私たちがいつも食べたり飲んだりしている牛肉や牛乳は、どのようにして作られているのでしょうか。食と農の現場が切り離された現代では、食の現場を知る機会はあまり多くありません。

「牛乳はカルシウムたっぷりで体に良い」といわれていたのが、最近は「牛乳は体に悪い」といわれることもあります。また現代では、畜産の現場が私たちの生活には見えません。

ここでは、牛についての情報のうち、「牛乳がどのようにして私たちの食卓に上るのか」についてみていきます。

お肉を作るための牛と牛乳を作るための牛がある

日本は、国内に出回っている牛肉のうち全体の6割ほど輸入しています。そして、残りの4割は国内で作られてる牛肉になります。一方で、牛乳は自給率が100%です。日本の食料自給率が39%の中、牛乳は高い自給率にあります。

このように私たちの食生活を支えている牛は、日常の食生活にお肉として、牛乳としてなくてはならないものになっています。

そして牛といっても、お肉にするための牛と牛乳にするための牛に大きく分かれています。肉を作るための牛を肉用牛、牛乳を作るための乳用牛といいます。

日本の畜産業における牛の約6割は肉用牛です。牛は古くから荷物を運んだり、田を耕したりしてきました。そのため牛は、人間にとって身近な動物だったのです。

また、糞尿は田畑に堆肥として活用され、農業に活用する目的で飼われ始めた歴史的な背景があります。牛肉を日本が食べるようになったのは明治以降のことで、それまで日本ではあまり食べられていませんでした。

牛の一生

日本の畜産業において全体の4割を占める牛が乳用牛です。そのうち一般的な牛としてよくイメージされる黒と白の牛が「ホルスタイン」であり、乳用牛のほとんどを占めています。

家畜としての牛は、長年の改良で現在の姿になっています。そのため、人にけがをさせるような凶暴な牛は排除されています。そのため、おとなしくて温和な性格になっています。

世に知られることのない牛乳ができるまでの過程

私たちの食生活に当たり前にあり、普段何気なく飲んでいる牛乳がどのように作られるか知っていますか?

お店で売られている牛乳の紙パックには、青空の元、広大な牧場で育てられているかのようなイラストが印刷されています。そのため、乳牛は広い牧場でのびのびと草を食べて育っていると思ってはいませんか?

しかし、実際はのびのびと草を食べて育つのではなく、身動き取れないところで一生を終えることになるのです。土地の狭い日本では、広い恵まれた土地で放牧されることはあまりありません。

1頭の乳牛を育てるのに必要な草地の面積は、1ヘクタールといわれています。広大な面積が必要となるため、現実的ではないのです。

そこで、「牛はどのように育てられているのか」「どのようにして我々人間のもとに届けられているのか」について、一度考えてみて下さい。

近代畜産においては、畜産農家は減少していっていますが、その代わりに1農家あたりの頭数は増えています。それだけの頭数を効率的に管理するのに、広大な土地でのびのび世話をするのは現実的ではありません。そのため、乳牛は狭い舎に押し込められるように過ごしているのです。

母親の乳を飲むことのできない子牛

牛は約40kgで誕生します。子牛は生まれてすぐに立ち上がることが出きます。その後、2ヵ月間はミルク(代用乳)などで育ちます。

人間でも生後まもない赤ちゃんは、母乳を飲んで育ちます。母乳を飲んで育つことで、病気に対する免疫が含まれるため、赤ちゃんは丈夫に育つことができるのです。

しかし、子牛はその母乳を母牛から直接飲ませてもらうことができないのです。牛乳は人間が飲むために、より大量に、効率的に作られるため、子牛の生理や習性は全く無視されます。そのため、出産した後2週間ほどは子牛にとって栄養価のある乳を人間の手で与えています。

直接母牛から乳を飲むことができない子牛は、母親の母乳を生理的に欲しています。そのため、口がさみしくなって多大なストレスがかかります。本来であれば牛乳は、「母牛」がわが子を育てるために出しているものです

しかし、子牛は代用乳や人工乳が与えられています。また、この代用乳には以前問題になった「肉骨粉」も使われていました。

肉骨粉は鳥や牛、豚など食用部分の取り去った後の廃棄物や、病気で死んだ動物の肉などを粉砕したものです。

いわば牛に肉を食わせているわけですから、共食いにもなるような状態です。

不自然な飼料で生きる牛

牛はそもそも草食動物なので肉食ではないのです。その牛に何を食べさせているかというと、トウモロコシや大豆などの穀物を中心とした穀物飼料を食べさせています(実際には、草と混ぜるなどのさまざまな方法があります)。

穀物飼料を日本で賄うのはなかなか大変なので、輸入されたものを食べさせています。その輸入された穀物飼料はアメリカなどでは遺伝子組み換えのものが使われています。

牛の本来の食べ物は、草で、繊維質の多いものを好むため胃が4つに分かれています。固い草などをゆっくり消化するためにそのようになっています。

ところが本来食べるはずのない穀物を中心とした餌を与えるため、様々な病気になります。そのため抗生物質なども多量に使われています。

高カロリーなものを食べさせ早く成長させ、より多くの乳を搾り取るためです。早く出荷し、利潤をあげるため、牛本来の生理は完全に無視され経済効率優先だけのためにこのように行われます。

