を上げていました。

農業で収入を増やすためには、規模拡大しか方法がないと思っていたからです。ただ、この方法では、作業量が増えて体力勝負になってしまい、疲弊してしまうことにもなりかねません。労力が限られているためです。

そのため、収穫量をたくさん上げて利益を出す方法しかないと思ったのです。

自分で栽培して自分で販売するためには「栽培以外にかける時間」「人を集める努力や行動」「販売まで繋げる営業スキル」などが必要であり、ハードルが高いものでした。

ビジネスの中では集客が最も難しい

世の中のあらゆる商品やサービスを販売する活動の中では、集客することが最も難しいです。そのため、テレビや新聞、雑誌、インターネットなどのあらゆる媒体で広告が出されています。新聞の見開きに出す広告は200万円前後かかります。さらに、全国紙の1面になると2000万円前後かかるといわれています。

それだけの費用をかけてまで広告を出すということは、あらゆる業種でお客様を集めることはいかに難しく、大切なことかを示しています。そのため、企業の中には、売上に対する広告宣伝費の占める割合が高い場合があります。

例えば、化粧品業界は、売上に対して広告宣伝費の割合が非常に高いです。また、原価は低いという特徴があります。化粧品業界では、売上原価率は25%前後程度となっています。このため売上に対する利益率は高いです。

一方で、商品の宣伝や販売促進のために、雑誌の広告やテレビコマーシャルなどに多額の資金を投入しています。売上に対して広告宣伝費の割合は原価とほぼ同じで25%程度といわれています。

化粧品はブランドイメージが重要なため、有名タレントをテレビコマーシャルや雑誌広告に起用しています。商品価格には、これらの費用が含まれています。

このように化粧品に限らず、どの業界であっても広告を出し、認知してもらうことに大きな力を注いでいるのです。

一方で小規模事業である農家が、広告を出すことは現実的ではありません。宣伝するとしても直販を大々的にしている観光農園や農業法人などが、地域情報誌などに掲載する程度です。

観光農園も直販もしていない市場流通の農家が人を集めて販売していく方法は、これまでほぼなかったといってもいいでしょう。

集めようとするのではなく自然と集まる集客へ

これまで、農家は市場に卸すことが当たり前でした。自ら集客して販売することなど、誰でも出来るものではないからです。たとえ自分で販売したいと思っても、どうやって集客したらいいか分からなかったと思います。

資金も人材も時間も限られた農家が、生産だけでなく集客して販売まで行うにはたくさんの困難があります。ただ、これまでも宣伝活動をしてきたと思います。

例えば農業では、消費拡大を推進するために県や市町村、JA、市場関係者などが集まりPR活動をすることがあります。市場での産地PRをしたり、店舗で消費者に試食をさせたりして消費・宣伝活動をするのです。

ただ、必ずしもそれらの活動が末端の消費者までPRできていない場合が多いです。それは、関係者だけで完結してしまい、肝心の消費者にはどこまで伝わっているのか分からないからです。

農家を含め、たくさんの関係者が集まるとイベント自体が単なる惰性の出来事になりがちです。こうして、たくさんの人が関わり、労力をかけた割には成果が出ないこともあります。

多くの人は「どのように人を集客したらいいのか」と考えます。そのため、認知してもらうために、試食・宣伝をしたり、商品の良さをアピールしたりするのです。

手当たり次第、お客様に試食を試みるため、PRにはなりますが、効率が悪い面があります。また、興味のあるなしに関わらず、人に試食を進めなくてはならないため、無駄に労力がかかります。

そこで発想を変えて「集める」のではなく「集まる」ように考えるのです。サイトやブログなどのネットのメディアを活用すれば、「集まる」状態を作り出すことができます。つまり、自分の頭の中で考えたことだけで人が自然に「集まる」状態を構築することが出来るようになるのです。

ネットを活用すれば個人の力でここまでできるようになりましたが、以前では考えられないことだったのです。

「集める」ことと「集まる」ことの違い

それでは、自然と「集まる」ようにするためには、どのようにすればいいのでしょうか。

「集める」と「集まる」では、一文字違いですがよく考えると全然違ってきます。「集める」では、なんとかして人を集めたいと思うので、こちらから積極的に行動したり資金が必要になったりする場合があります。一方で「集まる」とは何もしなくても自然と集まってくる状態です。

