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農家が生産だけでなく、ネット販売を含めたお客様への直販を考えたとき、多くの人は新規のお客様の獲得ばかりに目が向きます。しかし、安定的に売上を維持し、伸ばしていくには新規のお客様の獲得ばかりを考えてはいけません。

それでは、どのように考えれば安定的に売上を維持することができるのでしょうか。これには、誰があなたの農園のお客さんになるのかを意識したうえで行動することが大切になってきます。

農家のネット直売はまだまだ珍しい

農家がネット販売をしてく上では、顧客リストを意識して活用していくことが最も大事なことです。顧客リストとは、お客様のメールアドレスや住所などのことです。

ネット販売でお客さんが購入すれば、住所とメールアドレスの情報が分かります。こうした個人情報が顧客リストなのです。顧客リストに対してDMやメールマガジンを送れば、リピート購入してくれる可能性が高いです。

販売していくことを考えたとき、新規のお客さんばかりを求めてはいけません。むしろ、一度でもあなたの商品を購入したことがある人を囲い込むことが重要になります。

一度でもあなたから購入したことがあるお客様は見込み客と呼ばれ、再度あなたから購入してくれる確率が高くなります。しかも、農家のインターネットを使った直接販売はまだまだ珍しいです。そのため競合が少ないからこそ、作物の品質がよく、想いがしっかりと伝わっていれば、かなりの確率でリピートしてくれる可能性が高いです。

アクセスが少なくても販売することができる

私自身、自分で作成したウェブサイトにかなりのアクセスがあるわけではありません。アクセスがそこまで多くないということは、たくさん集客できているわけではありません。それでも毎年、市場を通さずに直接販売している割合は増えています

その理由として、リピートしてくれるお客様が多いことが挙げられます。私が発する情報に興味を持ち、果物が届けられることを楽しみにまってくれているのです。また、日ごろ情報を共有しているため、台風が通過したら作物の心配をしてくれることもあります。農業をしながら、お客様から応援されていることを感じます。

こうした情報に価値を感じてくれるからこそ、近所のスーパーや百貨店から買うのではなく、わざわざ送料を支払ってまでお客様は自分で選んだ農家を通して商品を購入してくれるのです。

ウェブサイトやブログを活用するときは、自分の想いのすべてを吐き出すつもりで情報発信していくほうがいいです。もっている情報を全部発信しないことには、何も始まらないからです。

情報発信するとき、個性を出すことを意識する

私は農業を始めてから、農村の閉鎖的な環境や農家の古い体質に疑問をもっていました。「昔からこのようにやってきた」ことや、「見えない同調圧力」などを感じてきました。

例えば、地域の集まりがあるのは同然として、「そこに生まれた長男は後を継がなければいけない。地域の祭りや学校行事には参加して、伝統を大事に皆仲良く行う」という空気でした。また、若い人が農業を継いだなら、「地域のリーダーとして」面倒ごとをすべて引き受けてイベントをまとめあげるのが普通というものでした。

私は集団行動が得意ではなく、「強制参加ではないが、暗黙の了解で参加しなければいけない。みんなやってるんだから空気を読んでください。」という場面で臨機応変に対応することに不器用な人間でした。

そのようなことから、自らの力でお客様に対して直販できる仕組みを構築できないかと考え、サイト作成やメルマガなどで自分の想いをぶつけてきました。

こうした個人的な想いは共感されることもあれば、うっとおしがられることもあると思います。ただ、「正直な想い」ということが相手に伝わります。

「正直な想い」こそが人を動かし、人を感動させられます。農家がインターネットを使い販売していくためには「正直な想い」は大前提です。

例えば私は、自分が作った作物を届けることによって「農家を身近に感じてもらい、リアルの場を含めてやり取りをしたい」と思っています。生産者(農家)として「美味しかったよ」と消費者に喜んでもらえることがやりがいにもつながるからです。

これを実現するために、私は箱の中にパンフレットを入れたり、感想やアンケートを聞くための受け取り人払いハガキを入れたりしています。また、農園をより知ってもらうためのニュースレターを同封しています。

食は命の原点です。農業や食が軽視されている現代だからこそ、現場の農業者から伝えられる事は山ほどあると思います。

見込み客になる人はどんな人なのか

それでは、どのような人が見込み客となってくれるのでしょうか。それは、農家が丹精込めて作られた農作物の商品の価値を理解している人です。こうした人は農家が直接販売する商品を購入する可能性が高いということになります。

また、「食と健康はつながっており、食べることは生きること」という風に考える健康意識の高い人も見込み客といえます。逆に、食や健康に対して無関心で「食べられれば何でもいい」「国産だろうと、輸入品だろうと興味もない」という人は見込み客にはなりません。

他にも「いい物ならばお金を出す価値がある」と考える人と「安ければなんでもいい」という人もいます。当然ながら、「安ければなんでもいい」という人を相手にしていては事業が成り立ちません。こうした人は最初から相手にしてはいけません。

消費者は商品だけでなく物語を買っている

このようなことを考えて、適正な見込み客にアプローチしていくことが大切になります。間違っても「安ければなんでもいい」という人にアプローチしてはいけません。

そもそも農作物は近所のスーパーなどに行けば、どこでも販売しています。農家が直売をするには、こうした販売店と何が違うのか差別化されている必要があります。より具体的にいえば、値段が高くないと意味がありません。要は高付加価値商品を販売するのです。

