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農業で生計をたてるのは大変だといわれています。農業は自然の中で作物を育て、それをお金に換えてはじめて事業として成り立ちます。自然の環境の中で仕事をするため、天候に左右され、ときには自然災害や病害虫の被害にあうこともあります。

自然条件の影響を受けるため、安定しない側面があります。また、複雑な流通システムの中で、中間流通にたくさんの人が関わるため利益を上げにくい面もあります。これら以外に、「農業機械」「農業設備」「農薬や肥料」「その他資材」など経費がかかる割に売上を上げにくいです。

自然の条件に左右されるという農業独特の環境から、「農家は労働の大変さの割に儲からない」といわれます。その内容について、詳しく解説していきます。

なぜ、農業は儲からないのか

農業が儲からないといわれる理由はいろいろあります。まず、天候の状況や自然災害はどうすることもできません。天候に左右されない農業をするためには、自然条件に影響を受けないように建物の中で農業をするという方法もあります。

しかし、この場合は設備投資のために多額の借金をすることになり、小規模農家で返済していくことはなかなか困難です。大きな資本があるところですら、農業に投資して失敗している例は数多くあります。それだけ設備投資したとしても天候の影響だけでなく、栽培技術や人件費の面など必ずしも利益を出せていないのが農業の難しさです。

農業は自然の影響をもろにうける

建物やハウスを使わないビニールハウスをかけて栽培する露地栽培の場合、出荷時期をずらして高単価をねらうこともできます。しかし、ハウス栽培の場合では、予想外の大雪や台風で建物がつぶれてしまうことがあります。

こうした気象条件での被害はどうすることもできません。どれだけの資金や労力をかけていても自然の影響で一瞬にしてすべてが無駄になってしまう現実があります

例えば私は果樹栽培をしていますが、ひょうがふることによって1年かけて育ててきた作物が一瞬にして傷だらけになってしまう経験をしています。果物が売り物にならない悔しさや、自然の前ではどうにもならない無力感を感じました。

労力をかけて育てているので、やってきたことが台無しになる絶望感も感じました。農業は自然に左右されるので、結果が補償されているわけではありません。今年もいい作物がとれることを期待しながら、予想できない天候の中で働いているのです。

商品の回転率が悪いのが農産物の特徴

また、商品の回転率が悪い点もあげられます。米の場合、1年に1回の収穫です。同じく果樹の場合も1年に1回です。要は出荷期間が限られているのです。それ以外の時期は、さまざまな作業があるため、商品として販売する期間が短いです。

野菜でも収穫するまでに数カ月かかります。苗を植えて育て、収穫するまでには時間がかかるのです。さらに収穫時期になって病気になって見た目が悪くなったり、害虫に食べられたりすると商品としての価値がなくなります。

このように天候に左右されるだけでなく、病気や害虫によって出荷数の予想がたてにくく、商品の回転率悪いのが農業の特徴です

農業ならではの特徴がある

あらゆる産業があるなかでも、農業には農業独自の特徴があります。

例えば自動車などの工業は、少数の大規模なメーカーによって供給されるのに対して、農産物は多数の小規模な生産者によって供給されています。これが農産物市場の大きな特徴です。

生産者が少数か多数かの違いは、少数だと独占が生じやすく、多数だと競争が働き独占しにくいということです。農産物では特定の産地の青果物で、ある時期の市場を独占するとなるとその産地の意向が強く反映されます。

例えば、群馬県嬬恋村のキャベツは100000t以上作られており、夏場のピークでは東京の市場の8割を超えることがあります。このような状態であれば市場を独占することができ、価格に反映させることができます。

しかし、一般的には多数の産地が競合し、特定の産地が独占することはまれです。農産物の場合は需要と要求のバランスだけでなく、産地で相場が違ってくるので、どこで何を作るのかも大事な視点になってきます。

農家は自分で生産した物の値段が決められない

さらに農家が儲からない大きな理由は、自然災害などのほかに、農家に価格決定権がないことです。市場に出荷した場合、農家はいくらの値段で売れたのかわかりません。出荷する段階では、自分で作った農産物の価格が一体いくらになるのかわからず出荷しているのです。

出荷方法にもいろいろある

市場に出荷する場合、小売り店で店頭に並べるまでに、大雑把にいうと出荷組合、仲卸、小売りなどを通ります。個人で直接市場に出荷する農家もいますが、このときは共販により行われます。共販は3つあります。

