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野菜や果物は一般的には、市場を通して流通しています。

青果物の市場流通は生産者から出荷団体を通して卸売り市場にいきます。その後、仲卸などを通じて小売り店で販売されます。このように農家が生産した野菜や果物は市場を通じて店頭に並べられます。このとき、お店で売られている野菜や果物の何割が農家の手取りになるのか疑問に思ったことはないでしょうか。

また市場の卸売価格からみた農家の手取りの割合は作物によって異なっています。青果物では「豊作か不作か」「天候の影響」「需要と供給のバランス」などで農産物の価格が一定ではありません。

そのため野菜の値段が高いときもあれば安いときもあります。小売からみる流通費と農家の手取りの関係は毎年違ってきます。農家の生産者価格は毎年変動が大きいのに対し流通経費は毎年安定しているのです。それでは卸売価格と農家の手取りの関係はどうなっているのか、詳しく解説していきます。

農産物の卸売価格とは

農産物市況というのを聞いたことがないでしょうか。農産物市況は基本的に市場の卸売価格のことを指します。市場で取引されている1kgあたりの価格のことをいっているのです。この卸売価格ですが、農家の手取りというわけではありません。

「農家の手取り=(卸売価格-集出荷経費、運送、団体手数料卸売手数料など)」 になります。

下の表は卸売り価格が100%として、市場で卸売されるまでにかかる経費の割合を示しています。数値は「農林水産省 青果物集出荷経費調査報告」をもとに作成しました。その年により相場は変化するので、細かい点は異なることもありますが目安と考えてください。

交付金含む卸売価格(1kg) 農家手取り(円) 集出荷経費、運送、団体手数料卸売手数料などの割合(%) 農家手取りの割合(%)
ダイコン  109.0  51  52.9  47.1
 にんじん  203.8  118  42.1  57.9
 はくさい  85.5  43  49.9  50.1
 きゃべつ  103.6  53  48.9  51.1
 ねぎ  317.6  96  69.6  30.1
 なす  277.8  161  42.2  57.8
 とまと  299.3  192  35.9  64.1
 きゅうり  250.0  138  44.9  55.1
 ピーマン  359.3  200  44.2  55.8
ほうれんそう 365.6 67 81.7 18.3
たまねぎ 97.7 52 47.2 52.8
レタス 177.6 54 69.5 30.5
みかん 283.4 211 25.4 74.6
りんご 264.5 163 38.5 61.5
日本なし 313.0 217 30.7 69.3
ぶどう 726.8 462 36.5 63.5
もも 489.8 335 31.7 68.3
いちご 988.7 583 41.0 59.0

(農林水産省 青果物集出荷経費調査報告から作成)

一般的に農産物価格は市場の卸売価格が公表されています。卸売価格とは一般的に、小売店に納品する価格です。小売価格とは通常、お店で販売されている価格となります。農家は市場での卸価格を基準に手取り価格を計算することになります。

作物によって、小売価格からの手取料の割合は異なる

表をみると果物は大体卸売価格の6割以上が手取りとなっていますが、野菜は18~57%と大きな差があることがわかります。ほうれんそうにいたっては8割以上が出荷経費になっています。

このように卸売価格から農家の手取りを考えてみると、作る作物により出荷手数料が全く異なることが分かります。

卸売と仲卸、小売り価格の違い

農産物の流通はとても複雑なので分かりにくいと思います。それでも、それぞれの段階で価格がきめられています。

農協など集出荷団体が卸売会社に売る段階での卸売価格、仲卸が小売りに販売する段階で仲卸価格、小売りが消費者に販売する小売り価格に大きくわかれています。

100円で売られているダイコンの農家手取りは33円

青果物経費調査のある年の調べによると、最終販売価格からみる生産者受け取り価格は42.9%、集出荷経費は19.3%、卸売経費4.9%、仲卸経費8.4%、小売り経費24.4%という試算結果でした。

これは16品目の平均で出した数字であり、それぞれの品目によって異なってきます。

例えばダイコンの小売り価格が12,314円(100㎏あたり)の場合、農家の手取りは3,980円でした。この場合、生産者受け取り価格は32.8%になります。これはさきほどの平均より手取りで10%ほど低いです。このように、作物によっても農家の手取り価格の割合が異なります。

卸価格からみると作物の種類により手数料が異なり、小売り価格からみると生産者価格は変化します。これらのことから農産物の価格は非常にわかりにくいといえます

分かりにくい出荷経費

また、生産段階の生産費である農薬、肥料、種苗,光熱など生産調査は充実していますが、出荷経費の内容は十分に公表されていません。これは手数料を含め謎の部分が多いところです。

農産物の市場での流通経費を知るために、農水省が調べた流通経費を抜粋してみました。これは野菜を「小売→(仲卸業者)→卸売業者→産地」の順に追跡して調査したものです。(青果物流通段階価格 形成追跡調査、1991年3月 農林水産省統計情報部)

