農家が直売をしたりインターネット販売をしたりして、お客さんと向き合うようになれば「接客」が必要になります。そして、お客さんを集めるためには「集客」が必要になります。
また、新規のお客さんが集まるようになってもそのままではいけません。繰り返し買ってもらうようにリピートしてもらうことを考えなければいけません。
多くの場合は、新規顧客開拓のために広告をだし熱心に行動しますが、実際は既存顧客を大事にすることを考えなければいけないのです。
そして、農家であっても一度買ってもらったお客さんの情報は大切です。産直農家にとって一番重要なのは「顧客リスト」になるのです。
顧客リストがあれば経営を安定し続けることができるのです。それでは、「なぜ顧客リストが大事なのか」について具体的に説明していきます。
もくじ
売って終わりではない。そこからが始まりである
お客様と直接繋がり、自分で作った作物を自分で販売していくようになると繰り返し買ってもらうことが必要になります。
実際に観光農園を営んでいるところでは、お客さんは毎年同じ農園を利用している場合が多いです。そこの農園とは顔見知りになっていて、何十年と付き合いのある場合も少なくありません。
農業は商品を販売して終わりではありません。そこからが始まりとなるのです。例えば、直売をして宅配便を利用しても、そこで終わってはいけません。そこに書かれている名前や住所、電話番号は大切に管理しなければいけません。
そして、何度も繰り返し買ってもらうためには、顧客リストを管理することが大切になります。顧客リストとは、お客さんの住所や名前、電話番号、メールアドレスのことです。
要するに個人情報のことです。
お客さんは基本的に忘れる
なぜ、お客さんのリストを管理しなければいけないのか。それは、お客さんは忘れるからです。たとえ一度購入して、「とても美味しかったよ。またお願いするね」といっても時間がたてば人は忘れてしまうのです。
リピートしてくれない理由は「忘れているから」です。あなた自身、2日前の夕食に何を食べたか覚えていますか? 多分、ほとんどの方が覚えてないのではないでしょうか。それくらい人は忘れやすいのです。
たまたま、検索エンジンから訪問し、ホームページから購入したとしても、時間がたてばどこで購入したのか忘れてしまいます。たとえ、とても美味しくて感動し、「また購入したい」と思っても、どこで買ったかすら覚えていないのです。
そして、検索エンジンで何とキーワードを打ち込んだのかも忘れています。
このようなことがあるため、常にお客さんとコンタクトを取り続けなければいけません。要は、嫌がられない程度にゆるやかな関係性を築いておくのです。
そのための関係性を築いておくのには、顧客リストがどうしても必要なのです。なぜなら、このリストをもとに関係性を作れるからです。そして、こちらからオファーを発信し続けなければいけないのです。
なぜ、顧客リストは大事なのか
顧客リストがいかに大事かは、以下の話に表れています。
時は江戸時代の話です。
ある商人の家が火事になりました。その家の人間は全員無事に逃げて助かりました。その家の主が、あるひとつの物を取りに再度もくもくと燃える家に行きました。
さて、何をとりに行ったかわかりますか? お金でしょうか? 答えは違います。
その商人は顧客の情報が入った帳簿を取りに行ったといいます。その商人は顧客の情報がもっとも大切だと知っていました。
リストがあれば何度でもやり直せる
お金は使えばなくなってしまいますが、顧客リストさえあれば何度でも立ち直ることができます。
たとえ、その商売ができなくなってしまっても、他の商売でも顧客リストがあれば、再度アプローチすることができるのです。
たとえ商品があったとしてもお客様がいなければ、ただの売れない商品になってしまいます。逆に顧客リストさえあれば、新たな商品を販売するにしても、そのことをお客様に伝えることができるのです。
農家にとって農業機械など高価なものもあるかと思いますが、最も重要なのは顧客リストになります。
顧客リストがなくなると、一からお客さんを築きあげなくてはならないからです。そして新規顧客の開拓には既存のリストに比べて7倍以上も労力やコストがかかるといわれています。
ビジネスにおいてもっとも重要なものとは
ビジネスで大成功をおさめ、一代で富を気づいたと言われるアンドリュー・カーネギーという実業家がいました。
彼はこのようにいいました。
「私のすべての財産を失ってもかまわない。ただし、顧客リストだけは残してくれ。そうすれば私はすぐに今の財産を築いて見せる」
どのような仕事、業種でもリストがとても大事なのです。ビジネスではリストがとても重要になります。
販売することだけでなく人を集めている
一度通販などで商品を買ったら何度もDMが送られてくる経験をしたことがありませんか。これは、一度購入したことがある人は再度購入する可能性があるために購入者のリストを活用し、DMを送っているのです。
お店やアンケートで名前や住所、メールアドレスなど記入したことがありませんか。