1. 農協(JA)系統共販

2. 専門連系統共販

3. 地域の出荷組合

共販とは農産物をJAが取りまとめて集荷し、市場などに販売する方式です。「共選・共販」とも呼ばれています。地域の出荷組合は、有志で結成し、法人格をもたない任意組合などあります。

共同出荷のいいところは、大量に品がまとまることによる有利性があります。他にも規格が統一されるため、量販店としては商品販売がしやすいです。たくさんの農家が個別に選別すると、個人の判断になるため品質が統一されないことがあります。そこで共同で品質を統一することにより、品質にばらつきがなく正確性があるのです。

このように出荷方法はいろいろあり、価格も異なってきますが、安定的に供給であるシステムだといえます。ただ、自分で価格を決めるわけではなく、市場の価格相場に左右され、個人の評価が正しくされているとは限りません。

農家の手取りの実態

市場出荷をした場合、農家が生産した作物はさまざまな工程で消費者まで伝わっています。例えば青果物について、100円で店頭に並べられている場合を考えます。正確な調査結果はありませんが、農林水産省の調査によれば100円のうち生産者手取り価格は30~40円。出荷経費(卸売市場まで)が20円前後。仲卸、小売りが40円~50円となっています。

これを考えるといかに流通マージンが高いかがわかります。生産者価格30~40円のうち、その中から農薬や肥料代、機械代、苗代などさまざまな経費がかかっています。

これでは農家が利益を出すのは大変難しいといえるでしょう。農家が利益をだすには規模拡大をして面積を増やし、生産量を増やすしかありません。

農産物は相場に左右される

また、農産物は天候や災害など需要と供給の仕組みで相場が左右されることがあります。

ニュースなどで、畑で採れた野菜をトラクターで潰している光景を見たことがないでしょうか。豊作などで相場が大変安くなり、作れば作るほど赤字になってしまうので、仕方なくトラクターで潰して廃棄しているのです。

もったいないと感じる方もいるかもしれませんが、手間暇かけて育ててきた農家が一番悲しい思いをしています。市場価格をこれ以上下げない措置でもあるのです。相場に左右されるために、せっかく作った農産物を自分の手で廃棄しなければいけないというのが現実です。

自分で価格を決め自分で売れば価格は跳ね上がる

農家は流通の市場の相場に左右され、安定しない側面があります。しかし、逆に考えれば流通・販売までを独自のやり方で行うと利益は2倍にも3倍にも跳ね上がります。

これが直売とよばれるもので、自分で作って自分で売る農業です。そもそも生産するまでに大変な手間暇をかけているので、稼ぐ農業を実現できなければ意味がないです。現在の流通では、こうした生産にかかる努力やコストは無視され、単なる生産物として取引されています。

農家も単なる生産物として出荷して、「作ったら終わり」という意識があります。そもそも自分で販売しようと考えたこともない農家も多いです。そのため、作ることだけでなく食べてくれる消費者ことまでを考えるように意識を変えなければいけません。

効率が悪いのが農業の特徴

また、農業は工業に比べて比較にならないほど効率が悪いです。農業の種類によっても違いますが、機械化が進まず手作業が多かったり、そもそも農業に効率を求めても仕方がなかったりする部分があるのです。

例えば、工業の場合、「工場などで1日あたりベルトコンベアーで数十万の品を生産し、計画的に1個当たり数十円で出荷する」などのように、生産方法を考えてみることができます。

一方で農業の場合、数カ月から1年かけて手作業で生産し、天候や病害虫左右されるため出荷数の見通しが立たず1個当たりいくらになるかわかりません。

これらのことから、農業は工業と違い「計画通りいかない」ことが大きな違いです。天候や病害虫などさまざまな要因に影響され、予想が立てにくいのです。

農家が儲からない理由は「天候や自然災害に影響され不安定」という自然相手に仕事する農業独特の環境があります。他にも「価格決定権がなく相場に左右される」ことがあります。また、「効率が悪く作物の回転率が悪い」などあります。

しかし、それらをふまえた上で、「天候に影響されないよう設備投資する」「価格決定権をもち生産・販売まで行う」「効率化を意識し、商品化する」などを考えれば、誰も行っていない儲かる農業を実現することは可能です。

農業はまだまだ、改善の余地がたくさんある産業です。他産業で当たり前に行われていることが農業ではまだまだ行われていないからです。例えば他の産業で当たり前に行われている「経営感覚」や「販売(お客様への直販)まで考えたマーケティング」などの考え方を農業に当てはめると大きな収益化を成功させることができます。

農業の弱点を理解した上でアイディアを加え、強みに変えていけば、「誰も行っていない儲かる農業」が実現可能です。