育成から種つけ、妊娠、出産へ

誕生から14~16カ月で大人の牛に成長します。体重は1年で生まれたときの約8倍(約320kg)になります。大人になった乳牛は種つけをし、赤ちゃんを産む準備をします。

そして、妊娠後は280日間おなかで子牛を育てます。約2才で出産し、母牛になります。出産後は、約300日間はミルクを出します。

牛乳は牛の血液から作られ、子牛に必要な栄養分が多く作られています。経済効率最優先のため、より早く、より多く取りたいため一日3回ほど絞ります。

母牛はそれこそ骨身を削ってお乳を出しているので、母体の上からカルシウムが奪われ、足の骨が弱くなって立てなくなったり、転んだりします。

また乳牛は搾乳がはじまると、死ぬまで牛舎の中で過ごすことになります。これによって、ストレス過多や運動不足になり、病気になったり、自分の重い体重を支えられなくなったりします。

牛は、本来食べることのない穀物を食べます。たくさん食べることによって消化器の病気になります。そして4つの胃の中の位置が変わる病気になります。

そのため、手術を行うことになるのです。不自然なエサを食べることにより、不自然な手術をします。

自分で出産することができない母牛

テレビ等で牛の出産シーンを見たことがありますか。人が引っ張って出していると思います。足腰が弱った乳牛は自分で出産することすらできないのです。

自然界で自分で出産できない動物がいるのでしょうか。自分で出産できないのはあきらかに不自然です。

人間によって家畜としてコントロールされているので、自分で出産することができないのです。自然の摂理と大きく異なっているのでさまざまな問題がでてくるのです。

自然の摂理に逆らう行動をすると病気になる

牛が「通常食べる草を食べずに、穀物を食べる」「広い草原でのびのび生活するのではなく身動きとれないところで過ごす」「より多く、よりたくさん乳を搾る」などにより、ストレスが増えて病気になります。

日本でも明治時代前は、牛肉を食べる文化はあまりありませんでした。そして本来、日本人に合わない肉食に急速に変化したことによって、大腸がんなどの病気が増えてきました。

例えば、もともと日本では、いろいろな働き方がありました。ほんの何十年か前までは、自営業をしたり1次産業などの家業を手伝ったりすることができました。

しかし、現代の日本ではその人の向き、不向きに関わらず多くの人がサラリーマンとして会社に勤めることが一般的になりました。今までは、人付き合いが苦手な人は1次産業の手伝いなど自分でできる仕事をすればよかった人でも社会の荒波に放り出されることになりました。

自分には合わない仕事を無理して続けてきた結果、うつ病など心の病気になる人が増えました。そして、ひきこもりも増えてきました。

日本では、弱音をはくことが難しく我慢に我慢を重ねてしまうからです。

このように本来食べることがない物を食べたり、もともとの性質を無視し、限界と無理を重ねるまで我慢してストレスをためたりするなどすれば病気になります

牛乳製造機としての牛の一生

乳牛は、ミルクを出し続けるために出産後、約2~3カ月で再び妊娠します。出産前の2カ月のみ次の出産に備え、搾乳は休みます。本来、乳牛の寿命は13~20年くらいですが、家畜として飼われるために6~7年の命しか生きられません。

長生きさせると乳量が減るため効率が悪くなってしまうためです。乳が出なくなると、肉牛としてと畜場に出荷されます。

何年も同じ檻に閉じ込められているせいか足元はフラフラしています。時折、滑ったりつまづいたりすることもあるでしょう。こうして人間に最大限に利用され、最後のときを迎えるのです。

私たちは、牛本来の生理や習性を全く無視した牛乳製造機として牛を活用し、「いただきます。」といっていただいています。

そして、消費者がひたすら濃くて安い牛乳を求めた結果、早くたくさん搾乳できるように、牛に本来食べる事のない穀物を大量に食べさせ、病気にさせてきたのです。

牛はもともと「牧草」が主食です。広い牧場で放牧されていれば、とても美味しい牛乳がとれます。牧草は固くて消化が遅く食物繊維たっぷりなので、牛の胃袋や骨格は丈夫なのです。

ただ、のんびりと草だけ食べていては、乳量がとれません。現代は「よりたくさん」「より多く」が求められます。そのため、本来「草食動物」ですが、草だけ食べていては、現代社会のスピードには遅すぎるのです。

そして草を食べるより穀物を与えた方が何倍も乳量がとれます。たくさんの手間がかかり、膨大な設備投資もしてある経営なので、たくさんの牛乳の量を出荷できなければ経営が成り立たなくなります。

水より安く売られている牛乳

現代ではおよそ1リットル150~250円前後で牛乳は水よりも安く売られています。そして、それが当たり前のように考えられています。

スーパー等で牛乳が売られていても、賞味期限の近い手前から買うのではなく、賞味期限の長い後ろの方から購入する人もいます。そのことで賞味期限が切れてお店から廃棄されることが、日本の社会では当たり前のように行われています。

