自然の中で栽培する農業の場合、台風や大雨、遅霜など思わぬ自然災害にあうときがあります。近年は地球温暖化の影響か遅霜が増えている気もしますし、局地的な豪雨なども増えています。そのようなとき大きく分けると収穫量の損害を補償する農業共済と収穫量だけでなく病気やケガなど様々なリスクに対して収入減を補償する収入保険があります。

そちらも農業共済組合で取り扱っています。農業経営の内容によってはどちらかを選んだ方がいい場合とそもそも共済に入らない方が良かったりとそれぞれの農業経営の規模などで異なります。

ここでは比較的使われている農業共済と収入保険についてみていきます。

もくじ

農業共済と収入保険の違い

農業を営んいで行く上では、経営努力ではどうにもできない大雨や台風、日照不足など自然災害があります。そのようなとき収穫量の減少をある程度補償する農業共済制度があります。

共済制度は決められた作物の補償を行うものです。この制度は農作物、家畜、果樹、畑作、園芸施設、農業機械と6つに分かれており、すべての作物をカバーするわけではありません。

また、主に自然災害で受けた減少分での補償のみになります。収入保険は平成31年1月から始まった制度です。それ以前は農業共済が主に使われていました。

農業共済組合と農業協同組合の違い

紛らわしいと思っている方もいるかもしれないので書いておきますが、農業共済組合と農業協同組合は全く別のものです。ここで書かれていることは農業共済組合(NOSAI)の内容です。

農業協同組合は(JA)です。JAにもJA共済がありますが、生命共済や医療共済、建物共済、自動車共済などが主になります。

作物共済は被害程度が分かりにくい

自然災害での補償をうけるときは、どの程度の被害を受けているのかが正直分かりにくいと感じます。自分のところの被害状況だけではなく、近隣の被害状況をみて確認したりします。

自分のところの被害が大きくても近隣での被害程度が軽い場合は、補償が思ったより少なくなる場合もあります。

例えば、以前ダウンバーストといって限らた場所しか被害がでないことがおきました。私のところでは被害がありましたが、近隣では無被害でした。私のところに調査に来て被害があったにも関わらず周りでは被害がなかったため、私への被害の補償は少なく納得がいくものではありませんでした。

このようなことはいろいろなところから聞かれます。

このように、場合によっては納得のいかない結果になる場合もあります。

他に遅霜被害があった場合、霜の被害と言っても窪地や平地、畑が家などに囲まれているか、何も障害物がない風通りが強い場所かどうかなどによっても被害程度が違ってきます。

また、そもそも被害程度といっても生産者によって被害程度が違えば、それまでどれだけ努力して管理してきたかも違います。手間暇かけて努力してきて大きな被害が出た人とたいして手間暇かけずに畑をほったらかしにしてたいして収獲量がとれないであろう畑も同じ被害として見られることもあるかもしれません。

ここら辺の細かいところは現在ではきちんと調査委して改善されてきているかと思いますが、昔はひどいもんだということも聞いています。

昭和の田舎では大騒ぎすれば補償が出る。何も言わなければ補償が出ないとかあったそうです。現代はないでしょうが。

収入保険とは

農作物の共済は作物が限られたり、収穫量の減少幅などで補償額が決まってきます。それに対して収入保険の場合は、原則としてすべての農産物を対象としています。

今まで当てはまらなかった作物でも補償されます。また作物共済との大きな違いは収穫量に限らず収入を補償するという違いがあります。

さらに農業経営を取り巻くたくさんのリスクに対応しています。自然災害だけではなく、市場の相場の変動で価格が下がった時や倉庫が浸水して米など売り物にならなくなってしまったとき、取引先の倒産やけがや病気で仕事ができなくなってしまったとき、農作物の盗難や輸出での為替の変動で大損したときなど幅広いです。

農業経営の経営努力では避けられない収入減少を幅広く補償しています。

どんな人が加入できるのか

これまでは、ある程度決まった作物でしか共済に加入できませんでしたが、収入保険は販売先や作っている物に限らず幅広く加入ができるようになりました。

また加入には青色申告をしていることが条件になります。(個人、法人)加入時に青色申告(簡易的なものも含む)が1年分あれば 加入することができます。

農業経営で補償を必要とするものに似たようなものが収入保険の他に農業共済、ナラシ対策、野菜価格安定制度などがあります。どちらかを選択して加入することになります。

収入保険の補償のしくみ

補償する基準の収入を決めるため、過去5年の収入の平均を算出します。その基準収入の9割を下回ったときに、9割を上限に補償する仕組みです。

肉用牛、肉用子牛、肉豚、鶏卵は対象外になります。

農産物の収入には、精米、茶などの簡単な加工品も販売収入に含められます。

収入保険の補てん方式の保険料

収入保険には、保険方式(掛け捨て)積み立て方式(掛け捨てでない)の組み合わせができます。

基本のタイプでは例えば基準収入が1000万の場合は保険方式の保険料8.9万円、積み立て方式の積立金22.5万円、付加保険料2.2万円で最大810万円の補てんが受けられます。

保険期間の収入が0になったときは、810万円(積立金90万円、保険金720万円)の補てんが受けられます。

 

積立金は掛け捨てではなく、使わなければ来年に繰り越されます。また継続加入しなければ戻ってきます。

保険金の受け取りがない場合は

保険金の受取がない場合は、翌年の保険料率が下がります。保険料・付加保険料は50%、積立金は75%の国庫補助があります。

まとめ

農業経営では自然災害などの様々なリスクがつきものです。そのようなときは農業共済組合に加入していれば補助の対象となります。様々なリスクに対応する収入保険と自然災害だけカバーしたい農業共済があります。

農業共済は米、麦、畑作物、果樹、家畜、農業用ハウスなどの自然災害と決められています。収入保険は青色申告をしている方が対象です。

原則すべての農産物を対象に自然災害や価格低下だけでなく、病気やケガなど農業者の経営努力では難しいところもカバーし、収入金額によって補償額が決められています。

農業を営むうえで自然災害などは避けては通れません。そのため万が一の時のために共済や保険で備えることが大切になってきます。