例えば、野菜や果物を店舗で販売するまでには、流通で時間がかかっています。農家が朝採りたてを販売するならばその日に採った物をすぐ届けることができます。農家が新鮮な作物を届けることは、お店から時間がたった物よりも何よりも価値があります。

実際、私の販売している農作物は通常のスーパーより高いです。ただ、それでも売れており、市場出荷に比べると3倍以上の利益が出ています。これと同じように、「近所のどこでも売っているけれど、ここの農園から直接買いたい」と思わせなければいけません。

それだけの価値のある商品を提供することは、農業者として当たり前です。ただ、これを実現するためにはサイトやブログなどを通じてお客様に対して情報を伝えなければいけません。このとき、農業を行う上での栽培管理に関するすべての情報が商品の付加価値になります。

値段をつけるなら、高ければ高い方がいい

私のところも産地なので、地元では安く商品が販売されています。同じ品物が多く出回っているので、安売り競争になりがちなのです。しかし、「安くないと売れない」と考える農家が多すぎます。確かに安さを求める方は多いですが、農家自らがこだわって生産した作物は、こだわって生産した商品の価値を理解する人を相手にしなければなりません。

安く売ることを考えるのではなく、「どうやったら高く売れるのか」を考えることのほうが重要です。安く売ることは誰にでもできるからです。

例えば、同じコーヒーでもコンビニで買えば1杯100円で買えます。これが、喫茶店になると500円ほどになります。さらに高級ホテルになると1杯1000円ほどになります。原価はどれも10円ほどですが、このように同じコーヒーであっても販売する場所や販売の仕方が異なることにより値段のつけ方が違ってくるのです。

私も最初、直売を始めたころから作物の値段を上げてきました。それまでは市場をとおして安く販売していたため、離れていったお客様は多くいるとは思います。ただ、実際はどうかというと売上は伸びています。商品を高く売るための方法はいくらでもあります。

例えば、贈り物として届けたい場合はギフト価格にすることができます。同じ品であっても、それを自分用に購入するのか、相手に贈り物をするのかによって予算は違ってくるのです。

ブドウ農家であっても、例えばシャインマスカットという品種を市場に出すと1キロあたり1500円前後が相場です。ただ、市場を通さず直販すると3000円前後で売られます。さらには、高級果物店では数万円で販売されています。

(※価格や相場は時期や年によっても変化するため大まかな目安です)

また、同じ品種の果物を販売するとしても3㎏、5㎏、10㎏など、重さを変えることによって商品のバリエーションが増え、購入者の目的に沿った需要に近づくことができます。

先ほどのブドウであれば1㎏3000円、2㎏6000円、3㎏9000円ということになります。

その他に大きさによってⅬ、2Ⅼ、3Ⅼサイズで価格を変えることにより、値段の幅を作ることができるようになります。

価格を上げる戦略は無数に存在する

他にも、「農園のロゴデザインを作ってブランディングする」「農園のパンフレットを作りこむ」「経営理念を明確にし、想いをしっかり伝える」「パッケージデザインを工夫する」「ギフト価格を設定し、価格を上げる」などいろいろな方法があります。

例えばブランディングをする場合、知り合いを伝って地元の有名旅館に対して「無料で30kg分を送るから、実績として使わせてほしい」と交渉し、ウェブサイト上で「あの有名旅館で活用されているブドウを送ります」のようにしても問題ありません。

他には、新聞やテレビなどのメディアに取り上げられたり、有名な通販ショップや販売店などで使われていたりすると、大きなアピールになります。

経営者のセルフイメージが価格設定には重要

安売り競争は大手にまかせて、小規模農家は作物の専門化としての自信をもち、付加価値をつけた商品として販売するべきです。作る作物に特化し、「この作物だったら、○○農園」とすぐに関連づけられるようにしましょう。

こうしたこだわって作った農産物の価値を理解し、価格面でも理解してくれる人は、協力な見込み客となってくれます。何度も接触して信頼関係を築き、商品の価値を理解した上で購入してもらいましょう。

見込み客はどのような人なのか明確にし、適切にアプローチすることによっていいお客さんだけが集まるようになります。これによりクレームが多い人や安売りだけを求める人を排除することができるようになり、感謝するような方だけが集まるようになります

ちなみに、値段を高くして高付加価値の商品だけを販売すると、自然にクレーマーが減り、質の高いお客様だけが集まってくるようになります。

なぜなら、「高品質商品の価値を理解し、経済的にも精神的にも余裕がある層」だからです。そこであなたは、こうした客層を相手にするようにしましょう。

少なくとも、少し傷があったからといってクレームを入れるようなレベルの客層ではなく、むしろ丁寧な包装で届いたことに対して感謝メールを送ってくれる人たちです。

実際に行ってみればわかりますが、高額商品を購入してくれる人であるほど、なぜかお客様の質は高くなります。そうした人をお客様にするため、あなたの情報をサイトやブログで伝えていきましょう。

そうすることによって、さらに高品質の作物を作ることに意識を集中させることができるようになります。そのためには、誰が農園のお客さんになるのか意識したうえで、行動することが大切です。