小売り価格から見る生産者手取りと流通費の関係

まず、下のデータを見てください。だいこんの小売り価格に占める生産者の手取り価格が表示されています。

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1990年のだいこんの小売り価格は1本(1kg)で167円です。そのうち農家の手取りは81円になります。前年の1989年は小売り価格で129円ですが、農家の手取りは16円ととても少ないことがわかります。小売り価格の中に占める生産者の手取りよりも、流通経費に占める割合がとても高いのです。

図ではだいこんの小売り価格は1㎏あたり100~200円と2倍の範囲で動いています。しかし、農家の手取りで見てみると7~83円と10倍以上の開きがあります。この図ではダイコンを作って、いかに農家の手取りが安定しないのか分かります。また豊作でも不作でも流通費は変化することなく安定していることが分かります

従来、何年に一度か不作の影響で野菜の価格が高騰し、大儲けすということがいわれてきました。
しかし現在、国産野菜が高騰すると海外から野菜を輸入する場合があるので不作であっても利益を期待できないことがあります。

つまり農家にとって豊作で供給量が多かろうが、不作で品不足になろうが、関係なく出荷する価格は安値で推移しすることもあるのです。これが、小売価格からみる農家の手取り価格と流通費の現状です。

畑でキャベツをトラクターでつぶす光景はなぜ起きるのか?

次はレタスの価格、流通経費、手取りの推移です。小売価格のなかの生産者受け取り価格と流通経費が示されています。

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こちらは、だいこんよりさらに不安定な価格になっています。1988年や1990年は天候か災害か何かの影響で不作となり、品不足で価格が高くなったことが予想されます。

だいこんにしろレタスにしろ、一番注目してほしいのは「生産者手取り価格は年度によってかなり不安定なのに比べ、流通経費はいつも安定している」という事実です。1984年は農家手取り価格は4円の赤字になっていますが、流通経費はきちんとかけられています。

このような場合、出荷しても赤字が増えるだけなので、自分で作った作物を畑でトラクターのロータリーですきこんで耕してしまうのです。生産費(種子、肥料、農薬)など以外に段ボールなどの梱包費用や輸送費用のコストがかかってくるのです。他にも現場の面で、かなりの労力と手間がかかっているのです。

この年は豊作により供給過剰になって値段が下がったのか、または天候などの状況で産地の出荷が重なってしまい価格が落ち込んだなどが考えられます。いずれにしても、価格を調整するために産地でトラクターで耕してしまうのです。

野菜の産直価格は農家の安定と消費者の価格の安定がある

豊作のときに畑でレタスが捨てられていても、八百屋やスーパーでは消費者から金を受け取ってレタスを販売しているという当たり前の事実に注目しなければいけません。もし農家が産地直送として、お客様へ直売することになれば流通マージンは一切かからず、手取りの割合は大きくなることになります。

例えばだいこんの場合、直売価格を120円にした場合を考えましょう。1984年から1986年は100円前後なので、120円のだいこんは高いと感じるかもしれません。しかし、1988年の197円や1990年の167円と比べた場合は安いと感じるでしょう。

価格が変動する弱みを強みに変える

このように野菜の小売価格は農家の生産価格と流通経費によって価格が決められています。また、天候や農作物の出来によって毎年価格が変動します。

ここに農家が稼ぐことが難しい理由があります。流通ごとの手数料がどのように決められているのか、決められた手数料はなぜそうなのかなどを考える必要があります。

本来ならば農家は作物生産に専念するべきであり、流通・販売のことなど考えなくてもいいはずです。流通のプロ、販売のプロがいるからです。

しかしながら、それでは前述のように流通段階での各種手数料や運賃コストなどでがんじがらめになっているので、経営が成りたたないこともあるのです。

農産物の流通はいくつもの過程を通り安定して消費者に届ける便利なシステムがあります。そのためスーパーに行って「今日はにんじんが売っていない」ということはありません。

ただ、現在の流通では卸売価格に対して作物によって手数料が異なります。これでは作る物によって農家の手取りの収入が大きく異なることが分かります。これらを考えると、農業で稼ぐためには何を作るか作物の選択も大切になります

そして産直価格として農家自らが価格設定すれば安定した価格の設定ができます。さらに消費者からすれば高い野菜の時期でも安定した価格で購入することができるためwinwinの関係を築くことができます。

また、農家の手取り価格は何倍もの差があるのに対し、流通経費は毎年安定しています。生産コストである農薬や肥料、資材、農機具などは農家の経営の中で強く意識される部分です。しかし、それだけでなく作物を出荷した後の流通経費の部分も知っておく必要があります。

小売価格に対する流通コストは大きいことから、生産コストだけでなく流通コストを意識した上で農業経営していくことが全体像を考えるうえで大切になります。

「何を作るか」、「流通・販売をどうするか」「流通コストはどのくらいか」など、ビジネスとしての農業を意識すれば農家の手取りの収入を大きく変化させることができるようになります。