例えば、会社の飲み会などは、人が集まりにくいことがあります。会社のグチを話したり、上司からの説教があったりすることが予想されるためです。単なる惰性で続けている飲み会では、面倒くさいと思う人もいることでしょう。

このような場合は、幹事は人を「集める」ことが大変になるでしょう。一方で、仲の良い友達や気になる異性との飲み会であれば、楽しみになったり、前のめりになったりすることもあります。このような場合は、勝手に「集まる」ことになるでしょう。

このように、「集める」と「集まる」では人の意識が全く異なることが分かります。

そこで、勝手に「集まる」状態を構築できるのが、ホームページやブログなどの自分のメディアなのです。なぜなら、ネットでは興味がないとそもそも訪問してこないからです。インターネットが発達した現在では、個人でもこうした自分のメディアを持つことができます。そのため、こうしたメディアを構築することによって個人の力を発揮できるのです。

「自然と集まるメディア」を構築することの重要性

インターネットによる情報発信ならば、自分で販促物やPOPなどを用意して移動して、PRする場所を探して交渉して……などをする必要がありません。

やるべきことは、頭を振り絞り「自分がどのような考えで農業をしているのか」などの理念をネットで表現し、お客様が集まるための仕組みを構築することです。

他には、「作物を育てる過程はこのようになっている」といった栽培している作物の情報すべてを写真などを交えて公開することです。「どのような農作業をしているのか?」「なぜその仕事をしているのか?」「そのときどう感じたのか?」など、自分の気持ちを織り交ぜて表現していくことです。

このように、ネットによる仕組みの構築ならば自宅にいながらにして、地道にコツコツと築きあげることができます。時間はかかりますが、農家自ら情報発信することで広告費を使わず、存在をアピールすることができるのです。

販売のために農家が自ら集客をしても、何もしないでお客様が自然に「集まる」ことはありません。当然ですが、地道に努力して、「農業に関わるすべての出来事や自分の想いをメディアで表現する」つもりでブログなどを更新しなければいけません。

「自分で栽培しているものは素晴らしいものだから自然に広がっていくに違いない」

「いいものなんだから、口コミなどで広がっていくだろう」

などといった思い込みは捨てましょう。勝手に口コミが広がっていくことはありません。これからは、「自然と集まるメディアを自分の力で必死に考えて構築していく」ことを考えましょう。

信頼感を得られれば継続的にファンになるお客様ができる

継続的に情報発信を続けていると、あなたに興味のあるお客様が次第に集まってくるようになります。

作物の成長の姿や、日々どのように考えて農業をしているのか、などその人独自の視点で情報発信していると興味のある方がファンになってくれるのです。

例えば農家の日常は、勤め人にとっては非日常です。「作物ができるまでの姿」を知っている人はあまりいません。農家だからこそ作物の成長を身近で見れます。写真などを交え、そのときの様子やどう感じたかなど表現していくといいでしょう。

また、住所や顔を出すことにより、さらに信頼感が生まれます。「ここなら安心だ」と思ってもらえれば、生産者としての農家と消費者としてのお客様が信頼関係を構築することができるようになります。

むしろ、「案内状を送って」とか「農作業大変だと思いますが頑張ってください」など作物の収穫を楽しみにしてもらったり、応援されたりします。情報を伝えることは、本当に大事なことなのです。

まとめ

このようにインターネットのメディアを取り入れることにより、広告費をかけないで多くのお客様を集めることができます。私自身も農家ですが、農家が自ら情報発信するからこそ価値があります。多くの人は無意識で、「農業は大切だ」「なるべく国産の物を食べたい」「健康にいいものを食べたい」と考えています。

つまり、需要はたくさんあるのです。

現代は便利になり、スマホで簡単に写真を撮って投稿することができます。「ここまで農家が簡単に情報発信できる時代はない」と本気で思います。

ネットを使えば、広告費ゼロで集客ができるのは本当です。集客ができるメディアを自分で作ることができるからです。ただ何もしない状態では、集客することはできません。ブログやホームページを作成しただけでも駄目です。

重要なのは、その中身です。ブログやホームページの中身を、自分の魂を込めて表現するからこそ、「自然と集まるメディア」ができるのです。