例えば、居酒屋やファミレスなどでアンケートに答えればドリンク一杯無料などというのを見た事があるでしょう。
このとき、なんのためにドリンク1杯無料にしているのかを考えなければいけません。それは、メールアドレス、ラインなどの情報を欲しいために行っているのです。お店からすれば、ドリンク1杯無料など、たいしたことはありません。それよりお客様のリストを手に入れることのほうがはるかに重要なのです。
それほど、どの企業であっても顧客リストをほしがっていることがわかります。それだけ顧客リストはあらゆる職種にとって重要なのです。
そして農家にとってもインターネット販売や宅配便を利用して通信販売をするなら、顧客リストはとても重要になります。むしろ普段栽培管理に忙しい農家こそ、収穫期にアプローチできる顧客リストこそ活用しない手はないのです。
顧客リストがあれば新規顧客は必要ない
顧客リストがなければ、新規でお客様を探してこなければいけません。新規顧客を獲得するのは、リピート客のコストに比べても6倍~12倍も高いといわれています。
だからこそ、新規客よりも既存顧客を大切にすることが成功するコツなのです。
例えば、ある人気のある飲食店では、メディアの取材がきてもそれに応じることはありません。テレビや雑誌で取材されると人が殺到します。こうしたメディアは影響が大きいためです。
通常であればお店が繁盛するため、是非とも取り上げてもらいたいと思うでしょう。しかし、ここのオーナーは絶対に取材をしないのです。なぜなら、こうした人気店であれば、すでにファンがたくさんいます。既存のお客様がいるのです。
そしてオーナーは、「新規のお客様が増えると、既存客(リピーター)に対してこだわりの品を提供できなくなってしまう。忙しくなるとサービスが悪くなってしまう」といいます。
要するにメディアで取り上げられることにより、たくさんの興味本位の客が殺到し、上客(リピーター)への対応が悪くなってしまうのです。それによりお店の雰囲気も変化し、混雑してしまい、既存客が嫌になり訪れなくなってしまうかもしれません。
すでにたくさんの顧客がいる場合、あえて新規の顧客は必要ないということなのです。
このように考えると、新規顧客を追い求めるのではなく既存のお客様を大事にすることがとても重要です。そのため、顧客のリストを活用することはビジネスにおいて最も重要なことなのです。
農家がリストを活用するには
そして、顧客リストがあればあなたのタイミングでオファーをすることができます。これを「リストマーケティング」といいます。
例えば、以下のような方法をとることができます。
私は果樹栽培をしていますが、1年間作業をしてきて、収穫時期が一番忙しくなります。
そして、果樹は収穫時期が短い期間に集中するため、収穫から選別、箱詰めなどとても忙しくなります。朝から晩まで収穫した後、さらに選別、箱詰め、受注管理、伝票書き、連絡メールなどしていては、いくら時間があっても足りません。
そして、その中にもいろいろな仕事が舞い込んできます。そのようなとき、顧客リストがあれば、あらかじめそのリストを活用し、予約販売をすることができるのです。
要は、忙しくなる前に注文の事務作業を行い収穫期に重なる作業の山を崩すのです。
農繁期の忙しくなる前に、お客様の住所にDMを送ったり、メールマガジンを送ったりします。そして収穫が始まる前に予約という形で受注し、リピーターの分の入金管理や伝票管理を済ませておくのです。実際、農家が農作業をしながら販売管理をするのは大変です。
このように農家は、収穫だけでも大変忙しいです。そして、販売までするとさらに仕事が集中してしまいます。そのため、忙しくなる前にある程度のお客さんの注文を予約という形にして販売と宅配伝票を作成しておくのです。
そのためには、お客様の住所やメールアドレスが必要になります。
農家で顧客リストを活用し、自分の想いやこだわりを伝え、商品を案内し販売している人のほうが少数派です。リストを活用されている業種はありますが、農家ではまだまだ活用している人は少ないです。そのため、本気で顧客リストを使うようになると、今までにない結果が得られるのです。
普段から関係性を築いておく意識が必要
ただ、収穫前のオファーで注文をとるのは、信頼関係があってのことで、いきなり注文を取れるものではありません。普段からお手紙やSNS、メールマガジンなどでコンタクトを取り続けてこそ、収穫前にお知らせすることで効果を発揮するのです。
そのため、普段から関係性を築いておくことが大切なのです。大きな組織の場合は、個人を全面にしてお客様と関係性を築くことができません。一方で、個人と個人では関係性が作れるのです。そして自分の農園のことや歴史やこだわりなどを伝えることができるのです。
そして、「農業のこと」「普段の仕事のこと」「農園のこだわり」などの情報を共有するのです。農業をして生きている普段のなにげない日常や、収穫の喜びや、自然災害などにあったときの絶望感など自分の想いを伝えるのです。
情報を伝えた結果として、信頼されることに繋がります。そして共感されることがあります。共感してくれる人はファンになって応援してくれる人もでてきます。
