現代では、インターネット上にたくさんの情報や物が溢れています。あらゆる物が販売されているため、農家がネット販売しようと思ってもたくさんの情報の中に埋もれてしまいます。

そこで、農家が情報発信し、販売まで繋げていくためには、独自の売り(USP)が必要になります。要するに自分の農園独自の特徴が必要になるのです。それがなければ、消費者に選ばれることはありません。

「なぜ、あなたから買う必要があるのか」が明確になっていないといけないのです。

それでは、あなたが自分の農園の特徴を知り、どのように独自性を見つければいいのか、その考え方について解説していきます。

こだわりの商品が売れないわけ

インターネット販売が始まったころ、生産者のこだわりを出せば売れた時代がありました。しかし現在では、それだけではお客様の支持は得られなくなっています。

こだわりを出すのは当たり前だからです。

もちろん、今でも「商品のうんちくや農園主のこだわり」をウェブサイトに載せて、お客様に親近感、信頼感を抱かせて購入につなげるのは有効な手段といえます。

信頼や共感を得る」という意味では重要な要素になります。また、お客様に感謝されながら販売していかなければいけません。

現代では、「単なる商品」ということを超えて、「どこで誰が、どのような方法で栽培したのか、農薬は使っているのか」などの情報を含めてお客様は求めています。

インターネットで農家から直接購入するお客様は「価格の安さ」を求めているわけではありません。「珍しい物」「ここでしかない物」「付加価値のある物」などを探し、購入します。

ネット販売ではお客様が警戒している

インターネットから農産物をお取り寄せするお客様は「安心、安全、鮮度など」を求めていたり、「農や食」に関心があったり、高感度なお客様が多いです。

しかし、信頼できないところでは購入しません。むしろ、インターネットの販売ではお客様は警戒していることが大前提になります。

お客様はネットで商品を検索して購入します。いろいろなウェブサイトを比較しながら「ここは大丈夫か?」「騙されないか」「良心的なところだろうか」と疑いながら見ています。

あなたの農園でも、これらの疑いを一つ一つ消していかなければいけません。具体的には、農家自らが情報発信をして、信頼されるようなウェブサイトにしなければいけないのです。

例えば、商品販売のページや特定商取引のページ、送料や支払方法はもちろんですが、それ以外のところで力を入れなければいけません。

商品があり、買い物かごがあったところで誰も購入しません。必要なことは、お客様の不安を払拭することです

そのためには、季節ごとに作物が生育する様子や自分たちの写真を交えて考え方や想いを発信するのです。

インターネットの販売といっても実際の販売と何も変わりません。結局は人と人との関係であることには変わりありません。

直接販売すれば、感謝の気持ちを伝えることができます。しかし、ネット販売の場合文章のやり取りをメールでするのでお互いの顔が見えません。

そのため、文章で感謝の気持ちを伝えることが大切になります。

「農園で毎日作物の世話をしている大変さ」や、「自然災害などに振り回されるやるせなさ」「丹精込めて収穫する達成感」など、喜びや辛さを自分の言葉で表現するのです。

これらをウェブサイトやブログ、メルマガなどで発信していくのです。

そしてそれをネット上に蓄積していくことによって、不安から安心、警戒から信頼に変わります

農家が情報発信するとき、こだわっているのは自分だけではない

インターネットから購入するお客様は価格の安さより付加価値や物語を求めています。そのため、情報を発信し、お客様との関係性を築くことが購入に繋がります。また、単に購入だけでなく、お客様から応援していただけるようになります。

そこで農園主の顔をウェブサイトなどに出し、仕事に対する意気込みや想いを伝えることが重要です。ただし、うんちくを語っただけでは売れなくなっているのが現実です。

その理由は……

1.こだわっているのは自分だけではない

2.そのこだわりをすぐ真似されてしまう

3.そのこだわりが、お客様から見た際に分かりにくい

ことが挙げられます。現在ではインターネット上には、たくさんの情報があり、さまざまな物が溢れかえっています。そのようなところにただ飛び込んでも埋もれてしまうことになります。

そこで、自分の農園の独自の売りを考える必要があります。

USP(独自の売り)とは?

農業においてもマーケティングの考え方を取り入れることは重要です。

マーケティングの世界においてUSP(独自の売り)を作り上げることは必須条件となります。どこにでも売っている物であれば、最終的には価格勝負になってしまうからです。

USP(独自の売り)を決めるうえで重要なことは、「お客様はなぜ、あなたのところで買う必要があるのか」を明確にすることです。

インターネット上には、たくさんの物が溢れています。ありとあらゆる物が販売されているのです。あなたが販売しようとしているものはすでにネット上で販売されているかもしれません。そのため、あなたから買う理由がないといけないのです。

USPを考えるうえで、例えばドミノピザであれば、「焼きたてのピザを30分以内に玄関までお届けします。それができなければ無料です」というのがあります。

このUSPを聞いただけで、「このお店が何のお店で、配達時間が明確になっていて、もしかすると無料になるかもしれないメリットがある」ということが分かると思います。

そして「焼きたてのピザを30分以内に」という時間の速さがお客様の心をつかんでいます。ドミノピザの開業当初は「時間」を全面に出すことはなかったと思います。

そのため、「ピザを注文したのはいいけれどいつ来るのか分からない」「来るのが遅い」などと不満があったお客様は多かったでしょう。そこで、「30分以内に」という時間を全面に出したことで多くのお客を引き付けました。

要は、「時間を必ず守る」という強みを見出し、それを力強く打ち出したことでたくさんのお客様からの支持を得たのです。

農家が作るものは基本的にはどこにでもあります。ただ、自分で生産しているため、オリジナルを加えて他にはないものにすることができます。また、農家は、その作物の特徴や食べ方などを熟知しています。