そして、購入してからも何らかの理由で賞味期限までの間に使いきれなくなったら、簡単に捨てられています。

本来牛乳は、酪農家が1年間、毎日休みなく世話をしてはじめて生み出される大変貴重なものです。そこには生き物の「命」が存在しており、工場の中で大量生産するものではないのです。

現在では、牛乳の価格が低迷し、スーパーで広告商品として安売りされています。そして牛乳を作っていくための設備は膨大なものになります。酪農経営には機械化が欠かせないからです。

本来の牛の在り方で育てられる自然放牧

狭い建物の中で当たり前に行われている酪農ですが、外で自然の中で育てられる酪農もあります。そして、日本の国土の7割が山間地です。

このようなところで牛の力と山々の力で循環していく山地循環酪農というものがあります。山地で生産される草の量や牛が出す乳量は限りがありそれほど多くはないでしょう。

ただ、自然の中の山が循環され、牛はストレスなくのびのびと牛本来の生き方ができるでしょう。たくさん乳を出すのではなく、本来の牛の自然に出る量でできる「牛乳」は何倍も価値があるでしょう。

少しの量をありがたくいただくことができます。

牛乳は体に良いのか良くないのか?

牛乳は長い間学校給食に出されています。しかし、現代では「牛乳は体に良くない」「牛乳は飲むな」などの内容の本を見かけます。

実際のところ、牛乳は体に良いのでしょうか。それとも悪いのでしょうか。まず、日本人が何千年と食べられてきたのは、お米、雑穀、野菜、海藻、小魚です。周りを海に囲まれた日本では、これで十分栄養が間に合うものだと考えられてきました。

飛鳥時代には、朝廷や貴族だけが飲む最上級品であったと伝えられています。日本ではそれほど身近ではなかったのです。

戦後のアメリカの政策が日本を変えた

日本は戦後になって牛乳が広がっていきました。戦後のアメリカは、小麦と牛乳がふんだんに余っていました。そこで敗戦国の日本に目をつけたのです。

「大きいことはいいことだ」「日本はタンパク質が足りない」といって水やお茶を牛乳に変えていったのです。そして浸透させていくには、学校給食が最適だったのです。

さらには、昭和23年アメリカは母子手帳を乳業に作らせました。母子手帳に医者は関与していないのです。

母子手帳は、妊娠したときに行政から配られます。当時の母子手帳には、森永乳業、雪印乳業、明治乳業などの宣伝がされていました。

全国の保健所で母子手帳が配られ、「牛乳はいい飲み物」と伝え続けられてきたのです。

日本人の身長は大きくなった

その結果、明治時代アメリカに占領される前の一般男性の平均身長が150センチ台だったのが、現代では170センチ台になっています。

牛の乳は人間の乳に比べて3倍のたんぱく質が含まれています。そのため、人の体を大きくするのは非常にいい飲み物なのです。

生まれたばかりの子牛は、すぐに大きくならないと自然界で生きていけません。そのため、すぐに大きくなるようにIGF1という急激に成長する成分が含まれています。

日本人が牛乳を飲み続けた結果、たった1世代、2世代で身長が変わりました。長い歴史の中で、たった数十年で平均身長が変わるのはすごいことです。

そして、牛乳を飲むようになってから骨粗鬆症が増えたといいます。カルシウムをとっているつもりが、実はカルシウムを減らしていることになるのです。

もともと人体は、カルシウムとリンの相対的な比率が決まっています。そして牛乳には大量のリンが含まれています。

このバランスを崩さないようにカルシウムを骨から引き出しているのです。このとき私たちの体はアルカリ性に保とうと体内のカルシウムを使って中和しているのです。

そして牛乳100ccの中には、カルシウムが110ミリグラム含まれています。これは、ダイコンの葉っぱだと2倍、昆布は6.5倍、わかめ7倍、煮干しは22倍です。

このように、牛乳は「体にいい」「体に悪い」などさまざまな議論がされています。牛乳を飲むようになってから花粉症が増えた、乳がんが増えたなどといわれています。

現代の社会では、食卓と農の現場は離れています。そのため、スーパーで買うものという意識でしかありません。

食は命の原点であり、もっとも大切なことです。しかし現代では単なる食料として経済効率最優先で行われています。そして畜産など生き物を扱う現場では、自然の摂理を無視したことも行われています。

本来「牛乳」で見てみれば、「太陽のもと、のびのびとストレスなく育つ環境で」「自然の牧草をたっぷりと食べて」「限られた牛乳を感謝して大事にいただく」ことが結果的に人にも牛にも最も良いはずです。

しかし、大量生産・大量流通の時代には、動物の本能を無視して「もっと早く、もっとたくさん」と何処までも追及することになります。

そして本来の最も価値のあるありがたく美味しくいただくことを忘れ、ただなんとなく消費しているのが現代です。このことを知り、農業の現場がどのようになっているのか考えてみてください。