これは、小さな農家だからこそ取り組めることでもあるのです。そして、普段からゆるやかな関係を築くことが大切です。いきなり売り込みをしても意味がないのです。
新規顧客を獲得するのはなぜ難しいのか
あなたもいきなり売り込みをかけられては嫌なはずです。うっとおしいと思うだけでしょう。いきなり保険商品や投資商品など営業をされても人は警戒するだけです。
これが新規顧客を獲得するのが難しい理由です。いきなり売り込みをしようとするからです。だから簡単にみやぶられ姿を消されてしまうのです。
こうした気配は簡単にかぎ分けられるものです。そして、リストを活用して、関係性を築くのは分かってもじゃあそのリストをどうやって手に入れるのか疑問に思うでしょう。
どうやって顧客リストを手に入れればいいのか
当然ながら、お客さんに購入してもらったり、住所やメールアドレスを教えてもらったりしなければ顧客リストを活用することはできません。そして、そういう人を集めることが最も難しいのです。
大手企業でも繰り返し広告を出しているように、「集客」することは、ビジネスで最も難しいことなのです。
そのため、リストを活用する前にまずは、集客しなければいけません。私は、サイトに集客して購入してもらい、そのお客さんに案内状を出すことをしています。
そのため、最初は自分のホームページやSNSなど基盤となるものを作るのです。そこにお客様にとって有益となる「自分の農家でしか発信できない情報や、お客様にとって価値のある情報をのせる」のです。
信頼関係の構築には時間がかかる
いきなり売り込むことは難しいように、いきなり信用してもらうことは難しいことです。そのため、自社サイトにいろいろな情報をのせておけば、購入してくれることもあり、さらにメールマガジンなどを送っても警戒されることがないのです。
要は第一段階としてサイトであなたのことを知っているので、ある程度心の扉が開かれた状態にあるのです。むしろ、サイトを見た段階で興味がなければ、購入することもないので購入している方には信頼されていることになります。
そして信頼された上で、さらに定期的にSNSでの交流やメルマガを出したり、収穫時期の前にDMを送ったりすればいいのです。
顧客リストを活用して売上を伸ばす
私であればは、産地直送用の顧客管理ソフトを使っています。
これは、注文があれば、ソフトに入力し、宅配便の伝票と連動することができます。そして、ネットからの注文だけでなく、FAXや電話からの注文でも入力できます。
誰が、いつどのくらい購入したかの履歴がわかるので、それをもとに案内状の作成をすることができます。例えば、毎年購入しているリピーターや贈答先など大量に購入するお客様など、DMを出したい人を選ぶことができます。
このようなことができるため、顧客リストはとても大切なのです。ただ、案内状を送るとなると82円切手が必要になり、プリンターのインクや紙、印刷の手間、封筒に入れるなど結構手間がかかります。
そしてデザインを考えるなど時間がかかります。そこで、無料でできて、一瞬に何百人、何千人と情報を伝えることもできます。それがメールマガジンやライン@です。切手代もかからなければ、ポストにいかなくてもいいです。
メルマガを活用してゆるやかな関係性を築く
メルマガやライン@を活用すれば、今この瞬間に情報を伝える事ができます。例えば私はネットショップについているメルマガで配信しています。
ネットショップの機能を使う事によって無料でできます。そのため、収穫時期の前の注文表を含めた郵送のDMでなければ、こちらで気軽に配信することができます。
そして、忘れられないようにゆるやかな情報を共有しつつ、関係性を築いた上で収穫のお知らせを配信すると、注文を受けることができます。インターネットを使った通信販売をすれば、ECサイトシステムにこれらの仕組みが組み立てられています。
例えば、メルマガが欲しくない人は購入時にメルマガの設定を拒否しています。つまり受信したい人だけに送信することができるのです。そして、購入者の顧客のリストは自動で蓄積され、送りたい内容を考えればボタン一つで送信することができます。
まとめ
顧客リストを活用することはビジネスをする上でとても重要です。インターネットを使ったビジネスでもリアルのビジネスでも、ありとあらゆるところで顧客リストは使われています。
新規顧客を追い求めて広告を出し、既存の顧客を大事にしていないため、売上が安定しない例はいくらでもあります。しかし、顧客との信頼関係を築くことによって「時間はかかるけれども大切な資産」になります。
そして、顧客リストがあれば、何度も購入してもらうことができるようになります。商品を楽しみに待っていてくれます。お客さんの方から「また連絡ちょうだいね」といわれます。
つまり、お客様から「感謝」されるのです。ただ市場に出荷をしていたときでは感じられない「やりがい」を感じることができます。
顧客リストを活用すれば、反応が必ず返ってきます。有効に活用すれば、今までにない道が開けます。そして経営を安定し続けることができるのです。