その際には、何がオリジナルなのか明確にし、これをウェブサイトで打ち出していくことが必要です。なぜなら特徴のないものは選ばれないからです。

自分の売りを明確にしないと確実に売れる自信がないため、価格を安くしてしまう傾向にあります。しかし、価格を安くすることは、誰にでも思いつきます。

価格を安くすることではなく、自分の農園の独自の売りを認識し、安売りすることではなく付加価値をつけることが大切です

例えば、私は梨農家ですが、次のようなUSPで独自の売りを打ち出しています。

「江戸時代から続く梨の産地で、100年以上前から梨を専門に栽培している農家です。生産から販売まで産地直送で全国へお届けしています。」

これにより、「歴史のある梨の産地で栽培している農家が、宅配便を利用して販売している」ということが分かります。実際、市場流通の産地なので一般的に知名度は低いのですが、古い梨栽培の歴史があるのです。

USPを考えるうえでは、まず「自分は何者なのか」ということを考えなければいけません。そして小学生でも分かるようにしなければいけません。

USPがお客様に伝わることによって初めて「欲しい!」と思うようになるのです。

「昔から作っている産地だからなんとなく作っている……」では何も伝わりません。ずっと続いているという歴史や伝統、こだわりをUSPに込めるのです。

自分で育てた農産物の独自性は何なのか、自らに問いかけてみてください

自分では気づかない独自の価値

農産物は、一般的に収穫した物であるため、同じようなものになってしまいます。それではいくらこだわって作ったとしても、こだわりを伝えにくく、違いが分かりにくいです。

例えば私は、自分の農園の独自の価値とは何だろうと考えました。しかし、特にこれといった特徴もないため「何が売りなのか」を見つけられませんでした。

「どこでも栽培している普通の梨だし、これといって売りというものはないな」と思っていました。「どこのスーパーでも販売している品種だし、他と違うものは何だろう……」といくら考えても答えが出てきません。

あるとき、お客さんがうちの農園の豊水梨を食べてこういいました。

「梨をむいている時に果汁がしたたり落ちてすごいね。こんなにジューシーなのは、はじめてだ。」

梨をむいて果汁が溢れるのは、私としては当たり前であったため逆にびっくりしました。また、その大きさにも驚いていたようでした。

要は、「鮮度」や「大きさ」が大きな価値になり、スーパーなどと比べて同じ品種でも違いがあったのです。農家であるということだけで、新鮮さは小売店に負けません。むしろ収穫したての最も価値のある状態の物をもっているといえます。

私が提供している贈答向けの梨は、一般のスーパーに売っているものより1サイズも2サイズも大きいのです。通常のスーパーでは、2L、3Lサイズが多いため、私の農園の4L、5Lサイズはお客様にとって珍しいものだったのです。

生産者としては、これといって変わったことではなく、生産している段階では当たり前なので、その価値にはなかなか気づかなかったのです。

農家にとっては果汁が溢れることは当たり前ですが、普通にスーパーで買うお客様は、もぎりたてではないので果汁の量が違っているのです。

どこの農園でも「価値」を提供することができる

このように自分の農園の「価値」には気づきにくいです。ただ、どのような農園でも価値を表現することができます。

多くの農家は、「自分のところは何も特徴がない」「自分独自の売りなんて見つけられない」と考えています。ただ、そのような独自の特徴は誰にでもあるのです。

例えば、果物栽培では、流通の都合により通常よりも早く青い状態で出荷することがあります。この状態だと糖度があまりのらず未熟状態になってしまいます。店頭に並ぶまで市場や小売りを通すため仕方がないのです。

お客様からしてみれば甘い果物を望んでいるため、当たりはずれが出てしまいます。

これを農家が直販をする場合、通常より長く木の上で実をならせて収穫します。いわゆる「完熟」状態です。果実は収穫するタイミングで大きく糖度が変わってきます。完熟してから収穫すれば、糖度がのり甘い果実をお届けできるのです。

早く収穫して流通した通常の小売りの果実に比べれば、「農家直販の完熟果実」は大きな価値になるのです。

農薬を使っていなければ、「農薬を一切使わず育てた無農薬野菜」が際立った特徴になります。農林水産大臣賞を受賞していれば、それだけで大きな価値になります。

地元の小さな品評会で表彰されても、「品評会で入賞した○○」として独自の特徴を知らせることができます。

他にも、流通にのせることが出来ず、誰も作らなくなった昔からある野菜も「ここでしかない幻の伝統野菜」としてアピールすることができます。

地域の一部でしか作られていない伝統野菜とは、在来品種のことで大量生産・流通の時代には、大都市向けにほとんど流通しないものです。

このようにUSP(独自の売り)は誰にでもあります。そこに気づくかどうかが大事なのです。「独自の売り」を分かりやすくいうと「何でお客様はあなたから買わなければならないのか」ということを表現することです。

他と比べて何が違うのかを明確にしなければいけません。

まとめ

農家が販売までしようと思ったら、独自の売りを考えなければいけません。差別化をしないと埋もれてしまい、誰からも選ばれないからです。

そのためには、自分で栽培した農産物の独自性は何なのかを考える必要があります。誰にでも独自の強みはあります。考え方によっていくらでも生み出せるのです。

独自性を生み出すことによって、お客様が判断する材料を提供することができます。そして大事なことは、自分の頭で考えることです。

自分の独自の強みを知り、伝えることによってお客様から選んでもらうことができるようになってくるのです。